尾崎まことの詩と写真★「ことばと光と影と」

不思議の森へあなたを訪ねて下さい。
「人生は正しいのです、どんな場合にも」(リルケ)
2005.10/22開設

「杉山平一全集(上)」

2006年02月14日 12時31分12秒 | 読書記録
厚さ5センチ以上もある辞書のような氏の詩業を
一週間かけて丁寧に読ませていただいた。
あまりの本の大きさに、駅のベンチで読んでいるとき、
何の本ですか、と美しい女性に声をかけられ、
久しぶりに鼻の下をのばしたこともあった。

僕たちがほとんど失ってしまった日本とその時代が
杉山さんが歩まれた人生と共に、そこにあった。
確かにこの本に、缶詰のように閉じこめてあった。

ほんの、さわりだけを…

辞書の中に迷いこんで
行きつけないで
よその家へ上がりこんで
紅茶をのんで帰ってきた
  
   (「辞書」より)

あなたも、この辞書のような詩集を読んで
美人のお家で、紅茶をのんで帰りましょう。

コメント (2)
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千葉一幹著「賢治を探せ」

2006年02月14日 11時26分46秒 | 読書記録
これまでの宮沢賢治の作品にに関する研究や紹介は、背景にある彼の宗教や思想と彼の実人生の歩みから解読するものがほとんどであった。
千葉さんはこの著書で、そうではなくて作品を作品として読むことから、新たに賢治を探そうとした。
キイワードは「春と修羅」における「まことのことば」である。
ラカン派の精神分析理論を援用し、言葉を人が獲得する経緯から、「修羅」の解明は圧巻である。
詩人による「私だけがわかる私の賢治」に閉口された方は、ぜひ一読を。
オンリイテキストに限定しようとされたせいで、新しい賢治像の提示とともに、ある種の不自由さや平べったさが少し残る賢治論でもあった。
著者の後書きにもあるように、それは次回の賢治論に期待したい。

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