ホルモン屋徒然草~珍しホルブロだ

新米ホルモン屋の親爺の日々。ホルモンのこと、店の出来事、周辺の自然や話題。

塩ガツミノ 登場 (ちょっと本気でガツを語る、2160字、原稿用紙5枚半の長文ですが書き足りません)

2007-05-18 08:40:49 | ホルモン・肉
酒飲みの肴が最後にホヤにいくつくように、
ホルモン喰いは最後にガツにいくつく。

肉厚のガツをさっと炙って、ムシムシと食らいつく。
少しぬるっとした肌、淡白な胃壁の歯応えを楽しむ。
味付けは塩でいい。
かじる。噛みつく。歯でしごく。噛み切る。

ガツ喰いの男は爽やかだ。
ガツをつつきながら、焼酎を流し込む。
箸でころがしながらさっとガツを燻す。
ネギの焼けた匂いが香ばしい。
「をかしら屋」自慢の辛味噌ダレを少しだけガツにつけて、頬張る。
ムシムシムシ。クニャクニャクニャ。ムフムフムフ。
かじり、くだき、飲み込む。
薄い塩味が、かすかな香辛料の香りとともに、ガツにあう。
そして、「七夕」のロックをさっとあけ、爽やかになった口に再びガツを入れる。

いいですね。
「ガツを塩で。」と頼まれると、つい「こりゃ、気の許せない客だ。」と面構えを見に行く。
大体がこの(上の小物語の文章)のような爽やかな若者か、がっしりして日に焼けた(いや酒焼けか)「この道、一筋に働いて数十年。曲がったことは大嫌い。竹を割ったような性格で、仕事終わりゃ、これこれこれ(酒)よ。」みたいな、いい年齢重ねたおじさんが多い。
こういう人のガツを頬張っている顔が優れていいのだ。
こちらも気が張って、洗い込んでおいたガツをさらに丁寧にざるの網目を使いながら洗う。少しだけ隠し包丁を入れて、厚めに切ったガツを丁寧に皿に盛る。
本物のホルモン喰いに出す皿は、気も根性もまっすぐにして盛るのです。

で、今回、「塩ガツ」を商品化したわけです。
淡白なガツに、荒い粒の韓国塩と、まんべんなくうっすらと塩味が効くように一般塩。隠し味に、数種のスパイス。色みを大事にするために、柔らかい爽やかな辛みのホワイトペッパー。ほんの少しだけ、鋭い辛みと香りの山椒。そして・・・・(内緒)。
きちんと量りで重量を計測し、決めた塩濃度で塩を調合し、ガツにすりこむ。
塩が勝ってもいけない。ガツの淡白なうまみを引き出し、口の中の滞在期間(噛まれる回数)の長いガツの邪魔にならないように、でも喰いあきないくらいのぎりぎりの薄さで(動物の体内塩成分濃度の少し上)。
隠し味の香辛料も、口に入って邪魔にならないほどの微量にしていますが、網で焼いている時に食欲をそそるほんのりとした香りがするよう、また、ガツを口に含んだ時に口腔から鼻孔にさわやかな香りが流れさらに咀嚼が進むようにと考えています。

そして、ガツ。
豚の胃はもちろん一つ。この広い胃のなかでも、特に身が厚くつややかな部分をガツミノといいます。牛の第一胃、今や人気の高級部位、ミノににた食感なのでガツ+ミノでガツミノすね。
「をかしら屋」の「塩ガツ」は、ここだけを選んでメニューにしています。
ガツの中でも特に歯応えがいいんですね。
写真の左上の部分です。

ガツは胃ですから胃液がでます。
ガツの下処理はこれを丁寧に落とすことが大変なんです。
粘りけのある胃液は、ガツの襞ひだにまとわりついてなかなかとれません。
すっかり取り除いたと思っても、少したつとまたねばねばが出ています。
火葬前のお亡くなりになった方の顔ひげをそるように、当店の「コラー麺」スープに入る粒(豚の頭)のひげ(鼻の下やあご、みみのまわりなど)をそります。
市販のトンソクに毛が混入していますというクレームがありますが、あれも、切り取られて流通している間に生えてくるもの。
それと同じようにこの豚の胃液も、と畜され解体されてもまだまだ出てくるんですね。
だから洗い。下処理で何回も洗い、切って洗い、メニューとして出す前にまた洗う。
(ちょっとしたウルトラCぼ技も使っているんですが。洋食のシェフが使う技です。そのうち、ご披露します。)

ホルモン喰いはガツがすきだ。
でも、ホルモンを喰う人が全てガツを好きなわけではない。
「をかしら屋」でも、ガツ単品の注文は少ない。

だから、ホルモン好きの皆さん。ぜひ、ガツにトライしてください。
正直、まだまだ試行錯誤が続くかとは思いますが、ホルモン喰いの皆さんに楽しんでいただければ幸いです。

PS:ホルモン屋にきて、「私、カルビは大好きだけど、ガツは苦手なの」と言い放つのは、100円回転寿司屋にいって、「私、寿司大好きなんですが、中トロとエンガワ以外は食べれないの。ましてタコとかシャコ、コハダなんて。」といっているのと同じよ。・・とほほ。
(ホルモン喰らいの好青年に囲まれて紅一点のお嬢様。もしガツが苦手なら、「私、もちろんガツはすきだけど、このごろちょっと歯が弱ってて。今日はガツは我慢して、柔らかいカルビにするは。ねえ、マスター、みんなはガツで、私にだけ和牛カルビちょうだい。サシのびしっと入った上カルビを。」・・・っと)

PS2:このガツの中でも、最高の歯応えなのが、「岩泉龍泉洞黒豚」のガツ。自然に育っているせいか、年齢のせいか、DNAか、とにかく渋い歯応え。
「この噛み応えがいいね。」といってかぶりつく常連の某工務店の社長さん。やっぱり、ガツ食いはいい男が多いね。

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