ペトロとカタリナの旅を重ねて

あの日、あの時、あの場所で
カタリナと歩いた街、優しい人たちとの折々の出会い・・・
それは、想い出という名の心の糧 

フィリッポ・リッピ ‐ ウフィツィ美術館

2011年02月24日 |  ∟イタリアの美術館

 教会からの束縛から解放されたルネッサンス運動。
 それは、僅か28歳で天に召された天才画家マザッチョによって、奇跡のように始まったとされる。

 彫刻家ドナテッロ、建築家ブルネツレスキと共に、初期ルネサンスの三大芸術家とされるマザッチョ。

  Photoここでは、そのマザッチョと40年ほど後の画家ボッティチェリ、そのふたりの間で、重要な役割を果たしたある画家のことについて触れてみたい。

 その画家とは、初期ルネサンスを代表するフィレンツェ派の巨匠フィリッポ・リッピである。

 幼くして孤児になった彼、カルミネ派の修道院で育てられ修道士となる。
 ただ彼は、ドミニコ会の修道士でリッピと同時期に活躍、サン・マルコ修道院に傑作「受胎告知」を遺したフィレンツェ派の巨匠フラ・アンジェリコとは対照的に、数々のスキャンダルを起こしている。

 リッピは、何人もの女性と浮名を流す恋多き男で、修道女と駆け落ちするなど奔放な生活を送ったことで知られる。
 修道女ルクレツィア・ブーティとの間に子までなし、還俗するはめに。
 そのおかげ?と言えばいいのか、後にボッティチェリの弟弟子として活躍するフィリッピーノ・リッピ画伯が誕生したと言う訳である。

 そのリッピ、極めつけの傑作、「聖母子とニ天使」(写真上)がここに架かる。

 Photo_2カタリナ が、「マリアの息遣いが感じられるというこの作品、背景にだまし絵のような枠を用い立体感を表現している。

 幼子イエスを支える天使たちのあどけない表情。
 とりわけ、静謐ながらも憂いをたたえた聖母マリア、その甘美で官能的な表情に生身の女性の伸びやかさを見て取り、画家のみならず市民も教会から開放された喜びを、「ほんとに?」 「多分!感じるのである

 この絵を眺めていると、「好きで女遊びしてたんやないんやで、おいら!」と、リッピの声が聞こえてきそうな気がしないでもない。

 ところで、彼と真逆なフラ・アンジェリコ。
 同じ町<サン・マルコ修道院>の壁に彼の「受胎告知」を見たが、奔放なリッピもこの「受胎告知」(写真下)を<サン・ロレンツォ教会>に遺していて、見比べてみるのも面白い。
 また、リッピから三十年ほど後、巨人ダ・ヴィンチも傑作「受胎告知」を遺し、ここウフィツィ美術館の一室に架かっているが、それは後日に。

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