ペトロとカタリナの旅を重ねて

あの日、あの時、あの場所で
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それは、想い出という名の心の糧 

レンブラント「聖パウロに扮した自画像」

2018年01月19日 |  ∟ベネルクスの美術館

 ※ オランダ ‐ アムステルダム/ライクスミュージアム編(3)‐ ベネルクス美術館絵画名作選(11)

 栄光からの転落が始まった晩年期、巨匠レンブラント・ファン・レイン(1606-1669)は、「聖パウロに扮した自画像」(1661年/91×77cm )を描いた。

 浪費と放蕩の末、60年の暮、一家はそれまで住んでいた市庁舎近くブレーストラートの豪邸、現在はレンブラントの家。を引き払い、貧しいユダヤ人区ローゼンフラット街の小さな借家に移った。

 その翌年に描かれたという本作、顔の部分に集中する光に目を捉われるが、神の言葉を象徴する書物、目を凝らせば懐に差された<短刀>が見て取れ、それらのアトリビュート・表徴によって聖パウロに扮していることが理解(わか)る。

 ちなみに<聖パウロ>とは、キリスト教弾圧のためにダマスコへ向かう道中、突然、天からの目も眩む光に照らされ落馬、主イエスの声を聞き、熱心なキリスト教徒へと回心した聖人のこと。

 この時期、レンブラントは、「<放蕩息子の帰還>」(1666-68年頃/エルミタージュ美術館蔵)や「ユダヤの花嫁」(1665年/アムステルダム国立美術館蔵)などの聖書物語を描いている。

 が、それらは単なる物語ではなく、彼自身の告白、回想であり、描かれた主人公の内なる声に対する彼の共感だともされているようだ。

 本作もまた、悟りとも諦めとも解釈できる複雑な感情、内向的で憂鬱な雰囲気に満ちたその表情は、四十数年に及ぶ画業に対する矜持、あるいは郷愁とも受け止めたのだが、はて?
 Peter & Catherine’s Travel. Tour No.1491


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