総務省は,来年度の予算から,「頑張った自治体」に対し,交付税を増やすという政策を打ち出してきました。予算規模としては,約3000億円程度になります。
頑張る地方に2700億円 首相提唱の応援プログラム(共同通信) - goo ニュース
もともと交付税は削ってますからねえ
この政策,まず第一弾として,頑張りたい自治体は,来年5月頃までに成果目標を定めます。これだけで,総額500億円の特別地方交付税交付金が交付されます。
次に,7月頃に総務省が評価基準を策定し,それに応じてその基準を満たした自治体,いわゆる「頑張った自治体」には総額2200億円の普通地方交付税交付金が交付されます。
評価の例として,新ブランド化,少子化対策,企業立地,定住促進などです。
全体として,1市町村当たり約3000万円程度になると見込んでいるとのことです。
なるほど,一見すると,「市町村のやる気を引き出すのにはよい制度で,まさにインセンティブにふさわしい」とも思えます。
しかし,よく考えてみると,くせ者がいくつかあります。
まず,「目標定めただけで交付税がもらえる」という部分です。いわゆる,名乗りあげをした場合にその支度金を上げるという趣旨だとは思いますが,実際にはこの部分はいつもの「総務省準則」どおりの目標を各自治体が適当に作るだけで終わってしまうのではないかとの懸念があります。いってしまえば,今年の3月にほとんどの自治体で作成した「集中改革プラン」と同じようなことになるのではないでしょうか。
次に,中身についてですが,総務省では客観性を図るため,いくつかの基準を策定するとのことですが,その内容の多くは「国策」でもあります。っていうことは,国策を下請けするためにこのような制度を活用しようとしているのではないか,と邪推せざるを得ません。
さらには,5月に目標策定して,7月に評価するということになります。すなわち,「わずか2ヶ月」ですべて判断されるということになります。ところが,当然のことながら,2ヶ月程度で成果の出る施策なんてありません。
となると,この制度は現実的には,「目標に向かって努力する自治体の支援」ではなく,「もう結果が出ている自治体」に対する追認的措置になってしまうのではないでしょうか。
そのうえ,自治体独自の諸問題に対する解決策については,全国共通性という客観基準を満たさないことから,おそらく評価の対象になりません。ところが,自治体独自の問題をしっかり解決させる方が住民としてはありがたい場合が多いはずです。にもかかわらず,こういうがんばりはここでは全く評価されないことになってしまいます。
とすると,この制度は,「国のいうことを聞いている自治体を優遇します」といっているに過ぎないのではないでしょうか。「国のいうことを聞けば,削った交付税を少し戻しましょう」といっているように聞こえてなりません。
もちろん,インセンティブを有効に活用すれば,魅力的な自治体が増えることは事実です。そして,それは結局住民生活に換言されることになるため,地域住民にとっても極めて有用です。
しかし,その運用を間違えると,猛毒に変わります。総務省としては,その点を十分踏まえた上で,この制度について引き続き内容の調整作業を進めてほしいものです。
あくまでも,地域のため,そして地域住民のため,という基本的に視点は忘れないでほしいものです。
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もともと交付税は削ってますからねえ
この政策,まず第一弾として,頑張りたい自治体は,来年5月頃までに成果目標を定めます。これだけで,総額500億円の特別地方交付税交付金が交付されます。
次に,7月頃に総務省が評価基準を策定し,それに応じてその基準を満たした自治体,いわゆる「頑張った自治体」には総額2200億円の普通地方交付税交付金が交付されます。
評価の例として,新ブランド化,少子化対策,企業立地,定住促進などです。
全体として,1市町村当たり約3000万円程度になると見込んでいるとのことです。
なるほど,一見すると,「市町村のやる気を引き出すのにはよい制度で,まさにインセンティブにふさわしい」とも思えます。
しかし,よく考えてみると,くせ者がいくつかあります。
まず,「目標定めただけで交付税がもらえる」という部分です。いわゆる,名乗りあげをした場合にその支度金を上げるという趣旨だとは思いますが,実際にはこの部分はいつもの「総務省準則」どおりの目標を各自治体が適当に作るだけで終わってしまうのではないかとの懸念があります。いってしまえば,今年の3月にほとんどの自治体で作成した「集中改革プラン」と同じようなことになるのではないでしょうか。
次に,中身についてですが,総務省では客観性を図るため,いくつかの基準を策定するとのことですが,その内容の多くは「国策」でもあります。っていうことは,国策を下請けするためにこのような制度を活用しようとしているのではないか,と邪推せざるを得ません。
さらには,5月に目標策定して,7月に評価するということになります。すなわち,「わずか2ヶ月」ですべて判断されるということになります。ところが,当然のことながら,2ヶ月程度で成果の出る施策なんてありません。
となると,この制度は現実的には,「目標に向かって努力する自治体の支援」ではなく,「もう結果が出ている自治体」に対する追認的措置になってしまうのではないでしょうか。
そのうえ,自治体独自の諸問題に対する解決策については,全国共通性という客観基準を満たさないことから,おそらく評価の対象になりません。ところが,自治体独自の問題をしっかり解決させる方が住民としてはありがたい場合が多いはずです。にもかかわらず,こういうがんばりはここでは全く評価されないことになってしまいます。
とすると,この制度は,「国のいうことを聞いている自治体を優遇します」といっているに過ぎないのではないでしょうか。「国のいうことを聞けば,削った交付税を少し戻しましょう」といっているように聞こえてなりません。
もちろん,インセンティブを有効に活用すれば,魅力的な自治体が増えることは事実です。そして,それは結局住民生活に換言されることになるため,地域住民にとっても極めて有用です。
しかし,その運用を間違えると,猛毒に変わります。総務省としては,その点を十分踏まえた上で,この制度について引き続き内容の調整作業を進めてほしいものです。
あくまでも,地域のため,そして地域住民のため,という基本的に視点は忘れないでほしいものです。
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この制度は,地方分権と並ぶ「両刃の剣」だと思います。国の方針に乗せられることなくしっかり考えて利用すれば,まさに住民のためになるのですが,なんとなくいわれるがままに使ってしまった場合は,場合によってはとんでもない結果になるかもしれません。
とにかく,「考える首長」であることを祈るだけですね。