最近、人気お笑いタレントの母親が生活保護を受けていたことが大きなニュースとなりました。当たり前のことですが、特定の人を見せしめとして袋叩きにするだけで、制度の見直しに手をつけなければ意味がありません。
自民党の片山参議院議員は、鬼の首をとったようにテレビ出演をしていますが、生活保護に関する類似の問題は、今に始まったことではなく、自公政権下でもずっと続いてきたことです。社会保障と税の一体改革の国会での議論が行われている中で、国民に税負担をお願いする以上、私も、生活保護のあり方にメスを入れなければ、到底、国民の納得を得ることはできないと思います。自民党や大阪維新の会も生活保護の見直しを提言しており、生活保護の見直しは党派を超えて行うべきことです。
1.制度の厳格な運用
問題のタレントの母親は生活保護を受ける際に福祉事務所と相談をし、手続きを行っており、扶養義務者である息子による扶養の可否の調査を役所が正しくしていなかったことになります。
この点、政府も扶養義務を果たさない親族に対して理由を説明することを義務付けるよう法改正を検討するとともに、扶養可能な親族には必要に応じて保護費の返還を求める方針です。また、申請者や扶養義務者の収入や資産を正確に把握するために金融機関に対して本店に照会すれば全国の口座状況を確認できる「本店一括照会」の実施を要請しています。生活保護を受けていながら、ベンツを乗り回しているとか、働けないはずなのに毎日パチンコ屋通いしているなどはもっての外です。最近では、暴力団関係者への対応や身元照会に慣れた警察OBを生活保護対応の職員として採用する自治体も増えています。不正受給が起きないように厳格な運用を求めていきたいと思います。
ただ、現場からは、ケースワーカー1人が受け持つ世帯数が100世帯を超えている自治体も多く、手が回らないとの声もあがっています。さらに、貧困に陥っている人には、長い間家族との連絡を絶っているとか、家庭内暴力や虐待から逃れて来たケースも見られ、課題も残ります。
2.医療扶助の見直し
2012年の生活保護費の国家予算は3.7兆円にものぼりますが、実はその半分が医療費です。そして、生活保護受給者がタダで手に入れた睡眠薬などがネットや路上で販売されるという悪質な事例も報告されています。大阪だけで、患者全員が生活保護受給者という病院が30以上もあり、必要のない検査や投薬を行っていることが分かっています。レセプトをチェックして、生活保護受給者を食い物にしている医療機関は厳しく取り締まるとともに、私は少額でもいいから自己負担を求めるべきだと思います。この点、政府は過剰な受診等の疑いがある場合には他院での受診を命じ、従わない場合は保護を打ち切ることも検討しています。
ただし、日本の場合は、生活保護受給者の半分が60歳以上の高齢者で、医療扶助の半分は精神疾患関連の入院費という構造上の問題があります。これは、公的年金や精神障害の制度の不備が生活保護にしわよせされていると見ることもできます。
3.「入りやすく出やすい」制度に
よく生活保護制度は、「入りにくく出にくい」制度だと言われます。不正受給が後を絶たない一方で、本来、生活保護の受給要件はハードルが高く、現代社会の現実と合っていない部分もあります。例えば、生活保護を受けるには原則、車は持つことができません。しかし、地方では自動車は就職活動にも通勤にも欠かせないのが現実です。
「出にくい」という点では、いったん保護を受ければ、生活費の支給基準は地域によって異なりますが、東京23区に住む夫婦と子供3人の世帯のケースでは月17万円に家賃補助を加えた費用が支給されます。高い給付水準が働く意欲をそいでいるとの批判もあります。この点についても、生活保護を得ている人が働いた場合、収入の一部に相当する保護費を積み立てておき、自立後の生活費に充てる制度も検討されています。
あくまで、生活保護は一時的なものであって、本来は、早く生活保護から抜け出して自立してもらうことが前提です。しかし、自立を促す、就労支援が十分でない一方で、給付水準が高いことが生活保護を「出にくい」制度にしてしまっています。私は、給付水準の見直しや一部現物支給も検討の余地があると思っています。
いずれにしろ、生活保護制度が始まって60年が経ち、家族のありようも大きく変わりました。2030年には男性の3人に1人が生涯未婚、また、離婚などの増加により、子どもを持つ世帯のうち3世帯に1世帯がひとり親世帯になると言われています。議論の発端となった扶養義務という考え方が成り立たなくなっている現実社会の姿があります。芸能人をたたいてカタルシスを得るだけではなく、時代の変化にあわせた生活保護制度の抜本的見直しを行わなければ意味がありません。
自民党の片山参議院議員は、鬼の首をとったようにテレビ出演をしていますが、生活保護に関する類似の問題は、今に始まったことではなく、自公政権下でもずっと続いてきたことです。社会保障と税の一体改革の国会での議論が行われている中で、国民に税負担をお願いする以上、私も、生活保護のあり方にメスを入れなければ、到底、国民の納得を得ることはできないと思います。自民党や大阪維新の会も生活保護の見直しを提言しており、生活保護の見直しは党派を超えて行うべきことです。
1.制度の厳格な運用
問題のタレントの母親は生活保護を受ける際に福祉事務所と相談をし、手続きを行っており、扶養義務者である息子による扶養の可否の調査を役所が正しくしていなかったことになります。
この点、政府も扶養義務を果たさない親族に対して理由を説明することを義務付けるよう法改正を検討するとともに、扶養可能な親族には必要に応じて保護費の返還を求める方針です。また、申請者や扶養義務者の収入や資産を正確に把握するために金融機関に対して本店に照会すれば全国の口座状況を確認できる「本店一括照会」の実施を要請しています。生活保護を受けていながら、ベンツを乗り回しているとか、働けないはずなのに毎日パチンコ屋通いしているなどはもっての外です。最近では、暴力団関係者への対応や身元照会に慣れた警察OBを生活保護対応の職員として採用する自治体も増えています。不正受給が起きないように厳格な運用を求めていきたいと思います。
ただ、現場からは、ケースワーカー1人が受け持つ世帯数が100世帯を超えている自治体も多く、手が回らないとの声もあがっています。さらに、貧困に陥っている人には、長い間家族との連絡を絶っているとか、家庭内暴力や虐待から逃れて来たケースも見られ、課題も残ります。
2.医療扶助の見直し
2012年の生活保護費の国家予算は3.7兆円にものぼりますが、実はその半分が医療費です。そして、生活保護受給者がタダで手に入れた睡眠薬などがネットや路上で販売されるという悪質な事例も報告されています。大阪だけで、患者全員が生活保護受給者という病院が30以上もあり、必要のない検査や投薬を行っていることが分かっています。レセプトをチェックして、生活保護受給者を食い物にしている医療機関は厳しく取り締まるとともに、私は少額でもいいから自己負担を求めるべきだと思います。この点、政府は過剰な受診等の疑いがある場合には他院での受診を命じ、従わない場合は保護を打ち切ることも検討しています。
ただし、日本の場合は、生活保護受給者の半分が60歳以上の高齢者で、医療扶助の半分は精神疾患関連の入院費という構造上の問題があります。これは、公的年金や精神障害の制度の不備が生活保護にしわよせされていると見ることもできます。
3.「入りやすく出やすい」制度に
よく生活保護制度は、「入りにくく出にくい」制度だと言われます。不正受給が後を絶たない一方で、本来、生活保護の受給要件はハードルが高く、現代社会の現実と合っていない部分もあります。例えば、生活保護を受けるには原則、車は持つことができません。しかし、地方では自動車は就職活動にも通勤にも欠かせないのが現実です。
「出にくい」という点では、いったん保護を受ければ、生活費の支給基準は地域によって異なりますが、東京23区に住む夫婦と子供3人の世帯のケースでは月17万円に家賃補助を加えた費用が支給されます。高い給付水準が働く意欲をそいでいるとの批判もあります。この点についても、生活保護を得ている人が働いた場合、収入の一部に相当する保護費を積み立てておき、自立後の生活費に充てる制度も検討されています。
あくまで、生活保護は一時的なものであって、本来は、早く生活保護から抜け出して自立してもらうことが前提です。しかし、自立を促す、就労支援が十分でない一方で、給付水準が高いことが生活保護を「出にくい」制度にしてしまっています。私は、給付水準の見直しや一部現物支給も検討の余地があると思っています。
いずれにしろ、生活保護制度が始まって60年が経ち、家族のありようも大きく変わりました。2030年には男性の3人に1人が生涯未婚、また、離婚などの増加により、子どもを持つ世帯のうち3世帯に1世帯がひとり親世帯になると言われています。議論の発端となった扶養義務という考え方が成り立たなくなっている現実社会の姿があります。芸能人をたたいてカタルシスを得るだけではなく、時代の変化にあわせた生活保護制度の抜本的見直しを行わなければ意味がありません。