モン・サン・ミッシェルの巡礼で、初期ネーデルランドの画家ウェイデン(1399-1464) の「<最後の審判の祭壇画>」(フランス・ボーヌ施療院蔵)のことを書いた。
祭壇画とは、教会堂などの壁や床や窓に描かれたモザイク画、フレスコ画、ステンドグラスなどと並んで、旧約聖書、新約聖書や聖者伝などの場面を、崇拝の対象としてあるいは宣教のために板に描かれた絵のこと。
中世宗教絵画の中核をなす祭壇画、日本人には馴染みが薄いが、フランダースの犬でネロ少年が、アントワープ大聖堂(上/左)の祭壇に架かるルーベンス(1577-1640/フランドル・バロック)の傑作、「キリストの昇架」(上/中)と「キリストの降架」(上/右)を見ながら雪の日に天に召される場面は知られている。
馴染み薄いと言えば、フランスのアルザス地方、ストラスブール(上/左)から小一時間、コルマール(上/右)という町がある。
人口7万人足らずの小さな町だが、アルザスのベニスとも称される美しい水の町で、旧市街の一角に「ウンターリンデン美術館」がある。
この美術館のイチ押しは、これまた馴染みのない16世紀に活動したドイツの画家マティアス・グリューネヴァルト(1470-1528 /ルネサンス)が描いたとされる、「イーゼンハイムの祭壇画」。
話は少しそれるが、英国最大の画家のひとりウィリアム・ターナー(1775-1851/ロマン主義)。
クロード・モネ(1840-1926/フランス・印象派)は、普仏戦争を逃れて英国へ避難した際に、ターナーの「ノラム城、日の出」(上/左)などから大きな影響を受け、傑作「印象‐日の出」(上/右)を描いたとされることは以前に書いた。
そのふたりの作品を観るためにロンドン・パリという、聊か気恥ずかしくなるような旅の最後、帰国便に乗るためパリから列車でフランクフルト空港(下/左)へ向かう途中、ライン川の河川港を抱える交通の要衝であるがゆえに仏領と独領を行ったり来たり、歴史に翻弄されつつも両国の文化が混在する中世の街ストラスブールに寄り道、大聖堂など美しい町並みを楽しんだ。
カタリナ の提案で、16世紀初頭、ルネッサンスと宗教改革の嵐吹きすさぶこの時代、この時代だからこそと言うべきか。に、偶像化を否定するかのように、ちょっとおどろおどろしくも生身のキリストを描き、奇画と呼ぶに相応しい「イーゼンハイムの祭壇画」を見るため、ストラスブール駅(上/中)からコルマール駅(上/右)方面へと向かう電車に乗った。
Peter & Catherine’s Travel. Tour No.510
写真では、ストラスブールもコルマールも美しい街のようですね。どのような旅になるのか楽しみです。[E:foot]