尾崎まことの詩と写真★「ことばと光と影と」

不思議の森へあなたを訪ねて下さい。
「人生は正しいのです、どんな場合にも」(リルケ)
2005.10/22開設

ファウスト

2007年12月22日 00時54分02秒 | 読書記録
残された人生の時間がどんどん過ぎ去って行くのは、僕も今生まれたばかりの赤ちゃんと同じ条件であるはずだ。けれど、さすがこの歳になるとテレビを見て夢のように蕩尽してしまう時間が、気分転換の他は、もったいなくてできなくなってきた。あした死ぬかもわからない自分であるが、この急行列車は人生の4分3を通過し、終着駅まで残りは4分の1を切った実感を持っている。
そういう焦りのような気持ちもあるのだろう、若いとき何度か読もうとしてそのつど挫折した経験のある本を、今年は意識して読んだ。ハイデッカーの「存在と時間」、ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」、ゲーテの「ファウスト」。
読み終えるためにそれぞれ一ヶ月以上かかってしまったが、後悔はない。


          【抄録】(第一部 P.119)

  ファウスト
君にいったじゃないか、快楽など念頭にないんだと。
私は目もくらむほどの体験に実をゆだねたいのだ…(略)
全人類に課せられたものを、
私は自分の内にある自我でもって味わおう、
自分の精神でもって最高最深のものを敢えてつかみ、
人類の幸福をも悲哀をもこの胸に積みかさね、
こうして自分の自我をば人類の自我までに拡大し、
結局は人類そのものと同じく私も破滅しようと思うのだ。

  メフィストーフェレス
何千年のあいだ、この堅い食べ物を
噛みしめてきた私のいうことをお聞きなさい。
産声をあげてから棺桶にはいるまで、
誰ひとりこの古いパン種を消化(こな)せたものはないんです。
私らのいうことをご信用なさい、この大きなご馳走は、
だた神というやつのために作ってあるんですよ。

 神が使わしたに違いない、メフィストーフェレスを憎みきれる人は少ないと思うが、この最後の怖ろしい一行は、ひょっとしたらゲーテの確信でもあったのではなかろうか?
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