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衆議院議員 おおにし健介

【書評】潜行三千里

2012年07月28日 | 書評
「潜行三千里」 
元大本営参謀 辻 政信 著
毎日ワンズ 刊


 新聞に広告が載っていたのを見て、興味をそそられ手にした。著者は、作戦の神様と言われたスター参謀で、戦後は、連続四期衆議院議員を務め、参議院議員をしていた時に、東南アジアで行方不明となっている。

 辻参謀の潜行と日華合作の工作については、かなり美化されているものと思われるが、事実は小説よりも奇なりで、冒険譚として十分に読み応えがある。ただ、一番、強い引用を受けたのは、戦勝国、中国の国民党政府の内部の腐敗ぶりについての記述だ。
 私は、当選後も何度か台湾を訪れているが、台湾では、現在も日本人が比較的、尊敬されている。それは、日本の敗戦後、大陸から来た本省人、国民党政府の腐敗と横暴ぶりがあまりにもひどかったことによる。比較的不正の少なかった日本の統治を体験した台湾人にとって、治安の悪化や役人の著しい腐敗は到底受け入れがたく、台湾人たちは「犬去りて、豚来たる」(犬 [ 日本人 ] はうるさくても役に立つが、豚 [ 国民党 ] はただ貪り食うのみ)と揶揄したと言われる。

 辻は、日本が中国での占領政策に失敗したのは、中国民族の心理や歴史を理解しなかったことにあると指摘をしている。辻は、国民党国防部に潜行して日中合作を工作を行ったが、夢破れ、こう記している。
「中国四千年の歴史は、いずれの時代においても民衆の希望いかんにかかわらず権勢を争う集団の、個人の闘争史である。野心家が武力を駆使して、天命を勝手に作って王位をうかがう歴史の連続である。」
「赤い中国と白い中国と、二つの世界が対立し抗争するものと考えるのは、ホワイトハウスの見方であろう」
「上等兵は小学校を卒業しただけのせがれであるが、『なぜ中国は二つに分かれて戦うのか』と質問したらニコニコ笑いながら答えた。『有両個人、要一個東西』(二人の人がいる。一個のものを欲しがるからだ)と、日本のお客の無知を軽く笑うかのように無造作に答えた。これはまさに図星であろう。」
「中国の問題は中国人の良識に委す以外に解決の手はない。夫婦喧嘩は犬も食わないはずだ。手を出したものは必ず失敗する」

 重慶市党委書記を解任された薄煕来氏の失脚と粛清を見ていても、この中国政治の歴史を貫く激しい権力闘争の構図というのは現在も変わらない気がする。


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