「僕の双子の妹たち」白石公子著・・集英社
この本を読むきっかけは、いつも楽しみに覗かせてもらっている
まっしろな気持ちというブログに紹介されていたから・・
『僕の双子の妹たち』・・これまで何度このフレーズを心の中でつぶやいてきただろう。実のり、穂のか、僕、そしてじいちゃん、
四人の生活が始まった。・・・帯より。
とても読みやすく、本当は作者は詩人らしく、全体に流れる文章がとても抒情詩的で、優しいのだ。
物語は、突然の事故で両親を亡くした僕(直毅)と双子の妹(実のりと、穂のか)そしてじいちゃんが、それぞれその事実を受け止めて健気に助け合いながら生きていくという物、ただそれだけなんだけど、一つの家の中で、様々な父母の生前の事実にも直面して、乗り越えていくという物。
父が5年もの間、母に隠れて交際していた女性。
それは、僕より7歳年上の女性だった。
『安藤さんと呼ばれていた親父、親父と呼ばれていた安藤さん。僕らはいつの間にかお互いの知らない父の姿を断片的に提供しあっていた。それは二人だけの秘密の共有であり、一人では耐えられなっかった喪失感を埋めあっているようでもあった。』・・
家族に内緒で、心を引かれていく僕。
このくだりは少し悲しい。
それより何より、私がこの小説で一番言いたいのはじいちゃんの毎晩の料理。
ものすごく美味しそうで、今度作ってみたいと読むたびに思わせるのだ。
たとえば、
◎ナスの忘れ煮。
ナスに茶せん包丁を入れて、軽く素あげをして、熱湯をかけて油抜きをする。それを干しえびのだし汁で煮る。
火のかけているのを忘れるくらい、長時間弱火で煮る。・・美味しそう。
◎大根と油揚げの味噌汁。
油揚げに焼き色がついている。焦げ目を入れてある。・・これも美味しそう。
◎黒豚とほうれん草と、大根の鍋。
土鍋に日本酒と水を半々に入れる。
潰しニンニクを入れてひと煮立ちさせる。それに豚肉、ほうれん草、スライスした大根を好みで入れてさっと食べるシンプル鍋。・・これも美味しそう。
このように、毎晩じいちゃんの家計料理が登場する。これだけでもこの本を読むだけの価値ありていうところ。
ほのぼのとした、優しい気持ちになること請け合いの一冊でした。