人だすけ、世だすけ、けんすけのブログ

愛知13区(安城市・刈谷市・碧南市、知立市、高浜市)
衆議院議員 おおにし健介

TPPは開国か、亡国か

2011年11月16日 | 政治
 APECでのTPP交渉への参加表明をめぐっては、党内で23回ものプロジェクトチーム(PT)総会が行われ、賛否両方の立場から活発な議論が行われ、国会においても予算委員会での集中審議が行われました。
 野田総理はハワイでのAPECで参加に向けて関係国と協議に入ることを表明しました。
 私の考えは、いくつかの前提を付した上で、交渉には参加をすべきという立場です。ただし、わが国として合意できない内容になる場合には離脱すべきと考えます。

1.農業か工業かではない
 愛知13区は、「日本デンマーク」の農業とトヨタのものづくり産業が共存共栄する地域です。日本が輸出立国であり自由貿易の恩恵を最も受ける国の一つであることを否定する人はいないはずです。一方で、食料安保、食料自給率維持のためにも農業を守ることは当たり前のことです。
 農業団体の反対運動によって、TPPは工業のために農業を犠牲にするものかのような誤解がありますが、農業対策はTPPに参加するしないに関係なく、やらなければならないことです。韓国が米国とFTAを締結した時にも大規模な農業対策を行いました。GATTウルグアイラウンド対策費は約6兆円でした。農業に様々な不安がある中、予算額を示せないまでも、真の基盤強化につながる思いきった農業対策を行うことを政府はもっとはっきりと言えばよいと思います。

2.何を絶対に守るのか
 慎重派からの様々な懸念の中には理解できる点も多くありますが、それはTPPの合意内容が固まった時点で具体化する問題です。TPPはすべての関税撤廃を原則に、全ての品目をテーブルに載せる必要がありますが、交渉によって一定の除外品目が認められる可能性があると言われています。米国も砂糖と乳製品の例外扱いを主張しているとの情報もあります。関税を撤廃する場合は直接支払い制度によって農業の保護が行われますが、778%もの高関税がかけられており、日本の伝統や文化に深い結びつきを持つコメは除外品目として主張せざるを得ないと私は思います。岡田元幹事長も同趣旨の発言をしたと聞いています。
 また、国民皆保険も守らなければならないものの一つです。
 交渉戦略上、事前に明らかにすることは難しいと思いますが、当然、これだけは譲れないという点はしっかりと持って、それが守れない場合は毅然として離脱すべきです。途中での離脱ができないという人がいますが、そんなことはありませんし、最後は、国会での批准が必要になります。

3.虎穴に入らずんば虎児を得ず
 交渉参加の是非を判断するには情報が少なすぎると批判があります。この指摘は政府としても真摯に受けとめるべきです。ただし、交渉に参加しなければ、正確な情報も入らないし、懸念事項が事実かどうかの確認もできません。今後、さらに情報提供や国民的議論の機会を増やしていく必要があると思います。
 また、TPPは米国に都合のよいルールを押しつけられるものであり、日本がルール策定過程に日本の利益を反映させることなどできっこないという指摘がありますが、これは「負けるかもしれないので土俵には上がらない」と言っているのに等しいことです。日本はそんな縮み志向でよいのでしょうか。
 さらに、二国間の交渉だと両国の力関係がじかに反映されますが、多国間だからこそ米国に対してモノが言えるということもあります。
 いずれにしろ、まずは、虎穴に入ってみなければ、虎児がいるかどうかも分からないのです。

4.日米同盟とアジアの中の日本
 私は、TPP交渉参加の判断は、経済関係にとどまらず、安全保障や国際関係からの大局的判断が必要だと思います。昨年のAPEC首脳会議では、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)を追求していく上で、ASEAN+3、ASEAN+6、TPPを基礎に発展させていくことが確認されています。このうち既に交渉が進んでいるのはTPPだけです。TPP交渉と同時並行で日中韓進めればいいのです。日本がAPECで参加表明したことが引き金になって、メキシコ、カナダが参加表明を行いました。米韓FTAの批准に手間取っている韓国もTPPの動きに刺激を受けていると言われますし、中国もTPPの動きを気にしています。
 日中関係は重要ですが、尖閣の話を待たずとも、自由主義経済や民主主義を共有できていない中国との間に高いレベルの経済連携を実現するには困難が予想されます。私は、TPPは米国の対中戦略の側面を有していることは否定できないと思っています。日米同盟関係の上に立った判断が求められていると思います。

 慎重派からは「韓国のように二国間のEPAやFTAを進めればいいじゃないか」との声があります。そのとおりです。ただ、それは民主党内にも自民党内にも賛否両論があることから分かるようにこの問題が非常に難しい問題であり、これまでの政権がさまざまなしがらみから、その困難な問題を先送りしてきた間に、EUや米国との経済連携を進めてきた韓国に先を越されてしまったことを忘れてはいけません。日本は、これ以上足踏みすることは許されない状況に追い込まれています。私は、勇気を出して踏み出すことが必要だと思います。