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原子力発電所と核兵器・・・核をめぐる二つの欺瞞

2010-08-22 11:05:00 | 時事/金融危機




■ イランの原発が稼動 ■

ロシアの技術支援で建設されていたイランのブシェール原発(100万キロワット)が昨日燃料棒を挿入して稼動を開始しました。

アメリカは核兵器開発の繋がるとして長らくイランの原子力開発に反対していましたが、先にオバマ大統領はブシェール原発の稼動を容認する発言をし、その結果の稼動開始です。

ロシアはイランに原子力発電や天然ガスの利権を持っており、従来アメリカのイラン政策には反対の立場を表明していましたが、先に発表されたアメリカのイラン制裁にロシアが協力的な立場を取ったので、その結果の原発稼動とも言われています。

■ 原発と核兵器開発は直結しない ■

北朝鮮にしてもイランにしても、アメリカに対抗する国家の原発開発にアメリカが反対する理由は、使用済核燃料からプルトニュウムを抽出して長崎型の原子力爆弾を製造される心配があるからです。

しかし、商業用原子炉で生成するプルトニウム同位体の不純物が多く、複雑な構造の起爆装置を必要とします。

① 核反応は核反応物質の原子核から中性子を放出して核分裂を起こす。
② 放出された中性子は他の原子核に衝突して核分裂を起こし、さらに中性子を放出
③ 核物質の密度が臨界を越えると、核分裂が爆発的に加速して核爆発を起こす

④ 核兵器の起爆装置としては、爆薬で直線的に核物質を衝突させるガンバレル型の製造が容易。
⑤ 核兵器に使用されるプルトニウムはPu(239)である。
⑥ 同位体であるPu(240)が1%混入すると、反応速度が飛躍的に高まり、
  ガンバレル型起爆装置では核爆発以前に装置自体が破壊されてしまう。
⑦ 商業用の軽水炉で生成されるプルトニウムは20%のPu(240)の混入がある。

以上の事から、イランで軽水炉が稼動したとしても、簡単に原爆が製造できるかというと問題はそう易しくはありません。不純物の多いプルトニウムで核爆発を発生させる為には、インプルージョン式という複雑な起爆装置が必要になります。

⑧ インプルージョン式起爆装置は球体の表面から中心に反応物質を圧縮して臨界状態を作利出す。
⑨ 球体表面の爆薬の爆発の圧力によって、反応物質を圧縮する。
⑩ 爆薬の爆発のタイミングの極小さなズレで、臨界は達成されない。

以上の様に、イランで商業用の軽水炉が稼動して、仮にプルトニウムが抽出されたとしても、精密で複雑な構造のインプロージョン型の起爆装置が製造できなければ、即核兵器の開発には繋がりません。

■ 当分はロシアが再処理を担当する ■

ブシェール原発の核燃料の再処理はロシアが担当するので、ロシアが加担しない限り、イランが核兵器用のプルトニウムを手にする事はありません。

■ 高濃縮ウランによる核兵器 ■

アメリカが今回イランの原子炉稼動を認めた理由には、ロシアが供与する商業用の原子炉からは核兵器が製造される可能性がほぼゼロだからです。

一方、イランは広島型原発で用いられた原爆の材料である高濃縮ウランの製造をあきらめた訳では無いようです。

アフマデネジャド大統領は、イランがウランの濃縮を行うのはイランの権利であると主張しています。

今回のロシア製原発の稼動は、イランの独自のウラン濃縮の必要性を否定する上でも必要であったと言えます。

■ 北朝鮮でも同じ過程と辿った ■

ここで思い出されるのが北朝鮮の核開発です。

北朝鮮は兵器レベルのプルトニウムが生成出来る黒煙炉を独自開発しますが、アメリカはこれを阻止する為に、西側諸国の強力で軽水炉を建造する事を北朝鮮に合意させます。クリントン政権時代の事です。

しかし、その後、北朝鮮が秘密裏にウラン濃縮を行っている疑いが発覚し、軽水炉の県建設は凍結されます。これを受けて北朝鮮は寧辺(ヨンビョン)の原子炉を稼動し、原爆用のプルトニウムを抽出したと言われています。

■ 核兵器開発の必要性 ■

表面上だけ見れば、北朝鮮もイランも核兵器を開発する必要性があります。

アメリカを始め、世界を敵に回して自国が生き延びる為には、「核兵器」が不可欠だからです。核兵器は弱小国が強国を相手に取引するには、最強のカードである事は、北朝鮮を見ても明らかです。

■ 第二次大戦の戦勝国特権としての核兵器 ■

当初の核保有国は、アメリカ・ソ連・イギリス・フランス・中国の五カ国でした。これは第二次大戦の戦勝国です。

敗戦国である日本やドイツは高い技術力を誇りながらも、核兵器の保有は認められません。日本はイランと同様、燃料の再処理を他国に依存していましたが、現在は六ヶ所村の再処理工場が試験運転をしています。

原爆が投下された国としての、日本の核兵器に対するアレルギーの強さゆえに、再処理が認められているとも言えます。

■ 地域の緊張を高める「新核保有国」 ■

現在、戦勝5カ国の他に、イスラエル、インド、パキスタン、北朝鮮が核兵器を保有していると言われています。

イスラエルはアラブ諸国と、インドとパキスタンは相互に、北朝鮮は世界に対して緊張関係を持っています。

東西冷戦が終結した現在、この新たな核兵器が世界の平和を脅かしています。

■ 誰が各技術を供与したのか? ■

北朝鮮、パキスタンの核開発は、パキスタンのカーン博士の技術の下に、ならず者国家が結集した結果だと言われています。

核開発には、複雑な構造の起爆装置の開発や、特殊な遠心分離機をその他多くの技術的難題が立ちふさがります。

それを、この国際核シンジケートは、裏の世界で、世界の監視の目を盗んで達成して行ったと言われています。

・・・不思議な話です。核物質も、開発装置も国際的に監視されている中で、これらの問題国家がミスミス核兵器を開発出来たというならば、世界の諜報機関はずいぶんと「間抜け」としか言い様がありません。

むしろ、裏で核開発を手引きした者の存在を暗示させさえします。

■ 緊張を永続させる核兵器 ■

北朝鮮のみならず、核保有国に対しては、大国と言えども安易に攻撃を加える事は出来ません。

尤も、核兵器を搭載できるミサイル(ロケット)と、ミサイルに搭載できる小型核弾頭を開発しなければ、それらの核兵器はアメリカやその他の国を直接脅かすものではありあません。

北朝鮮の弾頭は巨大で、テポドンの積載量では核弾頭を搭載出来ません。

これらの国の所有する核兵器の脅威は、「地域限定」であり、むしろ紛争を抱える地域の抑止と緊張の永続化に寄与しています。

核兵器が東西冷戦を膠着状態にしたのと同じ働きを、ならずもの国家の核兵器は有しています。この点からも、これらの国々の核兵器は、世界を動かす者達にとって都合の良いものとなっています。

■ 本当に困るのは日本の核武装 ■

アメリカが一番恐れているのは、実は「日本の核武装」です。

日本は戦後アメリカの属領として、その保護の下経済発展し、その見返りとしてアメリカ国債を買い支える事で、アメリカの繁栄を支え、その崩壊の時期を遅らせています。

ギブ&テイクとも言えますが、見ようによっては、ヤクザにミカジメ料を払って守ってもらっている状態です。

日本が「核武装」すれば、表面上は日本はアメリカに守ってもらう必要が無くなります。町に自警団が出来て、ヤクザを追い出すのと同じです。

アメリカが日本の核武装を恐れるのは、日本が自主防衛を実現したら、ミカジメ料が得られなくなり、アメリカが崩壊してしまうからで、日本からの核攻撃を恐れている訳ではありません。

■ 技術的には弾道弾も作れる日本 ■

1tからの荷物を宇宙に打ち上げる事の出来るH2ロケットは、言うなれば大陸間弾道弾です。

小惑星探査衛星のハヤブサの大気圏再突入カプセルの、耐熱シールドは、核弾頭に不可欠で、各国門外不出の技術です。オーストラリアに落下したハヤブサのカプセルの大気圏突入を各国の情報機関は大きな興味を持って見守りました。

核弾頭も大気圏突入カプセルも、進行方向の空気を断熱圧縮する事で数千度の高温プラズマが発生し、断熱技術が無ければ核弾頭も再突入の熱で破壊してしまいます。日本は樹脂とカーボンの混合シールドを用い、この問題をクリアーしています。

打ち上げ技術も、制御技術も、大気圏再突入技術も有する日本は、核弾頭させ製造すれば、いつでもICBMを製造する事が出来ます。

日本のシミュレーション技術をすれば、起爆装置の製造も短時間で可能です。

■ マスコミを通じて核アレルギーを蔓延させるCIA ■

「核廃絶」は被爆国家としての日本の悲願です。アメリカとCIAは戦後、マスコミを総動員し、さらには学校教育も活用して、日本人を核アレルギー人種にしてきました。

今年、ルース駐日大使が広島の原爆式典に参加して話題となりましたが、日本人が核武装のメリットに目覚めない為には、多少の譲歩もアメリカにはメリットの方が大きいのです。

■ だからといって「核武装」してはいけない ■

メリットの多い日本の核武装ですが、もし日本が核武装しようものなら、全国に散らばる米軍は全力でそれを防ぐでしょう。

さらに日本の核武装は、日本の軍備拡張を警戒する韓国、中国を始めアジアの多くの国々の反発を招き、アジアでの日本の地位を崩壊させます。

■ 韓国の核武装 ■

韓国は北朝鮮と国境を接しているので、秘密裏にウラン濃縮を試み、それが露見して国際的な非難を浴びました。歴史的にみて大国の重圧に怯える韓国はそれでも核兵器保有の野心は捨てていないでしょう。「日本が持てない核」を保有する優越感に彼らはあがなえません。南北統一の暁には、韓国は北朝鮮の核の所有権を主張するでしょう。

アメリカの影響力がアジアで残っていれば、アメリカは韓国を核武装させて、中国とロシアに対抗させて、緊張の永続的維持を図るかもしれません。

■ 核をめぐる二重の欺瞞 ■

戦後日本人は核をめぐる二重の欺瞞に欺かれてきました。

一つは、日本の核武装のメリットを教えられない事。
そしてもう一つは、北朝鮮を含めならず者国家の核が、地域を安定化させている事。

さらに最近ではロスチャイルドを中心とする「原発クリーンエネルギー論」という欺瞞も加わります。

私達日本人は、「核の本当の力」を知らずに世界を見ていました。

ネットの時代、いつまでも「何も知らない日本人」ではいられません。
尤も、真実を知った人たちは、反動で極端な選択をしがちです。
ネット右翼の核武装論が良い例です。

唯一の被爆国家として、これからは「核の真実」を知りながらも、「核の廃絶」を訴え続ける義務が私達にはあります。