あれは,あれで良いのかなPART2

世の中の様々なニュースをばっさり斬ってみます。
ブログ界の「おか上彰」を目指し、サボりながらも頑張ります!

よく分かる(?)シリーズ 逮捕勾留について(その3)

2006年02月05日 03時00分54秒 | よく分かる(?)シリーズ
前回に続きます。これが最終回です。

よく分かる(?)シリーズ 逮捕勾留について(その1)
よく分かる(?)シリーズ 逮捕勾留について(その2)
第4 逮捕勾留制度の問題点
  このように,逮捕勾留制度は,被疑者の人権保障と捜査機関の捜査の容易性との間の絶妙なバランスの元に成り立っています。
  とはいえ,今主に次の点で問題があるようです。

1 施設不足
  刑務所がパンクしているという話は聞いたことがあるかもしれませんが,拘置所や留置場も実はパンクしています。っていうことは,やはりそれだけ犯罪者が増えてしまったのです。
  一方で,警察署の増改築は各自治体の予算上なかなか難しいようですし,拘置所についても,どちらかといえば刑務所を増やすことが急務となっているようなので,なかなか数は増えないようです。
  これに対しては,「税金を犯罪者に使うのはけしからん」という意見も多のですが,しかし施設がなければ逮捕しても泊めておけず,結果野放しとなるおそれも生じてしまい,治安悪化につながりかねないことからすれば,やはり税金をかけてでも施設を増強することが望ましいのかもしれません(私見ですが。)。

2 別件逮捕勾留
  前述のとおり,逮捕勾留の制限時間は最大23日です。この日数で,証拠を集めて検察官は起訴するかどうか判断しなければなりません。
  しかし,重大事件や否認事件の場合,23日くらいではすべての捜査を終了させることはできません。
  そこで,使われている手法が,「別件逮捕」です。
  これは,本件(例えば殺人)の容疑があるが,まだ証拠がないという場合,この殺人の捜査を行うために,比較的罪の軽い別件(例えば窃盗)で一度逮捕し,その期間を専ら本件である殺人の捜査に使うのです。そして,23日たった時点で改めて殺人罪で逮捕勾留しします。そうすれば,さらに23日捜査ができることになります。
  この別件逮捕勾留,当然逮捕勾留の制度を根本的に揺るがしてしまうため,本来的には違法捜査となります。
  しかし,一方で,殺人も窃盗も両方ちゃんと捜査するという必要性がある場合もあるため,このように逮捕を繰り返すことが直ちに別件逮捕であると定義づけることもできません。
  結局,別件逮捕か否かは,事後的に裁判において判断するしかないのですが,少なくとも身柄拘束時間が超過しているという事実は存在しているため,果たして今のように事実上野放しにしてよいのか,疑問の声が挙がっています。

3 不服制度の不備
  先ほど,文句がある場合のやり方を書きましたが,実は逮捕については,異議をいう制度はありません。従って,仮に警察が不当違法な逮捕をしたとしても,それは事後的に刑事裁判の中や,別途国家賠償訴訟として対応するしかありません。
  しかし,たとえ2泊3日であったとしても,身柄を拘束されることは苦痛ですし,そもそも対外的にはまだまだ「逮捕=犯罪者」というイメージが強いので,逮捕だけでもいろんなデメリットが発生します。
  そこで,何らかの異議申し立て方法が必要なのではないかという議論がでています。

4 代用監獄制度
  先ほども書きましたが,勾留された場合,本来は宿泊先は拘置所としなければなりません。警察の留置場はあくまでも2泊3日が上限というのが本来なのです。
  しかし,現実には,施設のキャパはもちろんのこと,身柄押送の煩雑性や安全性確保,さらには捜査が便利ということなどから,ほとんどの場合,留置場を代用監獄としています。
  この代用監獄については,弁護士会は猛反対をしています。なぜならば,代用監獄は,結局警察の施設なので,朝から晩まで好き勝手に捜査や取り調べができるからです。とすれば,仮に否認している事件であったとしても,相当なプレッシャーを与えるなどして,自白を強要するおそれがあり,さらにはえん罪を生む可能性もあると主張しています。
  
第5 まとめ
  以上,ざっくりと書いたつもりが,かなりの長文になってしまいました。
これを踏まえて,逮捕報道を見てみると,きっと「あ,あれね」と言えるようになると思います。また,身近な人や自分が捕まったときに,心の準備が可能となるでしょう。
  いずれにしても,逮捕勾留制度は,被疑者の無罪推定をベースにして一定の権利保障を図りつつも,一方で捜査機関の捜査を容易にするための規定も多数盛り込まれており,両者の調和を図った制度であるといえます。

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よく分かる(?)シリーズ 逮捕勾留について(その2)

2006年02月05日 02時55分59秒 | よく分かる(?)シリーズ
前回に続きます。

よく分かる(?)シリーズ 逮捕勾留について(その1)
よく分かる(?)シリーズ 逮捕勾留について(その3)

第3 逮捕勾留されたらどうなるのか
1 宿泊先はどこか

  逮捕勾留中は,警察の留置場(牢屋ですね)に入っています。しかし,法律的には勾留された場合は,「拘置所」に泊めることになります。従って,警察の留置場を法律的にOK牧場にするため,「代用監獄」としているのです。

2 警察の留置場と拘置所の違いは何か
  警察の留置場と拘置所の違いは何かというと,前者は警察(地方公務員)が管理している場所であるのに対し,後者は法務省(国家公務員)が管理している場所という点です。
  もう少しいえば,警察の留置場に泊まっているということは,隣ですぐ取り調べができるので,捜査は楽です。一方,拘置所だと,いちいち出向くか,連れてきてもらわなければならないため,捜査が面倒です。
  したがって,ほとんどの場合,警察の留置場を代用監獄として,引き続き勾留しているというのがほとんどなのです。
  ちなみに,検察庁が逮捕したような事例(ライブドア事件や防衛施設庁事件等の場合),拘置所に留置されています。これは,単に検察庁には留置場がないからです。

3 拘置所と刑務所の違い
  逮捕勾留されると,世間ではよく「**さん,刑務所入ったよ」といわれるのですが,刑務所と拘置所では全く違います。主に何が違うのかまとめました。
(1) 趣旨が違う
  拘置所は,捜査や裁判のための身柄を預かっているだけです。一方,刑務所は判決が確定した者の身柄を預かり,一定の仕事をさせるなど刑罰を与えるための施設です。
(2) 物理的に違う
  刑務所と拘置所は全く別の建物です。ただし,一部刑務所内に拘置所が併設されている場合がありますが,それは管理の便宜上にすぎず,建物は完全に別になっています。
(3) 自由度が違う
  刑務所は刑罰の施設なので,基本的に自由はかなり制約されています。新聞雑誌は基本的に見ることができず,また面会の回数も制限されています。さらに,差入は禁止されています。
  それに対し,拘置所の場合,行動の自由が制約されている点は同じですが,それ以外は基本的に自由です。前記の接見禁止決定がない限りは,新聞雑誌もある程度は自由に読めますし,面会は毎日でも大丈夫です(時間の制約はありますが。)。さらに,差入も自由なので,弁当や布団などもある程度豪華にすることができます。

  以上の違いの大きな理由は,拘置所にいる段階は,まだ判決が出ていないため,無罪推定によって犯罪者扱いができないから,という点にあります。

4 留置場や拘置所での暮らしぶり
  刑務所よりは自由といっても,かなり制約があります。まず,雑居房の場合,一緒にいる人との間の私語は禁止です。また,用もなく立つこと,声を出すことも禁止されています。寝るときも,顔まで毛布を掛けてはいけません。もちろん,酒たばこは御法度です(拘置所でたばこが吸えないのは憲法違反だとして最高裁まで争った強者な被疑者もいます。)。
  さらに,トイレまですべて監視されています。お風呂も週2,3回程度しか入れません。
  また,自殺防止のため,ひも状のものは持ち込みができません。従って,マフラーやベルトはもちろんのこと,女性の場合はブラジャーも持ち込めないようです。
  食事は1日3回出ますが,はっきり言って「まずい」そうです。そのため,差入弁当を食べる人が結構多いようです。
  ちなみに,取り調べといえば「カツ丼」というイメージが強いですが,実際にカツ丼を食べさせてもらったことのある被疑者はほとんどいないようです。なぜなら,あれも食べるならば被疑者の自腹になるからです。
  警察に逮捕されても,カツ丼は食べられませんので,ご注意ください!

長くなりましたので,次回に続きます。

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よく分かる(?)シリーズ 逮捕勾留について(その1)

2006年02月05日 02時50分25秒 | よく分かる(?)シリーズ
堀江容疑者が逮捕されて10日近く立ちました。また,他にも防衛施設庁の審議官らも逮捕されるなど,逮捕の記事は毎日必ず報じられています。
一方で,「逮捕されるとどの位警察にいるの」とか「逮捕と勾留って何が違うの」とか,さらには「警察と拘置所って何か違うの」等という疑問を持っている方も多かと思います。
そこで,今回は,逮捕と勾留について,その流れや仕組み,さらには実情や問題点などについて簡単にまとめたいと思います。
なお,逮捕勾留制度の大前提にあるのは,以前「被疑者と被告人」の所でも書きましたとおり,「もしも自分が無罪なのに逮捕されたら」という発想になりますので,そちらの記事も併せてご確認ください。

よく分かる(?)シリーズ 逮捕勾留について(その2)
よく分かる(?)シリーズ 逮捕勾留について(その3)
第1 逮捕と勾留とは何か
1 逮捕とは何か

  逮捕とは,犯人を捕まえる行為です。逮捕には,大きく分けると(1)現行犯,(2)通常逮捕,(3)緊急逮捕があります。
(1) 現行犯
  簡単に言うと警察官の目の前で犯罪を犯した状態をいいます。この場合,目の前で犯罪が行われたわけですから,えん罪の可能性が低いということで,裁判所の発行する令状は不要です。ちなみに,一般人でも,目の前で犯罪を犯した人を見つけた場合,逮捕することができます(この場合は,直ちに警察に報告して身柄を引き渡さなければなりません。)
(2) 通常逮捕
  裁判所が発行した逮捕状という令状を持って犯人の身柄を押さえることをいいます。よくテレビで,警察官がなんか紙を読み上げてから手錠かけている場面がありますが,あの紙が逮捕状です。
  そして,逮捕の際は,必ず逮捕状を示して逮捕する事実を読み上げる必要があります。
(3) 緊急逮捕
  殺人などの重大な事件の場合に,目の前を犯人が通過したとき,とりあえず先に逮捕して,後から逮捕状を請求するというものです。通常逮捕との違いは,逮捕時に令状がない,という点です。また,現行犯との違いは,後から令状を必ずもらうという点です。

2 逮捕の際,やるべきこと
  以上3種類の逮捕に共通して必ず行わなければならない行為があります。それは,「時間の読み上げ」です。つまり,逮捕時に「7時13分,あなたを逮捕します。」と必ず言わなければなりません。
  あとで説明しますが,逮捕には時間制限があります。したがって,「今から逮捕スタート」ということを明確にする必要があります。この時間読み上げを行わないと,上記3種類の逮捕いずれも,「違法逮捕」となります。
  「太陽にほえろ」とかでは,いきなり手錠をかけちゃってますが,あれは違法逮捕になってしまうのです。
  つまり,「逮捕=手錠」ではなく,「逮捕=時間を伝える」になるのです。

3 勾留とは何か
  勾留とは,逮捕後に引き続き身柄を拘束することをいいます(報道では,「拘置」などと呼んでいます。)。これは,裁判官が勾留質問を行って,身柄を拘束しておく必要があると認められた場合,勾留状という令状を発行して,そのまま警察や拘置所に身柄を留め置くことになります。
  なお,勾留をするには,必ず事前に逮捕をしておかなければなりません。また,逮捕の容疑と全く違う容疑で勾留することもできません。

4 時間制限
  逮捕された場合,最大72時間身柄拘束ができます。また勾留状が発行された場合は,原則10日間拘束でき,更に請求によって10日間延長ができます。
  すなわち,逮捕勾留で,最大23日間身柄拘束が可能となり,検察官は,その間に起訴するか否か判断することになります。
  ちなみに,この期間内に起訴されれば,身柄は引き続き2ヶ月間拘束ができ,その後は1か月ごとに延長することができます(だから,裁判中でも身柄拘束が可能なのです。)。

第2 逮捕から勾留までの流れについて
1 実際の流れについて

  先ほど,時間的な制限を書きましたが,実際どう流れるのか説明します。
(1) まず,逮捕されると,逮捕した警察署の留置場か拘置所に宿泊します。
(2) 48時間以内(2日間以内)に,警察は,検察官に身柄を送るか決めます。
(3) 警察が検察官に身柄を送る(とよく報道されますが,実際は書類が送られるだけで,身柄は一度取り調べのためだけに検察庁に行き,宿泊先は引き続き警察署の留置場になります。)。
(4) 検察官は,24時間以内(1日以内)に勾留請求するかどうか決めます(以上までで,俗に「二泊三日の警察の旅」と呼んでいます。)。
(5) 検察官は,裁判所に対して勾留請求します。
(6) 裁判所で,裁判官が逮捕された人(被疑者)に対して質問を行い,勾留状を発行します。
(7) 警察署内で10日間じっくり取り調べを受けます。
(8) 必要があると認められた場合は,検察官は裁判所に対して,「あと10日間延長」という請求をします。
(9) 裁判官が,理由があると認めれば,10日間延長決定をします。
(10) 警察署内でさらなる取り調べが続きます。
(11) 検察官が,起訴するかどうか決めます。
(12) 起訴したら,引き続き警察署内での宿泊が続きます。

  以上が概ねの流れです。
  刑事ドラマでは,犯人逮捕でドラマ終了ですが,現実には,むしろ犯人を逮捕してからのほうが刑事さんは忙しく,「西部警察」のようにとても逮捕を記念してブランディーで乾杯,なんてやってられないのです。
  そういう角度から,刑事ドラマも見てみましょう。

2 接見禁止って何?
  これは,簡単に言えば,「人との面会や差入を許さない」というものです。裁判官がこの決定をすれば,弁護士以外の者との面会や物の差入が制限されてしまいます。
  逮捕勾留中は,面会や文書の授受は自由にできます。なぜなら,判決が出るまではあくまでも無罪であることが前提になっているからです。
  しかし,何でもかんでも無条件に認めると,塀の中からでもいろんな指示をして,証拠を隠したり,証人を脅したりすることもできてしまいます。
  そこで,検察官は,「こいつ証拠隠しそうだなあ」と思った場合,勾留請求と同時に「接見禁止」の申立をします。
  どういう場合にこの申立をするかというと,個別具体的に判断するため,はっきりこれっという基準はありません。ただ,一般には薬物犯罪,暴力団関係者の犯罪,事実それ自体を否認している場合などは,接見禁止となる場合が多いようです。
  ちなみに,先日,三浦和義氏が,堀江容疑者にカレーの缶詰を差し入れていましたが,もしもこの決定がでていたならば,缶詰は未だに堀江容疑者の手元に渡っていないことになります。

3 文句がある人の対応方法
  しかし23日間も1人で留置場で過ごすというのは,結構しんどいです。しかも,さしたる娯楽もありません。もちろん,インターネットや携帯は一切使えません。
  そこで,「こんな逮捕勾留は不当だ!」という場合はどうすればよいでしょうか。
  実は,オフィシャルな不服制度としては,勾留に対して「準抗告」が出せるという程度しかありません。準抗告,また聞き慣れない名前ですが,ようは異議申し立てです
  一方,逮捕については,異議制度はありません。
  これが認められれば,晴れて自由のみになるのですが,実際の所,準抗告が認められる例はごくわずかです。
  また,「勾留理由開示」請求もあります。これは,「なぜ私を勾留したのか,その理由を教えろ。」という手続です。この申立がされると,公開の法廷で裁判官が,「あなたは**だから勾留した。」と説明します。
  ただし,これはただ説明するだけの制度なので,納得いかない場合は,先ほどの準抗告をすることになります。

長くなりましたので,次回に続きます。

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