機会があればと思っていた<大天使ミカエル>が見守る聖地<モン・サン・ミッシェル>への巡礼。
早朝に出発、夜も遅く帰る強行軍だったが、大きな感動と驚き、そして信仰のもたらす力、時代を問わず崇めるものへの畏れ、そんな何かを肌で感じた小さな旅だった。
修道院のマリア像の台座に、「NOTRE DAME D. MONT-TOMBE」とあったが、ノルマンディとブルターニュに跨るシシイの森の中、トンブ山と呼ばれる小高い地に蜃気楼のように浮かぶその姿は、石組みの壁がそそり立つ要塞、このように表現するのが一番相応しく思えた。
事実、14世紀には百年戦争に巻き込まれて城塞とされ、1789年のフランス革命時には政治犯の牢獄として使用されるなど、歴史に翻弄されてきたこの聖地、今や世界有数の遺産のひとつとされ、巡礼者のみならず多くの観光客が訪ね平和と自由を享受する。
平和と言えば、雨足が一向に衰えない聖地からの帰途、夕食のためノルマンディ地方の海辺の街カーンにある平和記念館に寄った。
この辺りは、第二次世界大戦でナチス・ドイツに反転攻勢をかけるべく連合軍が上陸、いわゆる D ‐ day 作戦が行われた地に近く、「史上最大の作戦」や「プライベート・ライアン」などの映画で記憶に残る。
最近、その「プライベート・ライアン」のスピルバーグ監督と主演のトム・ハンクスが製作、ノルマンディに降下した後ベルリン目指し転戦する、米陸軍空挺師団パラシュート歩兵連隊のある中隊を描く「バンド・オブ・ブラザーズ」という10話からなるTVドラマをDVDで観た。
ドラマに登場するキャラクターは総て実在する人物、無名の俳優が徹底したリアリズムで熾烈な戦いの場面を演じている。
今も生存する本人が各エピソードの冒頭に登場、戦争がもたらす悲惨、残酷さを贖いに得た平和と自由、そのことを語る言葉が重い。
話は戻って、平和記念館のロビーには実物と思しき当時の戦闘機が天井から吊り下げられ、夕刻にも関わらず小学生のグループが無邪気にそれに見とれ騒いでいた。
オルセーの合間、聖地巡礼の稿を終えて、ほんの70年ほど前、一人の狂気の者によって無辜の者がホロコースト・大虐殺されたこと、今もシリアで愚かな独裁者によって同じことが繰り返される悲劇を考えさせられている。
Peter & Catherine’s Travel Tour No.482
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