おじたん。的ぶろぐ生活。

おじたん。である。語るんである。

クライマーズ・ハイ。

2008-07-17 22:26:57 | 我思う、故に書くなりよ。
昨日、観てきました。

ベースが航空機事故ですから、明るい話題なんか1つも無い上に、地方新聞社のゴタゴタドロドロですからね…。160分は実に長い時間なのだけれど、あっと言う間にエンディングになってしまう不思議な感覚。

他人の揉め事、他人の不幸ってのは、どうしてこうも人の心を引きつけ、魅了して巻き込んでしまうのか不思議でもありますが、そうした関係者でもない限り垣間見れない状況を観ているウチに、あたかも、関係者の1人として見せられているウチに、こっちが「ハイ」にされちゃうからなのでしょうな…。

少々、いろいろと詰込みすぎて、消化不良気味な点は多々あるかと思います。特に、ベースとなった事故を知らない若い人も増えつつあるんで、原作を読んでから…の方が楽しめると思います。後ろで観ていた若いカップルのねぇちゃんは…

「ねぇ、オオクボ・レンセキって何? 飛行機?」

と、にいちゃんに尋ねてましたが、尋ねられたにいちゃんも知らないだろうなぁ…。

まぁ、私の世代でもリアルに知っている人は少ないと思いますんでね…。ベースにある事故にはリアルに関わり、下っ端でしたが報道としてあの現場にも行きましたから、良く知っていますけど、オオクボ・レンセキはTVでしか知りませんし。

物量的には不満ですけれど、あの事故で右往左往する様はリアルに表現されていました。

飛行機が落ちた…のはそこにいる誰もが判ってはいたコトですが、どこに落ちたのか誰も判らなかったのです。見回しても暗く、黒い森しか見えないし、まだ何も判っていないのにどんどんヤバイ雰囲気が濃くなっていくんです。

大体の位置が判明すると、我先に現場を目指すワケですが、下っ端の我々は連絡員、フィルム処理、雑用として地元に残りました。

で、諸先輩方がドロドロのボロボロで帰ってくるのを待つのですが、帰って来た時の「目」。忘れられません。映画では精神を破綻させてしまう記者がいますけど、あの目は反則なくらいにリアルでしたねぇ…。迫真の演技であって、迫真に見える演技じゃないんだなぁ…。

精神破綻とは行かないものの、銜えたタバコで唇を焼いてもポカーン…っと虚空を見つめたままの人がいたり、涙を1滴のこらず振り絞る様に固く目を閉じながら、血の混じった胃液を吐き続ける人がいたり、カメラから指が離れなくなり、フィルム交換出来ずに降りて来ちゃった人もいましたし…。現場だけでなく惨状はあちこちにあったと記憶しています。

その誰もが言った言葉…

「地獄…」

事件事故でメシを食ってると自負してはばからない人達が記者、カメラマンだったりもしますが、そんな彼らでも、あの惨状は「地獄」だったワケで、それをどう伝えるのか? 伝えていいものかどうなのか、言葉をも失う「地獄」と「時間」との戦いは実際にありましたからね…。

ま、それら全てを任された男が何を決断したのかは、映画でも一番の見所かもしれません。本物の迫真の演技と、臨場感に溢れた映像、160分が短く感じられる秀作じゃないかな…。願わくば…CMでズタズタにされる様な形でTVでやって欲しくない…と言う、久々に見応えのある映画でもあると思います。



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