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ミカジメ料を払い続ける日本・・・アメリカのアジア戦略

2010-09-28 08:35:00 | 時事/金融危機


■ 領有権問題は解決が難しい ■

日本はロシアとの間に「北方領土問題」。韓国との間の「竹島問題」。中国と台湾の間に「尖閣諸島問題」という領有権問題を抱えています。

「北方4島」は1875年に締結されたサンクトペテルブルグ条約(千島樺太交換条約)で、樺太をロシア領とする代わりに、千島列島のロシア領だった島々を日本領にする事が締結されていますから、国際法上の領有権は日本にあります。第二次世界大戦末期のソビエトの対日参戦でソビエトが軍事侵攻し、そのまま実効支配して現在に至ります。

「竹島」は1905年、明治政府により島根県に編入し国際法的にも日本の領土になりました。しかし日本の敗戦後、GHQは竹島を沖縄や小笠原諸島と同様に、日本の行政権から外した。これを口実に1952年1月18日、李承晩(イ・スンマン)韓国初代大統領は海洋主権の宣言ライン、いわゆる「李承晩ライン」を設け、韓国は竹島周辺海域の水産資源を得る事になる。これが日韓の竹島問題の始まりです。現在竹島には韓国軍が駐留し、韓国が実効支配しています。

「尖閣諸島」は、日本政府が領有状況を1885年から1895年まで調査し、世界情勢を考慮しつつ、いずれの国にも属していない事を慎重に確認したうえで1895年1月14日の閣議で決定し沖縄県に編入した。 国際的にも日本の領土と認められ、日本人の入植も行われました。第二次世界大戦後は一時連合国(実質的にはアメリカ合衆国)の管理下に置かれましたが、1972年に沖縄県の一部として日本に返還されています。

この様に、明治以降の国際法上では、どの地域も日本に領有権がある事は明らかです。

しかし、「竹島」や「尖閣諸島」で中台韓が領有権を主張するのは、「歴史的に遡ると元々は彼らが領有していた土地であった」という史実が背景にあいます。尤も、中世以前の絶海の孤島の正確な記録などありませんので、どれを取っても確証に欠けた資料しかありません。

何れにせよ、「竹島」も「尖閣諸島」も、無人島であった島を、日本が近代化の課程の中で領有を主張し、国際的な手続きを行って日本領土となったものです。この時点で、中台韓が異議を申し立てれば、そんれなりの話し合いがされたのでしょうが、当時の中国も韓国も近代国家としての体を成していませんでしたから、彼らは無人島の領有問題に興味すら持って居なかったというのが実際の所でしょう。

近代化の課程での領有を主張する日本と、歴史的な領有を主張する中台韓の対立は、論点が全く異なる為に永遠に整合する事はありません。

■ 軍事的支配が実際の領有となる ■

「北方領土」周辺で日本の漁船が創業すればロシアに拿捕されますし、逃走を図れば発砲もされます。「竹島」周辺でも1965年の日韓漁業協定以前は、日本の漁船が300隻近くも拿捕されていました。

投げやりな言い方になりますが、領有権の主張は「言った者勝ち」ですが、領有権自体は軍事的支配力を行使する国が実質的に有する事になります。

■ 尖閣諸島で日本は穏便に対処していた ■

中国と台湾が領有を主張する尖閣諸島ですが、海上保安庁の灯台が設置され(以前は右翼が設置した私設灯台でしたが・・)、海上保安庁の巡視船が巡回する事からも、現在の軍事的支配者は日本です。

以前から、台湾や中国の活動家達が強引に魚釣島に上陸して、海上保安庁に身柄を拘束されていたりしましたが、拘留期間が短い為か、小泉政権の時代ですら、今回ほど日中間の関係が悪化する事はありませんでした。

一説には「トウ・ショウ・ヘイ」氏(漢字で打つとブログのサーバーがハッキングされているのか、一文全て文字化けしてしまいます・・・恐るべし中国・・)との間で政治問題化しないという密約が交わされていたとも言われています。

■ 巡視艇に体当たりはやり過ぎ ■

今回、中国漁船を拿捕した時、現場海域では20隻程度の中国漁船が操業していたと言われ、巡視船はそれぞれの漁船に操業中止を勧告していた様です。ところが、その中の一隻が突然巡視艇に体当たりをして来ました。

パトカーに体当たりすれば、国籍に関係無く公務執行妨害で現行犯逮捕されます。巡視艇に体当たりすれば、中国の漁船であっても公務執行妨害で逮捕されるのは当然です。

巡視艇が中国漁船を拿捕・逮捕した事自体に異議を唱える方が居るとすれば、その方は「法律」自体を否定する事になります。これでは国家は運営できません。

■ 中国が強硬に対応するのは当たり前 ■

漁船船長の逮捕に対して、中国政府が強硬姿勢を取る事も当然です。中国は尖閣諸島の領有を主張していますから、中国からすれば今回の逮捕は「中国領海内で自国の漁船を海上保安庁の巡視艇が追い回して捕まえてしまった」と言うことになります。

日本が国内法を適用する様に、中国も国内法を盾に講義するのは、領有権で争っている両国の間では当然の成り行きです。

新聞などでは「中国政府が強硬姿勢を取るのは、中国国民の感情を考慮しての行動」との論説が見られますが、これでは、中国は本気で尖閣諸島の領有を主張する気が無いと言っているのと同義です。

■ 外洋艦隊を持つ中国は従来の中国とは違う ■

マスコミの従来の常識では、「中国が日米の海軍力を向こうに回して、本気で尖閣諸島を領有する事はあり得ない。」というものでしょう。

しかし、現在の中国は充分な外洋戦闘力を持っています。

以前の中国艦隊は、外洋では乗員が船酔いでダウンするという情けない艦隊でしたが、現在はソマリア沖の海賊掃討に艦船を派遣し、長期間、無上陸で任務を遂行するまでに成長しています。さらには、補給艦を挟んで3艘の艦船を併走させながら洋上補給をするという、先進国の海軍でも出来ない様な芸当までこなす程、その錬度も向上しています。

現在の中国海軍は尖閣諸島を軍事支配する充分な戦力を有していますから、当然、漁船拿捕、船長逮捕という事態に弱腰で対応しては、軍が黙ってはいません。

中国政府の強気な姿勢は、民衆のガス抜きであると同時に、軍の暴走を抑える必要があるからだと考えるべきでしょう。

近代化が進む中国軍内の空気は、戦前の日本軍に近いものが生まれつつあるのではないでしょうか?

■ アメリカの口先支援 ■

一方、日本政府の対応にはアメリカの意向が伺えます。

8月にヒラリーがASEANの地域安全保障会議で発言した様に、アメリカは南シナ海の南沙諸島や西沙諸島の領有権問題で、中国に対して対決姿勢を示しています。

オバマ政権樹立後はG2体制などと言って中国を持ち上げ、親中的でしたが、中国が人民元をなかなか切り上げないので、アメリカは中国と領有権問題を抱える国々に口先支援する事で中国政府を牽制しています。

日米関係は民主党政権樹立後、普天間問題で冷え込んでいましたが、菅政権は親米政権に舵を切りなおしています。そして、今回もヒラリーが「尖閣諸島は日米安保が適用さえれる」と口先支援する形で、中国に圧力を掛けています。

■ アジアのパワーバランスを調整するアメリカ ■

国力の衰退著しいアメリカは、フィリピンから撤退し、韓国軍も大幅に縮小する予定です。沖縄の海兵隊のグアム移転も既定事実です。

既に第七艦隊は台湾海峡や黄海に空母を入れる事すら、中国の反発で出来ない状態です。

しかし、アジアにおけるアメリカのプレゼンスが一気に低下する事は、アメリカの不利益になります。そこでアメリカは、中国と周辺諸国の領土問題を煽る事で、アジアに中国包囲網を築こうとしています。

尖閣問題での民主党の対応は、アメリカのアジア戦略の一環でしかありません。

■ 適当に付き合う中国 ■

中国の対応は一見感情的に思えますが、彼らはアメリカが望む役回りを上手く演じて見せています。

中国経済は現状、輸出と開発に頼り切った経済です。対米輸出の激減や、投資の引き上げは、中国経済の崩壊を意味します。中国はアメリカが経済制裁を実施する様な、表立った反米的行動は取れません。

しかし、アメリカとの間に適度な緊張関係が無ければ、「元の切り上げ」圧力に対抗出来ません。

中国はアメリカの足元を見て、アメリカのアジア戦略に適当に付き合っています。
その一方で、領有問題を抱える国々との間で、「元による貿易決済」を進めたり、「国債の持ち合い」を進めて、実質的な経済の繋がりを強化しています。

ベトナムやフィリピンなどの周辺国も、急激な中国への接近はアメリカの神経を逆撫でする事を知っていますから、領有問題でアメリカを頼る振りをしながら、中国を中心としたアジア経済圏の確立を模索しています。

■ 小沢カードが使えない菅政権 ■

日本としても、対米輸出より対中輸出が上回る現状を鑑みれば、中国と対立する事が好ましくない事は子供でも分かります。

法的には船長逮捕が正当であっても、その後の処理はもう少し穏便であった方が、切るカードが多くなります。

今回、辛うじて「撮影ビデオ」を非公開として、中国政府の体面を保っていますが、本来ならばビデオの存在を隠した方が、日本政府としても、振り上げた拳を下げやすかったはずです。

従来は「漁船拿捕-船長事情聴取-船長釈放」で中国に貸し1つで済んだ事件を、アメリカの思惑通り国際問題化してしまった菅政権はお粗末な政権です。
小沢カードが使えれば、多少事態が拗れても解決は容易だったのでしょうが、小沢氏と決裂してしまった以上、菅政権に事態解決の得策は残されていません。


拘留されたフジタの社員4人の釈放には、野中氏でも間に立てるのでしょうか・・・?

■ 結局アメリカにミカジメ料を払う日本 ■

今回の事件でヒラリーに大きな借りが出来た菅政権ですが、フジタ社員開放でもアメリカの力を借りれば、益々アメリカに頭が上がらなくなります。

後は、粛々とアメリカ国債を買い支えるしかありません。

高笑いが止まらないのは中国です。アメリカ国債を買い控え、日本国債に投資して円高誘導すれば、日本は為替介入で結局アメリカ国債を買わざるを得ません。

今回の尖閣諸島問題は、アメリカと中国の間に阿吽の呼吸するら感じます。東洋のちっぽけな島国の国民は、生き馬の目を抜くような大陸の抗争を生き延びた民族には所詮適わないのでしょう。


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