女にだらしないフィリッポ・リッピ。
ウフィツィ美術館に架かる彼の傑作は、「聖母子と二天使」と「聖母戴冠」。
祭壇画「聖母戴冠」(写真上・中)、教会からの束縛からの開放を象徴するかのように、巧みな空間構成と現実的な描写が見て取れる。
この絵のテーマは、帰天した聖母マリアが復活、肉体と魂が昇天した後に父なる神から戴冠される場面。
ゴシック美術以前の、押しなべて平板で均質的な解釈とは明らかに異なるとされる。
例えて、戴冠するのはイエスでなく父なる神であり、背景の玉座の周りには精緻な装飾が施される。
その背景の百合の花、聖母マリアのアトリビュート・表徴とし て、リッピやダ・ヴィンチの「<受胎告知>」、ボッティチェリの「<柘榴の聖母>」など、多くの作品に用いられる。
リッピの弟子のサンドロ・ボッティチェリ。
言うまでもなく、このウフィツィ美術館の主役として、盛期ルネッサンスの三巨人ダ・ヴィンチとミケランジェロ、そして、ラファエロまでも横に置かせている。
ボッティチェリも、「聖母戴冠」をテーマに描いていて、図らずもここウフィツィで師弟対決となった。
ボッティチェリの最も有名な祭壇画のひとつ、「サン・マルコ祭壇画 = 聖母戴冠と四聖人」(写真下)は、師リッピとは異なり、登場する人物が切り詰められているのが特徴。
聖母に加えて福音書記官聖ヨハネ、聖アウグスティヌス、聖ヒエロニムス、聖エリギウス、そして、天使たちが配されている。
ちなみに、「聖母戴冠」も「受胎告知」も、多くの画家がこのテーマに挑み、リッピと何かと比較される天使のようなフラ・アンジェリコも、この「聖母戴冠」(ルーヴル美術館蔵)を描いている。
ペトロ は、「三角関係みたいやな?」と口走り、カタリナ
から「喩えが不謹慎!」と眉を顰められる始末。
夭折の天才画家マザッチョ、奔放にあるがままに生きたリッピ、その彼らから40年の時を経てボッティチェリに至る初期ルネッサンス。
絵画や彫刻などのあらゆる芸術は、次第に自由を得てさらに闊達に、そして、伸びやかに表現されるようになり、文芸復興の花は、ここフィレンツェやヴェネツィア、ローマなどイタリアのみならず、ネーデルランドやドイツなど、ヨーロッパ各地で大きく開くのである。
小ブログ、そのイタリア・盛期ルネッサンスの巨人たちへと旅は続く。
ウフィツィ美術館も盛期ルネッサンスということで、ダ・ビンチやラ・ファエロなど楽しみにしています。
ピッティ宮に並ぶ多くのラ・ファエロも、これから登場するのでしょうか?
コメント[E:mailto]、何時もありがとうございます。
フィレンツェ、この街はやっぱりすごい街で・・・、書き始めて改めてそのように思います。
ウフィツィ美術館、ルネッサンスとバロックの巨人たちの後、また、街に出る予定です。
折々のことなど交えながら、ピッティ宮・パラティーナ美術館やカルミネ教会・ブランカッチ礼拝堂など、少し足を伸ばして、かつてフィレンツェと覇を競った斜塔の街ピサまでもと思っていますが、如何なりますことやら?