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愛知13区(安城市・刈谷市・碧南市、知立市、高浜市)
衆議院議員 おおにし健介

「大政翼賛会に抗した40人」

2006年09月24日 | 書評
「大政翼賛会に抗した40人 自民党源流の代議士たち」楠精一郎 朝日選書

先日、自民党総裁選で安倍普三氏が第21代の自民党総裁に選出されました。では、自民党の初代総裁はというと、鳩山民主党幹事長のおじいさんの鳩山一郎元首相です。そして、そこには、日本民主党と自由党の合同(保守合同)による「自由民主党」が立党した際、鳩山一郎氏と、旧自由党系の緒方竹虎氏とが総裁の座を争い、緒方氏の急逝によって、鳩山氏が対立候補がないまま、初代総裁に選出されたというドラマがありました。
安倍さんは、祖父の岸元首相を意識した発言が目立ちますし、父の普太郎氏は総理総裁の座を目前に世を去ったことがさかんに取り上げられます。
二世三世議員が多いこともあって、現在の政治を深く理解するためには、過去の政治の流れについて予備知識を持っておくことが不可欠だと思います。

この点、私がお薦めしたいテキストは、麻生さんじゃありませんが、さいとうたかお氏の画によるマンガです。
「歴史劇画 大宰相」全10巻 講談社+α文庫
これを読めば、自民党の歴史が大つかみで分かり、きっといまの政治がより面白く見えるはずです。

話をもとに戻して、今回、読んだのは、保守合同の自民党の初代総裁となった鳩山一郎氏を含む大政翼賛会に抗した代議士たちの物語です。
議会政治を命がけで守るべき立ち場にある政治家が自ら政党を解散し、大政翼賛会になだれ込んでいく中、落選の不安やテロによる生命の危険さえ顧みずにそれに立ち向かった代議士たちは、院内交渉団体「同交会」を組織しました。そして、そのうち多くは、官憲による干渉の中、非推薦で翼賛選挙に立候補したのです。

日本にとって、第二次大戦による敗戦は、革命に匹敵する大きな出来事ですが、戦前と戦後の時代が完全に分断されているかというと、綿々と続いているものがあります。
日本の官僚制のことを「明治時代以来の官僚制」などとよく言いますが、官僚制もその一つでしょう。政治の世界では、官僚出身の政治家に対して、「党人派」と呼ばれる流れがあります。戦前の日本には、実は誇るべき議会制民主主義の歴史がありました。大正デモクラシーと呼ばれる時代には、議会政治は一定の成熟を見せていたのです。そして、その遺産を戦前から戦後に引き継ぐのに重要な役割を果たしたのが本書に登場する政治家たちなのです。
私は、自分自身、議会事務局に勤務していた経験から、議会政治を守ることについては人一倍思い入れがあります。本書に登場する政治家たちの生き様には感じ入るところがあります。
政治家にとって「選挙に落ちるかもしれない」という恐怖は言葉では言い表せないものです。それどころか、軍部を批判した彼らは命の危険さえあったのです。

それがどうでしょう。昨年の郵政解散、先日の自民党総裁選。長いものに巻かれろ、バスに乗り遅れるなという政治家ばかりが目につきます。命を賭しても自分の信念を守る、これこそ政治家だと思います。

この本のおもしろにところは、有名な政治家に限らず、いまはその名を忘れ去られてしまった政治家にも一人ひとり光を当てているところです。
読んでいて、「へぇー、そうなんだぁ。」という発見がいくつもありました。

例えば、三木武吉が一時期、衆議院事務局臨時雇という現在でいう衆議院事務局委員部の職員だったということ。へぇー。
安倍側近の一人の世耕弘成参議院議員のおじいさんの世耕弘一代議士のこと知っていましたが、世耕弘一が大政翼賛会に抗した政治家の一人で、「世耕衆」と呼ばれる熱狂的な後援者に支えられる清貧の政治家で、残した遺産は、長男には借地・借家の自宅1軒、二男には電話の加入権だけだったとか。へぇー。
読み物としてもおもしろいので、お薦めの一冊です。





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