週末のある日のこと。
「 これ、捌いてくれる?」トンボが抱えてきた。
「どうしたん?」
「家の竹下景子の友達が釣ったらしい。もらったのだけど、乳母日傘で育った家内のこと、よう捌かんと言うから持ってきた。」
なんと大相撲で優勝したお相撲さんが嬉しそうに抱えて、写っているような立派鯛ではないか。
「俺の刺身用一人前あればいいから 後は食べてくれていい。」
当店にはイリコさんという捌き専門がいるし、さすらいの調理人そのがいる、そういうことならお任せあれ・・・
←お刺身入れの容器を持参していたので これに盛り付けてお持ち帰り頂きました。
「これでいいの?もう半身とお頭持って帰る?」
「いらん、いらん。おれの昼飯のおかずがあればいいから、あんたらぁで処分して。」
「なーんか悪いね、でも、もらったのは奥さんでしょう?奥さんは食べんの?」
「家内はこんな高級魚は食べやせん。」
「乳母日傘で育ったんいじゃないの?」
「もう食べ飽きたんだと。」
「そうなんだぁ。勿体ない、こんなに美味しいものを。」
それならと我々もお刺身を作り、残りは明日にでもカルパッチョにでもして食べようかな、と思っていた。
←これは皮をつけたまま 熱湯をかける。そしてすぐさま氷水にくぐらせる。
さて、翌日のことです。
「家の竹下景子が、『あんたは自分のことしか考えとらん、なんで自分の刺身しか持って帰らんのよ。信じられん。』といって俺は3切れしか食べさせてくれんかった、おばあさんなんか、お醤油をたっぷりつけてむしゃむしゃ食べてたわ。」
「もう、だけ、私が言ったでしょう。そりゃ奥さん怒るわ、私らが たぶらかして、ぶんどったみたいでまるで悪者じゃん。」
というわけで、昆布ジメをした鯛をお持ち帰り頂きました。まったく!!
でも粗だってお頭だって立派な一品になる。
粗煮と骨についていた身をほぐして鯛のそぼろ丼を作りました。
やはり腐っても鯛です。とても美味しゅうございました。
ゴチになりました。トンボさん、奥様。
またいつでも料理いたしますのでお申し付けください。
晴れ 10℃