※ オランダ ‐ アムステルダム/ライクスミュージアム編(10)‐ ベネルクス美術館絵画名作選(18)
オランダ絵画黄金期を築いたヨハネス・フェルメール(1632-1675)、かつてNY-フリック・コレクション編で「<婦人と召使>」(1667-68年頃)を投稿した。
それと登場人物が似ている、いわば続編ともされるのが「恋文」(1669-70年/44×39cm)である。
他にも「<手紙を書く女性>」(1665年頃/ワシントン・ナショナル・ギャラリー蔵)や「<手紙を書く夫人と召使>」(1670年頃/アイルランド国立美術館蔵)など、しばしば関連作品を描いている。
シターンを弾いている女性が、手紙を差し出す召使いによって稽古を中断された場面を描いた本作、ふたりが居る部屋とは別の部屋から覗いているかのような、彼の他作品には見られない構図が用いられているのが大きな特徴である。
また、本作には多くのアレゴリー・寓意が隠されているという。
足下には洗濯物籠と裁縫道具、影に隠れた左の壁には大きな地図が、戸口右手には装飾のある椅子の背に布が掛けられ、座席は楽譜が置かれている。
床のサンダルや立てかけられた箒、後ろの壁の帆船が行き交う海景図は恋愛情事を示しているとされている。
本作と「婦人と召使」、両作品とも手紙という当時の唯一の連絡の手段をとおして、女性の複雑な表情がこの場にいない恋人との事情を暗示している。
ところで観る者は、手紙の裏に封印が付いていることから未だ開けられていないことを知らされる。
が、女主人は、そのやや当惑した表情から誰からのものか明らかに知っており、召使いもまたその目つきや口元から事情が分っているらしきことを、窺わさせられるのである。
Peter & Catherine’s Travel. Tour No.1510