「何事も 夢まぼろしと 思い知る 身には憂いも 喜びもなし」 (足利義政)
室町時代の将軍の中で、金閣を建てた三代・義満と並んで有名なのは、
銀閣を建立した八代・義政です。
義政は、趣味風流の世界に生きた男です。
能、水墨画、茶道、華道、書院造の建物、山水をあしらった庭など、
今日、日本文化の代表として海外にも紹介されている多くは、
義政の時代に形成されたといえます。
義政は政務を顧みず、東山に広大な山荘の建築に没頭しました。
その一部が室町芸術の粋を凝らした銀閣です。
風流の中で生き、最高の芸術の中に身を置いても、
一人の人間として、孤独な魂は、
「何事も 夢まぼろしと 思い知る」と述懐せずにおれなかったのでしょう。
「四十九年 一睡の夢 一期の栄華 一盃の酒」 (上杉謙信)
越後の武将・上杉謙信は、生涯、戦いに明け暮れました。
武田信玄との、川中島の決戦は有名です。
天下取りを目指す織田軍を、加賀で撃破し、信長を恐れさせました。
しかし関東平定へ進発しようとした矢先、病に倒れ、
49歳で、この世を去っています。
「戦功を競った一生も、一眠りする間の夢のようだ。
天下に名を馳せた一代の栄華も、一杯の酒ほどの楽しみでしかなかった」
人生の目的を知り得なかった空しさが漂っています。
「人間五十年 下天のうちを比ぶれば 夢まぼろしのごとくなり」 (織田信長)
これは、舞の『敦盛』の一節です。
織田信長は、好んでこの一節を歌いつつ、舞ったといいます。
天下統一へ向け、進撃を続けていた信長でしたが、
49歳で、部下の明智光秀に殺されました。
本能寺で襲撃を受けた時、炎の中で、
やはりこの一節を歌いながら死んでいったといわれています。
人間の一生は、夢か幻のように、アッという間に過ぎ去る、
というのが共通の感傷のようです。
やがて消えてしまうものを求めるか、
死がきても崩れない、本当の幸せを手に入れるか。
一度しかない人生、本当に求めるべきものの為に使うべきでは
ないでしょうか?
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