タイトルに惹かれて読んでみたいと思った本。
図書館で借りてみました。
音楽は大好きだけれど音楽大学で勉強したことがあるわけではないので、西洋音楽の体系やその成り立ちなど改めて知ってみたいと思ったからです。
そもそも神に捧げるミサ曲としての意味合いが強かった西洋音楽は、使ってはいけない音や決まりが多く作曲者もさぞかし大変だったことだろうと思います。
でも、禁止されると使ってみたくなるのが人の常。
「禁断の実」をそれとわからないように(解釈を変えて)使ってみたりして。
まあ、昔も今も人は変わらない生き物ですね。
まだこの本を最後まで読めていないんですが、書き留めておきたかったことがあるので少し。
それは「調性」の話。
以前にギタリストの梶原順さんと打ち上げか何かで話していて、曲の調で雰囲気がどれくらい変わるかなんて言うことを色々と話したことがあります。
ピアノを弾くときにいつも思っていたんだけれど、例えばドビュッシーの「月の光」という嬰ハ長調の曲をハ長調にするとなんともつまらない曲になってしまうなあということがありました。
あの独特のキラキラした透明感がなくなって、なんだかどうも「平坦な」曲になってしまう。
バッハは、ベートーベンは、ドビュッシーは、、、、どうやってその曲の調を決定したのか。
作曲家としては興味深いところでした。
そういった興味に参考になるところが書かれていたので転載しておきます。
マッテゾン・ヨハンの『新設のオルケストラ』(1713年)の24の調のあり方からの抜粋だそうです。
【転載開始】(P132~133)
1.Dm(ニ短調) むしろ献身的、穏やか、喜ばしく満足感を与える
2.Gm(ト短調) 優しく、活気づける。満足感を与え、胸を焦がす
3.Am(イ短調) むしろ沈痛で、辛抱強い
4.Em(ホ短調) 哀愁を帯び、困惑し、悲しい
5.C(ハ長調) 屈強で、大胆な性格
6.F(へ長調) 寛容さ、忠実さ、愛
7.D(ニ長調)、むしろ鋭く、頑固
8.G(ト長調) ほのめかすようでいて、雄弁
「これら8つの調がもっともよく知られるものであるが、次の諸調も同じくら有用で快いものである」
9.Cm(ハ短調) 極端に愛らしいが、悲しい
10. Fm(へ短調) 温和で、感傷的、心配と絶望
11. B♭(変ロ長調) 気を晴らし、壮大
12. E♭(変ホ長調) ただ真面目で、悲しげ
13. A(イ長調) 輝かしくあるが、また同時に痛ましく心を打つ
14. E(ホ長調) 病的に悲しい。寄る辺なく、絶望的
15. Bm(ロ短調) 奇妙で、喜びを欠き、憂鬱
16. F#m(嬰へ短調) 苦悩。しかしより活気がなくなる感じ
「すべてを知ることを望む者は、次の調を加えなければならない」
17. B(ロ長調) 矛盾していて、硬く、不快で、絶望的
18. F#(嬰へ長調)
19. G#m(嬰ト短調)
20. B♭m(変ロ短調)
21. A♭m(変イ短調)
22. C#m(嬰ハ短調)
23. C#(嬰ハ長調)
24. D#m(嬰二短調)
ロ短調以外のこれらの残りの調が生み出す効果についてはまだほとんど知られておらず、後世にゆだねられるべきだろう。
【転載終了】
なるほどね。
ワーグナー(独)(1813-1883)、ドビュッシー(仏)(1862-1918)、やラヴェル(仏)(1892-1932)など、その後の作曲家たちにしても、さぞかし、そのほかのいろんな調の生み出す効果を知りたかっただろうと思います。
自身の探究心と発見と作品を発表したくてもそれがなかなか叶わなかった昔の時代。
それに比べると今は本当に自由に音楽を試せる、ありがたい時代ですね。
「調性って何?」という私の疑問と似たような疑問を持っていたと思われる、ピアノの天才フランツ・リストの「無調のバガテル」という面白い曲の音源を張っておきます。
追記ですが、調性を超越した代表格として知られているワーグナーが「トリスタンとイゾルデ」というオペラ曲で用いた「トリスタン和音」が、所謂ハーフディミニッシュという和音として今のポップスに多用されているというのを知って、面白いなあと思いました。
ちなみに、私もよく使ってしまう和音です。
と言うことで、調についてのお話はまだまだ興味深いテーマなので、またいつか続きを書いてみたいと思います。