8日間、40時間に及んだ消費税律引き上げのための法案の提出をめぐる党内議論は、拍手と怒号が飛び交う中で、28日の未明、政調会長への一任の幕引きとなった。
この間、慎重派、推進派双方から、有意義な意見や指摘があり、論点が明確になったことは私は率直に評価してよいと思う。一方で、慎重派からの指摘に対して、政府、党執行部が説得力ある回答ができなかった場面も見られた。法案を提出しても、この先の審議では野党から厳しい追及を受けることになる。党内議論を真摯に受け止めて、更なる検討を促したい。
慎重派の議論も容れて、修文や内容の変更も行われた。そのことは、慎重派にはなお不満もあるだろうが、私は、前原政調会長をはじめとする執行部の努力を評価しなければならないと思う。
たとえば、将来の更なる税率引き上げについて定めた附則28条は最終的に削除された。また、附則27条の関連する諸施策については、議員からの指摘が多く採り入れられ、法案に具体的になかなか書けない部分についても、「検討課題に対する法案提出後の対応の方向性」という形に整理をして、別途閣議決定をして、実行を担保することとした。ただし、附則27条に関連して、簡素な給付措置と給付付税額控除の制度設計と財源のあり方については、政府・与党の答弁が乱れる場面があり、生煮えであることが明らかになった。「逆進性対策は、消費税率引き上げと表裏一体であり、この部分がつまっていない法案は了承できない。」という慎重派の指摘はある部分では理解できるところもあり、今後、速やかに中身をつめていくべきである。
最後まで残った論点の一つが、附則18条の景気条項である。「デフレ下では増税すべきでない。」、「増税は、経済状況の好転を前提とすべきである。」との意見は、私も同じである。経済状況の好転をいつ、どのように判断するかは難しい問題である。法案の中にあまりに具体的に書きすぎると、時の政権、為政者の判断を拘束してしまうことになるので、私も当初は、具体的な数字を法案に書きこむのは難しいと考えていた。しかし、予算委員会で安住大臣が「今の経済状況なら増税は可能。」と答弁したり、藤井税調会長が「マイナス成長でも増税は可能」と発言するのを聞き、さすがに、経済がどんな状況でも財務省に押し切られて増税するというのでは困ると考えた。何のための増税かと言えば、税収を増やして社会保障を持続可能なものにするために充てるためである。景気後退局面で増税し、消費の冷え込みと景気後退で税収が落ち込むのでは、何のための増税か分からない。この点、前原政調会長から最終日に示された修正案は、条件とはしないものの、閣議決定した成長戦略にある名目3%、実質2%程度の成長率を政府の経済運営の目標として法案に書き込んだ点で、私は評価したいと思う。二項の書きぶりが、税率引き上げの停止条件になっていないことには、多少の不満は残るが、そこは、党内議論を受けて前原政調会長が与党を代表して、経済状況の好転を前提とすることを責任をもって担保すると同時に、今後の国会審議の中で政府に縛りをかけていくしかないと考える。
午前2時を回って、石井一参議院予算委員長が「慎重派の指摘は理解できる。私自身も、最初に、野田総理が消費税引き上げを言い出した時には、なぜ、この時期に余計なことを言い出すのか思ったこともある。しかし、野田総理が、政治生命をかけて、不退転の決意で年度内に法案提出をすると公言している以上、ここで法案提出しないという選択肢はない。そんなことになれば、野田内閣は総辞職しなけらばならない。消費税引き上げを掲げて、代表選を戦い、党内の民主的プロセスを経て、野田総理が選ばれた以上、その決断に従うべきだ。反対するなら、9月の代表選挙で慎重派の代表を候補者に担いで戦うべきだ。」と述べた。私は、基本的に、この石井先生と同じ考え方である。個人的には異論があっても、議論を尽くして、自分たちが選んだリーダーが最終的に決めたことは、党として支えるフォローワーシップが必要である。どうしても嫌ならそのリーダーを代えるしかない。
法案の内容を吟味する法案審査ということは別にして、与党としては、異論はあっても、どこかで決めて、前に進める責任がある。この条文をこう書きかえれば、積極的ではないが了承するという人とは話し合う余地がある。しかし、何をどうしようが現時点での法案提出は了承できないという人と何時間、話をしてもらちが明かない。もちろん、意見を十分に聴くということでは、丁寧な議論は必要である。しかし、昨夜のような決め方になるのであれば、ここまで時間をかける必要があったのか、また、平場の議論だけでなく、もっと、妥協の余地を残している慎重派の議員対する個別の丁寧な根回しが必要だったのではないかと感じる。
たしかによい議論だったとは思う。野党の国会質問よりも、ずっと深い議論だったと言ってもよいくらいだ。しかし、クローズな議員同士の議論は、外には伝わらない。マスコミや国民の目には「また、民主党が中で揉めている。一週間もああでもない、こうでもないと話ばかりして、決められない与党、民主党は大丈夫か。」と映るだけである。
いずれにしろ、国会への法案提出は、入り口に過ぎない。ねじれ国会での法案成立は、もっ難しい。また、たとえ法案が成立しても、議員定数削減をはじめとする政治改革、行政改革の断行、デフレ脱却、景気の好転、税率の転嫁や表示方法、逆進性対策等クリアしなければならないハードルは数多い。これからの方がたいへんである。
TPPの時もそうだったが、党内における意思決定のあり方について、民主党は与党として、いまだ未成熟であることを露呈した決着だったと言わざるを得ない。
この間、慎重派、推進派双方から、有意義な意見や指摘があり、論点が明確になったことは私は率直に評価してよいと思う。一方で、慎重派からの指摘に対して、政府、党執行部が説得力ある回答ができなかった場面も見られた。法案を提出しても、この先の審議では野党から厳しい追及を受けることになる。党内議論を真摯に受け止めて、更なる検討を促したい。
慎重派の議論も容れて、修文や内容の変更も行われた。そのことは、慎重派にはなお不満もあるだろうが、私は、前原政調会長をはじめとする執行部の努力を評価しなければならないと思う。
たとえば、将来の更なる税率引き上げについて定めた附則28条は最終的に削除された。また、附則27条の関連する諸施策については、議員からの指摘が多く採り入れられ、法案に具体的になかなか書けない部分についても、「検討課題に対する法案提出後の対応の方向性」という形に整理をして、別途閣議決定をして、実行を担保することとした。ただし、附則27条に関連して、簡素な給付措置と給付付税額控除の制度設計と財源のあり方については、政府・与党の答弁が乱れる場面があり、生煮えであることが明らかになった。「逆進性対策は、消費税率引き上げと表裏一体であり、この部分がつまっていない法案は了承できない。」という慎重派の指摘はある部分では理解できるところもあり、今後、速やかに中身をつめていくべきである。
最後まで残った論点の一つが、附則18条の景気条項である。「デフレ下では増税すべきでない。」、「増税は、経済状況の好転を前提とすべきである。」との意見は、私も同じである。経済状況の好転をいつ、どのように判断するかは難しい問題である。法案の中にあまりに具体的に書きすぎると、時の政権、為政者の判断を拘束してしまうことになるので、私も当初は、具体的な数字を法案に書きこむのは難しいと考えていた。しかし、予算委員会で安住大臣が「今の経済状況なら増税は可能。」と答弁したり、藤井税調会長が「マイナス成長でも増税は可能」と発言するのを聞き、さすがに、経済がどんな状況でも財務省に押し切られて増税するというのでは困ると考えた。何のための増税かと言えば、税収を増やして社会保障を持続可能なものにするために充てるためである。景気後退局面で増税し、消費の冷え込みと景気後退で税収が落ち込むのでは、何のための増税か分からない。この点、前原政調会長から最終日に示された修正案は、条件とはしないものの、閣議決定した成長戦略にある名目3%、実質2%程度の成長率を政府の経済運営の目標として法案に書き込んだ点で、私は評価したいと思う。二項の書きぶりが、税率引き上げの停止条件になっていないことには、多少の不満は残るが、そこは、党内議論を受けて前原政調会長が与党を代表して、経済状況の好転を前提とすることを責任をもって担保すると同時に、今後の国会審議の中で政府に縛りをかけていくしかないと考える。
午前2時を回って、石井一参議院予算委員長が「慎重派の指摘は理解できる。私自身も、最初に、野田総理が消費税引き上げを言い出した時には、なぜ、この時期に余計なことを言い出すのか思ったこともある。しかし、野田総理が、政治生命をかけて、不退転の決意で年度内に法案提出をすると公言している以上、ここで法案提出しないという選択肢はない。そんなことになれば、野田内閣は総辞職しなけらばならない。消費税引き上げを掲げて、代表選を戦い、党内の民主的プロセスを経て、野田総理が選ばれた以上、その決断に従うべきだ。反対するなら、9月の代表選挙で慎重派の代表を候補者に担いで戦うべきだ。」と述べた。私は、基本的に、この石井先生と同じ考え方である。個人的には異論があっても、議論を尽くして、自分たちが選んだリーダーが最終的に決めたことは、党として支えるフォローワーシップが必要である。どうしても嫌ならそのリーダーを代えるしかない。
法案の内容を吟味する法案審査ということは別にして、与党としては、異論はあっても、どこかで決めて、前に進める責任がある。この条文をこう書きかえれば、積極的ではないが了承するという人とは話し合う余地がある。しかし、何をどうしようが現時点での法案提出は了承できないという人と何時間、話をしてもらちが明かない。もちろん、意見を十分に聴くということでは、丁寧な議論は必要である。しかし、昨夜のような決め方になるのであれば、ここまで時間をかける必要があったのか、また、平場の議論だけでなく、もっと、妥協の余地を残している慎重派の議員対する個別の丁寧な根回しが必要だったのではないかと感じる。
たしかによい議論だったとは思う。野党の国会質問よりも、ずっと深い議論だったと言ってもよいくらいだ。しかし、クローズな議員同士の議論は、外には伝わらない。マスコミや国民の目には「また、民主党が中で揉めている。一週間もああでもない、こうでもないと話ばかりして、決められない与党、民主党は大丈夫か。」と映るだけである。
いずれにしろ、国会への法案提出は、入り口に過ぎない。ねじれ国会での法案成立は、もっ難しい。また、たとえ法案が成立しても、議員定数削減をはじめとする政治改革、行政改革の断行、デフレ脱却、景気の好転、税率の転嫁や表示方法、逆進性対策等クリアしなければならないハードルは数多い。これからの方がたいへんである。
TPPの時もそうだったが、党内における意思決定のあり方について、民主党は与党として、いまだ未成熟であることを露呈した決着だったと言わざるを得ない。