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教科書では教えてくれない日本の戦中・戦後史・・・戦中と戦後は連続している

2010-09-21 02:37:00 | 



■ アミテージ来日 ■

民主党代表選後の15日、米国の前国務副長官のリチャード・アミテージ氏が来日して、中国漁船問題の対応として日米合同演出を提案する記者会見を開いていました。

新聞などでは「知日派」と呼ばれるアミテージ氏ですが、CAIの裏資金を管理する米国の重要人物で、ジョゼフ・ナイ氏などと並び、「ジャパン・ハンドラー」という言葉がぴったりの人物です。

日本の政治家達は渡米する度にアミテージ詣でをしている事からも、その影響力が伺えます。小泉政権時代にイラクへの自衛隊の出兵にあたり「ショウ・ザ・フラッグ」と言った人物と言えば思い当たる方も多いでしょう。

ワシントンに居る事の多い氏が今回わざわざ来日した理由は、記者会見などというチンケな目的では無く、民主党代表選にあたり、小沢氏が当選しない様に各界に根回しをしていたのではないかと私は思っています。

さらには、為替介入もアミテージ氏の指示、あるいは承認によって実施されたのではないでしょうか?

現在、CIAの日本の現場担当はマイケル・ジョナサン・グリーンの様ですが、小沢一郎氏と八丈島で密会した件が問題となりワシントンに呼び戻されたとの噂が板垣英憲氏のサイトに書かれています。(本当か?)

いずれにしても、小沢政権阻止の為、グリーンのボスであるアミテージ氏御自ら陣頭指揮を取っていたようです。

■ 公開され始めた戦後のCIA文書 ■

CIAなどと書くと、又いつもの「陰謀論」か・・などと思われますが、日本とCIAの関係は意外に深いようです。

有馬哲夫氏の「CIAと戦後日本」(平凡社新書)は、戦後日本の枠組み作りにCIAが深く関係していた事を、公開され始めた戦後のアメリカの公文書を調べる事で検証しています。

アメリカでは一定の期間を経た公文書が一定の条件の下に公開されます。権力を市民が監視する事で権力の暴走を抑止するシステムです。議会図書館と公文書館、そして大統領図書館がその役割を担っています。

有馬哲夫氏は公開され始めた戦後日本に関わるCAI文書を丹念に調べ、戦後日本の体制にCIAがどの様に関わっていたかを浮かび上がらせています。

尤もCAI文書と言っても、「謀略の計画」が書かれている訳では無く、CAIが注目した人物のファイルの中に、当時の新聞の切り抜きや、CAI局員の分析メモなどが収められているだけの様です。さらには岸信介元首相の様にファイルだけあって中身の無いものもあります。

■ 戦中と戦後の連続性 ■

「CIAと戦後日本」は下記の様な章があります。

序 章 記録から歴史の舞台裏を探る
第一章 CAI文書は何を語るのか
第二章 重光葵はなぜ日ソ交渉で失脚したのか
第三章 野村吉三郎と「日本海軍」再建計画
第四章 CAIはなぜ日本テレビ放送網建設支援を中止したのか
第五章 緒方竹虎がCIAに送った政治リポート

内容は歴史的事件の裏を暴露する様な派手なものでは無く、選挙資金の金額であったり、日本の政治家の勢力関係であったり、あるいはCAI局員による政治レポートが中心です。

ところがそこから浮かび上がってくるのは、戦中と戦後の連続性です。

私達は学校では殆ど近代史は教わりません。教えてはいけない事になっているかの如く、明治維新を教わると3学期も後半に差し掛かり、満州事変・日華事変・第二次世界大戦をさらっと学んだ当たりで、「後は教科書を読んどく様に。」と社会科の教師に言われ、私達の日本史が終了します。

私達は曖昧な知識の中で、戦後GHQの政策により、日本の政治と社会は大変革され、民主的な国家に大変身したと漠然と考えています。私達の頭の中では、戦中と戦後は不連続です。

ところが、「CIAと戦後日本」を読むと、戦後の日本に体制確立に多くの旧日本軍人や物が奔走している事が分かります。特に、軍の情報機関や外務省の謀略機関に居た者達が、戦後早々に私的な情報機関を作り、それをCIAが統合する形で「対共産圏」という情報戦を開始していた事が良く分かります。そして、さらには児玉誉士夫の様に戦中の情報機関の資金を後ろ立てに、政治の裏の世界で暗躍する者達も現れます。

そもそも、戦後の首相達や閣僚達は軍の出身者で占められていたと言っても過言ではありません。戦中の日本の優秀な人材がほとんど軍に居た事を考えれば、これは自然な成り行きとも言えます。

■ アメリカに協力するのは日本の再興の為 ■

彼ら政治家や情報機関の人間、旧軍人は、CIAに協力すると見せかけて、ガセネタを掴ませ、しっかり資金を要求してくる事が、当時のCIAの悩みの種だった様です。彼らは日本の再興の為にCIAの手先となりながらも、魂までもは売っていなかったのです。

彼ら旧軍人の目的は、陸軍や海軍の再建であり、空軍の創設であり、情報機関の設立でした。これら無くして「独立国家」の体を成さない事を彼らは良く知っていたのです。

■ 米国内の勢力交代 ■

一方、マッカサーを筆頭とするGHQは日本の再軍備に消極的でした。マッカサーは財閥解体や農地改革などソフトな社会主義国を日本に作ろうとした様に見受けられます。日本国憲法も当時の理想を掲げた内容です。

ところが、アメリカ国内ではロックフェラーが台頭し、国務省とCIAが中心となってマッカサーを追い落とし、日本の利権を手中に収ます。彼らは日本の再軍備を進め、彼らの武器の市場として日本を育てていこうとします。さらには財閥解体も途中で中断され、日本に巨額な投資をして、日本をアメリカの生産基地に作り変えます。

吉田茂は再軍備に慎重でしたが、旧軍部とCAIが連携して、警察予備隊から陸海空の自衛隊を創設します。さらにCIAを雛形として内閣調査室が発足しますが、こちらは世論の風当たりが強く、大規模な組織にはならずに現在に至ります。

■ CIAが支配する日本 ■

日本人は「日本は独立国家」だと教わっています。しかし、アメリカに逆らった政権が短命である事からも分かる様に、日本は戦後ずっとアメリカの支配を受ける存在です。

CIAは日本国内でスパイ映画の様な派手な働きをするのでは無く、普通の日本人として私達のすぐ隣に存在します。日々情報を集め、日教組や労働組合に浸透し、マスコミや政治家に成りすましている人もいるはずです。

アミテージやグリーンらはマスコミの局長クラスを集め、政敵のスキャンダルを暴露する事すら容易なのです。

■ 「虹色のトロツキー」 ■





「CIAと戦後日本」は丁寧な本ですが、小説の様に当時の空気を分かりやすく再現するものではありません。興味が無い人には退屈な本とも言えます。

そこで、戦中の日本の情報機関の動きをイメージするのに最適なテキストがあります。

安彦良和氏の「虹色のトロツキー」です。
又マンガかい・・・とお思いかも知れませんが、これが戦中の日本の見方を大きく変える程の力作です。今回、双葉社から、4巻の愛蔵版としてカラーページや解説ページも豊富になり復刻されています。安彦ファンならずとも、歴史ファンにもお勧めの、まさに愛蔵本です。

■ 満州に理想国家を ■

日本人の父、モンゴル人を母を持つウンボルトは、共産主義の学生でしたが、日本軍のある目的の為に「建国大学」に入学します。

「建国大学」は「五族協和」を建学の精神として石原莞爾が満州に開いた大学で、自由闊達な学風を重んじ、第一期学生は総員141人。日系70人、満系40人、台湾系3人、朝鮮系10人、蒙系7人、白露系5人という広く満州を中心としたアジアの民族に門戸を開いた学校でした。

石原莞爾は、教科書では満州事変の首謀者として国賊の如き扱いすが、満州に理想国家を建国する夢を持っていた様です。当時の満州は清とモンゴルを占領して建国されますが、蒋介石やソ連、内モンゴルといった共産主義勢力に脅かされています。

「五族協和」を掲げる満州国ですが、その実態は清やモンゴルの土地を収奪して建国され、人種差別の蔓延する国家である事は隠しようの無い事実です。しかし、ロシアのユダヤ人を受け入れるなど国際的な面も持っていました。

■ ロシア分断を狙う謀略 ■

主人公ウンボルトには過去の記憶がありません。少年時代に母を目の前で惨殺、自身も殴られたからです。彼は事件の真相を全く知りませんが、関東軍参謀の辻政信は彼を利用した大きな謀略を企てています。

その企てとは、満州にトロツキーを招聘し、シベリアに親日的な共産党政権を作る事でした。当時トロツキーはスターリンと対立し、メキシコに亡命しています。トロツキーの後ろ盾はアメリカのユダヤ人資本家達だったと言われています。

ウンボルトの父親は鉄道の技術者の肩書きで軍の為にトロツキーに接触する工作をしていて殺されたのでした。尤も、この時期トロツキーはメキシコに亡命しており、ウンボルトの父親が接触していたトロツキーが本物であるとは思えません。

しかしトロツキーを日本が招聘しようとしていた歴史的事実はある様で、来日に前向きなトロツキーのメキシコからの書簡も残っています。結局来日を前にトロツキーは暗殺されています。

「虹色のトロツキー」では、ウンボルトは流れに翻弄される木の葉の様に、時代の流れ巻き込まれていきます。中国人の革命家の親友や、その恋人、李香蘭や、男装の麗人として名高い川島芳子などが登場し、当時の大陸の怪しくも、エネルギーに満ちた雰囲気を楽しむ事が出来ます。その点、一級のエンタテーメント作品
です。

■ 早すぎた満州建国 ■

話の中では、内地に戻った石原莞爾に、満州建国時の熱意は既に無く、満州建国が早すぎたのではと自問する日々を送っています。一方、石原を信望する辻政信始め関東軍の一部参謀達は、「反共」の策謀をエスカレートさせていきます。

そして、ついにノモンハン事件が勃発し、満州は滅亡に向けた戦いへと突き進んで行きます。

■ 実在するウンボルト ■

主人公のウンボルトが実在の人物である事が、物語の最後で明かされます。ウンボルトの息子が父の足跡を辿って、安彦良和の元を訪れるシーンで物語は終わります。

安彦は理想と絶望を味わった当時の満州に思いを馳せ、建国大学の卒業生達を取材して回り、丁寧に、そしてダイナミックに作品を作り上げています。

■ 戦後も暗躍する辻政信 ■

辻政信は戦犯に問われた為、密かに日本に帰還し、その後も「反共」の戦いをしていた様です。戦後日本は旧陸軍を中心に義勇軍を組織し、中国で共産党と戦っています。又、多くの士官達が中国に残り、参謀として「反共」の戦いに加担していた様です。

辻政信はその後、参議院議員になりますが、単身ラオスに潜入して消息を絶っています。

■ イメージを補完する「虹色のトロツキー」 ■

安彦良和は「ナムジ」「神武」で日本の古代史に新しい生命を注いだ後、「王道の狗」で明治の大陸と日本の関係に光を当てています。

そして「虹色のトロツキー」で、第二次世界大戦前夜の大陸を生き生きと描く事で、教科書では教えられない日本の近代史を蘇らせています。

アメリカの公文書を丹念に掘り起こした有馬哲夫氏の「CAIと戦後日本」やその他の著書とセットで読むと、戦中、戦後の日本の姿を私達がイメージする事に役立つでしょう。



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