■ wikileaksが大活躍 ■
このところwikileaksの話題で持ちきりです。NHKでも特集を組むなど、その存在は各国政府も無視できない大きさとなっています。
wikileaksは、オーストラリアの天才ハッカー、ジュリアン・アサンジ氏とその仲間達が運営する内部告発サイトです。内部告発者の保護の法律が制定されているスェーデンの地下に巨大なサーバーを置き、世界各地に活動拠点と、多くの協力者を有すると言われています。現在はアイスランドもスェーデンと同様の法律を制定し、「正義のジャーナリズム」を国策として推進し、アサンジ氏を支援する動きを見せています。
wikileaksが4月に公開した、イラクでの米軍ヘリコプターからの蛮行は、世界に衝撃を与えwikileaksの存在を知らしめました。
その後、彼らはアフガニスタンの内情を内部告白し、今回、北朝鮮や中東に関する「外交的なやりとり」をリークして話題となっています。
■ 「内部告白」を支えるシステム ■
人は誰しも秘密を抱えると、それを口外したいという欲望に駆られます。
特に、精神が未熟な者程、その傾向は強く、幼児に口止めなどは不可能です。
大人においても、「口が軽い」ことは欠点であり、決して美徳ではありません。社会人は仕事や人間関係において少なからぬ「秘密」を有しており、それを口外しない事によって社会活動が維持されていると言っても過言ではありません。
「社会的罪悪」知った時、人は「正義」としてその秘密を暴露したいという義務感を感じます。しかし、実際にはその情報は「職務の一環」として入手される事が多く、服務規程に守秘義務がある事から、常識的な社会人は秘密を暴露する事はありません。
さらに言うならば、「秘密」が会社や組織に利益をもたらす場合が多く、「秘密の漏洩」は組織に損失を与えます。損失を被った組織は「裏切り者」を割り出し、秘密を漏らした本人はたいていの場合、個人的に大きな損失を被る事になります。
しかし、「内部告発が決してばれない」場合はどうなるでしょうか?
wikileaksが構築したシステムは、堅牢なセキュリティーと、個人情報を収集しないというシステムを約束する事で、インターネットの持つ匿名性を最大限に保障しました。
そして、wikispediaと同様に、複数の人物が検証を加える事によって、内部告発された情報の信憑性を精査します。
wikileaksは「匿名性」と「集団の知」というインターネットの特性を最大限に利用して、「内部告発」のハードルを下げ、人々の「正義感」を満足させるシステムを構築しました。
■ wikileksの影響 ■
イラクでの戦闘シーンのような派手な映像のみならず、wikileaksは政府や企業の内部文書を次々にリークしています。これらの文書の中には、見る人が見れば、非常に価値の高いものも含まれています。
世間的に今回話題になっているのは次の内容です。
① 米韓政府は金成日の死後2~3年以内に北朝鮮の政権崩壊した場合に備え、北朝鮮を 米韓の勢力下に置いた場合、中国の不満を経済協力によって抑えることを検討。
② イランは北朝鮮から核弾頭搭載可能な中距離ミサイルを16基購入している。
③ サウジアラビアの国王がアメリカ政府に、イラン攻撃を要請している。
この様な外交上知られたくない「事実」の漏洩に、各国政府は対応に追われています。
インターネットは2chに代表されるように信憑性の低いメディアですが、wikileaksに関しては、人々は「信頼できる情報」という評価を下しているようです。
■ 善意の仮面の下・・・・ ■
wikileaksは信頼出来るのか?と聞かれれば、「その内容はウソでは無い」と答えるのが妥当でしょう。
しかし、彼らがリークする内容に恣意的なバイアスが掛かっているとすれば、そこには明らかな意思と目的が出現します。
最初にリークされたイラクとアフガニスタンに関しては、その内容は多くの兵士達が体験してきた戦地の現実であり、多くの人々が既に知っている事です。大手メディアが報道してこなかった戦争の現実を、インターネットが報道したに過ぎません。
ところが今回のリークは、「政府間の外交の秘密」が暴露されています。そして、その結果、北朝鮮とイランを巡る情勢を混乱させています。
今後公開される資料にはバンカメリカの経営状況の漏洩が予定されています。
世界の情勢に目を配っている方には、wikileaksの狙いが透けて見えている事でしょう。彼らは「内部告発」という正義の仮面を被りながら、世界を混乱に落とし入れようとしています。
■ 「外交上の秘密」の重要性 ■
国際政治はキレイゴトばかりではありません。むしろその裏側は現実的な駆け引きの泥仕合です。
佐藤栄作元首相は、非核三原則を打ち出してノーベル平和賞を受賞しますが、その裏側ではアメリカと核持込の密約を結んでいました。佐藤氏はその密約の文書をアタッシュケースに入れて持ち歩き、生涯自分の近くから離さなかったと言われています。これこそが、外交に携わる者のあるべき姿です。
「正義」という浅薄な義憤にかられてwikileaksに漏洩される情報は、世界を影から動かす者達に良いように利用されるだけです。
いえ、むしろ、「内部告白者」自身が当事者である可能性を疑うべきでしょう。
「悪魔」はいつも「正義」の仮面を被って現れます。