ブランカッチ礼拝堂の主人公、それは、聖ペトロ。
ガリラヤ湖で弟アンデレと漁をしている時、イエスに声をかけられ最初の弟子になるシモン、後に、イエスからペトロと呼ばれるようになる。
イエスによって最初に選ばれた十二人の弟子、所謂十二使徒のリーダー的存在でもあったと言う。
その彼、主の受難という肝心な時に、大祭司の家の中庭で女中のひとりに「あんた、イエスと一緒にいたやろ?」と問い詰められ、畏れ多くも「おら、イエスなんて知らねえ!」と、なんと三度も否認(ラー・トウール「イエスを否定するペトロ(部分)/フランス・ナント美術館蔵)、挙句、主を見捨てて遁走。
逃げた後、「なんてことをしたんだ」と、恥ずかしくも号泣するのである。
そのことは四篇の福音書の全てに書かれてい、カタリナ に、「少しおっちょこちょいなのね、ペトロって」と嬉しそうに笑われる始末。
さらに、ローマで布教中、皇帝ネロの迫害が厳しくなり、「こりゃあかん」と言ったかどうか知らないが、アッピア街道を尻に帆かけてすたこら逃げる途中、復活後のイエスとばったりと出会うお粗末君?
師と出会った彼、「少し遅いんやけど」翻然と悟りの境地に至り、殉教を覚悟してローマに戻りネロに捕縛される。
捕縛された彼、師と同じでは余りにも畏れ多いと、自ら逆さ十字架を望み殉教する。
そのあたりのことは、<ポポロ教会>にもう少し厚く書いたが、そこまでおっちょこちょいとは露知らず? 彼の名を洗礼名に頂いた誰かも、随分とおっちょこである。
そんな聖人だがイエスの信頼は厚く、“ 天の国への鍵 ” を預けられる。
カトリックでは、この泣き虫ペトロを初代のローマ教皇とし、バチカンの丘、ペトロの墓があった場所にサン・ピエトロ大聖堂を建て敬う。
余談だが、小編でアイコン「」を頻繁に使っている。
そう、聖ペトロのアトリビュート・表徴は “ 鍵 ”、ヨーロッパなどの聖堂や教会を訪ねられた折、ファサードに多くの聖人像が並んでいるのを見かけられることでしょう。
その中で鍵を手にしているのが、わが聖人、おっちょこのペトロさん、くれぐれも “ 剣 ” を持つお方とお間違えのないように。
そのお方は才弾けた<パウロ>さん、サン・ピエトロ広場で両雄並び立たずの定説を覆し、ともにローマ第一の守護聖人として、わがペトロと鎮座(写真下)ましましておられますので。
Peter & Catherine’s Travel Tour No.322