人だすけ、世だすけ、けんすけのブログ

愛知13区(安城市・刈谷市・碧南市、知立市、高浜市)
衆議院議員 おおにし健介

AIJ問題で明らかになった企業年金の構造問題

2012年03月21日 | 政治
 AIJ投資顧問による2000億円もの年金資産消失は、ただでさえ年金への不信や将来への不安がある中、人々に衝撃を与えました。
 今回、被害にあったのは、その大半が中小企業が集まって作る「総合型」の厚生年金基金です。そのうち、約90億円の資金をAIJに委託していた厚生年金基金の常務理事から話を聞く機会がありました。
 この厚生基金からは、AIJ委託分の損失について償却期間を猶予してほしいとの要望がありました。個人的には、これは可能と思います。しかし、それは、あくまでAIJへの運用委託という一過性の事件を解決するだけの問題です。この厚生年金基金がAIJに委託していたのは、全資産の10%だったので、この問題さえ乗り切れば何となるという考え方なのかもしれませんが、私はそうは思いません。企業年金の構造的問題に目をつむって、今回の事件だけを処理しても、いずれ制度が破たんすることは目に見えています。
 この企業年金の一番の問題は、「代行」という制度です。各企業が独自に運用する企業年金と本来、国が運営する厚生年金の一部を、徴収・運用・支払まで民間に代行させるのが厚生年金基金の仕組みです。この仕組みは、高度成長期、また、金利が高かった時代には、スケールメリットを享受することができました。しかし、低成長、低金利時代となったにもかかわらず、多くの厚生年金基金が予定運用利率を5.5%のままにしていたので、この制度は行き詰ってしまいました。そこで、単独企業やグループ企業で厚生年金基金を作っていたところは、ほとんどが厚生年金の代行部分の利回りまで運用して稼ぐのは無理だと判断して、「代行返上」をし、基金を解散しています。
 一方で、中小企業が集まって作る基金は、ただでさえ財政状況が苦しい中、構成する企業の同意を取りつけるのが難しく、さらに、「代行割れ」といって、代行部分の穴埋めをしないと解散もできないので、やむを得ず、ここまでやってきたというのが現実です。
 解散の難しさを示す事例があります。2006年に50のタクシー業者が作る「兵庫県自動車厚生年金基金」が解散の道を選びました。しかし、「代行割れ」の穴埋め金をの支払いをできたのは21社で残りは10年分割払いを選び、その後、穴埋め資金が払えない会社が「年金倒産」し、倒産した会社の債務は残りの会社が肩代わりすることになり、結局14社が経営破たんするという結果となってしまいました。
 厚生年金基金の運用の失敗は、第一義的には自己責任です。したがって、安易に厚生年金の積立金や税金で穴埋めすることは許されません。しかし、代行制度で国の行う厚生年金の運用を一部代行させてきた以上、国にまったく責任がないとは言えません。構造的な問題を解決するために、総合型厚生年金基金が解散できるような支援策を国が講じる責任があると考えています。
 また、総合型の厚生年金基金の約9割に天下りがいたのに対して、単独・連動型基金では13%にとどまっていたとの指摘があります。AIJの勧誘に、社会保険庁OBのコンサルタントが大きな役割を果たした疑いもあります。ちなみに、私が話を聴けた基金の常務理事も歴代、社保庁のOBでした。
 日本経済新聞の関連会社である格付投資情報センター」(R&I)が発行する情報誌「年金情報」が、AIJを顧客のアンケート評価で1位と評価していたことなど、AIJの詐欺を見抜けなかった当事者だけの責任にできない部分もあると思います。
 私自身、そうですが、現在では、大学卒業して入社した会社に定年までいることは当たり前ではない時代になりました。終身雇用を前提に、企業が退職後の年金まで面倒を見るという仕組み、国もそれを前提に厚生年金の一部を「代行」させるという制度自体が時代に合っていないことは明らかであり、抜本的な制度改革が必要です。


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