堀江容疑者が逮捕されて10日近く立ちました。また,他にも防衛施設庁の審議官らも逮捕されるなど,逮捕の記事は毎日必ず報じられています。
一方で,「逮捕されるとどの位警察にいるの」とか「逮捕と勾留って何が違うの」とか,さらには「警察と拘置所って何か違うの」等という疑問を持っている方も多かと思います。
そこで,今回は,逮捕と勾留について,その流れや仕組み,さらには実情や問題点などについて簡単にまとめたいと思います。
なお,逮捕勾留制度の大前提にあるのは,以前「被疑者と被告人」の所でも書きましたとおり,「もしも自分が無罪なのに逮捕されたら」という発想になりますので,そちらの記事も併せてご確認ください。
よく分かる(?)シリーズ 逮捕勾留について(その2)
よく分かる(?)シリーズ 逮捕勾留について(その3)
第1 逮捕と勾留とは何か
1 逮捕とは何か
逮捕とは,犯人を捕まえる行為です。逮捕には,大きく分けると(1)現行犯,(2)通常逮捕,(3)緊急逮捕があります。
(1) 現行犯
簡単に言うと警察官の目の前で犯罪を犯した状態をいいます。この場合,目の前で犯罪が行われたわけですから,えん罪の可能性が低いということで,裁判所の発行する令状は不要です。ちなみに,一般人でも,目の前で犯罪を犯した人を見つけた場合,逮捕することができます(この場合は,直ちに警察に報告して身柄を引き渡さなければなりません。)
(2) 通常逮捕
裁判所が発行した逮捕状という令状を持って犯人の身柄を押さえることをいいます。よくテレビで,警察官がなんか紙を読み上げてから手錠かけている場面がありますが,あの紙が逮捕状です。
そして,逮捕の際は,必ず逮捕状を示して逮捕する事実を読み上げる必要があります。
(3) 緊急逮捕
殺人などの重大な事件の場合に,目の前を犯人が通過したとき,とりあえず先に逮捕して,後から逮捕状を請求するというものです。通常逮捕との違いは,逮捕時に令状がない,という点です。また,現行犯との違いは,後から令状を必ずもらうという点です。
2 逮捕の際,やるべきこと
以上3種類の逮捕に共通して必ず行わなければならない行為があります。それは,「時間の読み上げ」です。つまり,逮捕時に「7時13分,あなたを逮捕します。」と必ず言わなければなりません。
あとで説明しますが,逮捕には時間制限があります。したがって,「今から逮捕スタート」ということを明確にする必要があります。この時間読み上げを行わないと,上記3種類の逮捕いずれも,「違法逮捕」となります。
「太陽にほえろ」とかでは,いきなり手錠をかけちゃってますが,あれは違法逮捕になってしまうのです。
つまり,「逮捕=手錠」ではなく,「逮捕=時間を伝える」になるのです。
3 勾留とは何か
勾留とは,逮捕後に引き続き身柄を拘束することをいいます(報道では,「拘置」などと呼んでいます。)。これは,裁判官が勾留質問を行って,身柄を拘束しておく必要があると認められた場合,勾留状という令状を発行して,そのまま警察や拘置所に身柄を留め置くことになります。
なお,勾留をするには,必ず事前に逮捕をしておかなければなりません。また,逮捕の容疑と全く違う容疑で勾留することもできません。
4 時間制限
逮捕された場合,最大72時間身柄拘束ができます。また勾留状が発行された場合は,原則10日間拘束でき,更に請求によって10日間延長ができます。
すなわち,逮捕勾留で,最大23日間身柄拘束が可能となり,検察官は,その間に起訴するか否か判断することになります。
ちなみに,この期間内に起訴されれば,身柄は引き続き2ヶ月間拘束ができ,その後は1か月ごとに延長することができます(だから,裁判中でも身柄拘束が可能なのです。)。
第2 逮捕から勾留までの流れについて
1 実際の流れについて
先ほど,時間的な制限を書きましたが,実際どう流れるのか説明します。
(1) まず,逮捕されると,逮捕した警察署の留置場か拘置所に宿泊します。
(2) 48時間以内(2日間以内)に,警察は,検察官に身柄を送るか決めます。
(3) 警察が検察官に身柄を送る(とよく報道されますが,実際は書類が送られるだけで,身柄は一度取り調べのためだけに検察庁に行き,宿泊先は引き続き警察署の留置場になります。)。
(4) 検察官は,24時間以内(1日以内)に勾留請求するかどうか決めます(以上までで,俗に「二泊三日の警察の旅」と呼んでいます。)。
(5) 検察官は,裁判所に対して勾留請求します。
(6) 裁判所で,裁判官が逮捕された人(被疑者)に対して質問を行い,勾留状を発行します。
(7) 警察署内で10日間じっくり取り調べを受けます。
(8) 必要があると認められた場合は,検察官は裁判所に対して,「あと10日間延長」という請求をします。
(9) 裁判官が,理由があると認めれば,10日間延長決定をします。
(10) 警察署内でさらなる取り調べが続きます。
(11) 検察官が,起訴するかどうか決めます。
(12) 起訴したら,引き続き警察署内での宿泊が続きます。
以上が概ねの流れです。
刑事ドラマでは,犯人逮捕でドラマ終了ですが,現実には,むしろ犯人を逮捕してからのほうが刑事さんは忙しく,「西部警察」のようにとても逮捕を記念してブランディーで乾杯,なんてやってられないのです。
そういう角度から,刑事ドラマも見てみましょう。
2 接見禁止って何?
これは,簡単に言えば,「人との面会や差入を許さない」というものです。裁判官がこの決定をすれば,弁護士以外の者との面会や物の差入が制限されてしまいます。
逮捕勾留中は,面会や文書の授受は自由にできます。なぜなら,判決が出るまではあくまでも無罪であることが前提になっているからです。
しかし,何でもかんでも無条件に認めると,塀の中からでもいろんな指示をして,証拠を隠したり,証人を脅したりすることもできてしまいます。
そこで,検察官は,「こいつ証拠隠しそうだなあ」と思った場合,勾留請求と同時に「接見禁止」の申立をします。
どういう場合にこの申立をするかというと,個別具体的に判断するため,はっきりこれっという基準はありません。ただ,一般には薬物犯罪,暴力団関係者の犯罪,事実それ自体を否認している場合などは,接見禁止となる場合が多いようです。
ちなみに,先日,三浦和義氏が,堀江容疑者にカレーの缶詰を差し入れていましたが,もしもこの決定がでていたならば,缶詰は未だに堀江容疑者の手元に渡っていないことになります。
3 文句がある人の対応方法
しかし23日間も1人で留置場で過ごすというのは,結構しんどいです。しかも,さしたる娯楽もありません。もちろん,インターネットや携帯は一切使えません。
そこで,「こんな逮捕勾留は不当だ!」という場合はどうすればよいでしょうか。
実は,オフィシャルな不服制度としては,勾留に対して「準抗告」が出せるという程度しかありません。準抗告,また聞き慣れない名前ですが,ようは異議申し立てです。
一方,逮捕については,異議制度はありません。
これが認められれば,晴れて自由のみになるのですが,実際の所,準抗告が認められる例はごくわずかです。
また,「勾留理由開示」請求もあります。これは,「なぜ私を勾留したのか,その理由を教えろ。」という手続です。この申立がされると,公開の法廷で裁判官が,「あなたは**だから勾留した。」と説明します。
ただし,これはただ説明するだけの制度なので,納得いかない場合は,先ほどの準抗告をすることになります。
長くなりましたので,次回に続きます。
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一方で,「逮捕されるとどの位警察にいるの」とか「逮捕と勾留って何が違うの」とか,さらには「警察と拘置所って何か違うの」等という疑問を持っている方も多かと思います。
そこで,今回は,逮捕と勾留について,その流れや仕組み,さらには実情や問題点などについて簡単にまとめたいと思います。
なお,逮捕勾留制度の大前提にあるのは,以前「被疑者と被告人」の所でも書きましたとおり,「もしも自分が無罪なのに逮捕されたら」という発想になりますので,そちらの記事も併せてご確認ください。
よく分かる(?)シリーズ 逮捕勾留について(その2)
よく分かる(?)シリーズ 逮捕勾留について(その3)
第1 逮捕と勾留とは何か
1 逮捕とは何か
逮捕とは,犯人を捕まえる行為です。逮捕には,大きく分けると(1)現行犯,(2)通常逮捕,(3)緊急逮捕があります。
(1) 現行犯
簡単に言うと警察官の目の前で犯罪を犯した状態をいいます。この場合,目の前で犯罪が行われたわけですから,えん罪の可能性が低いということで,裁判所の発行する令状は不要です。ちなみに,一般人でも,目の前で犯罪を犯した人を見つけた場合,逮捕することができます(この場合は,直ちに警察に報告して身柄を引き渡さなければなりません。)
(2) 通常逮捕
裁判所が発行した逮捕状という令状を持って犯人の身柄を押さえることをいいます。よくテレビで,警察官がなんか紙を読み上げてから手錠かけている場面がありますが,あの紙が逮捕状です。
そして,逮捕の際は,必ず逮捕状を示して逮捕する事実を読み上げる必要があります。
(3) 緊急逮捕
殺人などの重大な事件の場合に,目の前を犯人が通過したとき,とりあえず先に逮捕して,後から逮捕状を請求するというものです。通常逮捕との違いは,逮捕時に令状がない,という点です。また,現行犯との違いは,後から令状を必ずもらうという点です。
2 逮捕の際,やるべきこと
以上3種類の逮捕に共通して必ず行わなければならない行為があります。それは,「時間の読み上げ」です。つまり,逮捕時に「7時13分,あなたを逮捕します。」と必ず言わなければなりません。
あとで説明しますが,逮捕には時間制限があります。したがって,「今から逮捕スタート」ということを明確にする必要があります。この時間読み上げを行わないと,上記3種類の逮捕いずれも,「違法逮捕」となります。
「太陽にほえろ」とかでは,いきなり手錠をかけちゃってますが,あれは違法逮捕になってしまうのです。
つまり,「逮捕=手錠」ではなく,「逮捕=時間を伝える」になるのです。
3 勾留とは何か
勾留とは,逮捕後に引き続き身柄を拘束することをいいます(報道では,「拘置」などと呼んでいます。)。これは,裁判官が勾留質問を行って,身柄を拘束しておく必要があると認められた場合,勾留状という令状を発行して,そのまま警察や拘置所に身柄を留め置くことになります。
なお,勾留をするには,必ず事前に逮捕をしておかなければなりません。また,逮捕の容疑と全く違う容疑で勾留することもできません。
4 時間制限
逮捕された場合,最大72時間身柄拘束ができます。また勾留状が発行された場合は,原則10日間拘束でき,更に請求によって10日間延長ができます。
すなわち,逮捕勾留で,最大23日間身柄拘束が可能となり,検察官は,その間に起訴するか否か判断することになります。
ちなみに,この期間内に起訴されれば,身柄は引き続き2ヶ月間拘束ができ,その後は1か月ごとに延長することができます(だから,裁判中でも身柄拘束が可能なのです。)。
第2 逮捕から勾留までの流れについて
1 実際の流れについて
先ほど,時間的な制限を書きましたが,実際どう流れるのか説明します。
(1) まず,逮捕されると,逮捕した警察署の留置場か拘置所に宿泊します。
(2) 48時間以内(2日間以内)に,警察は,検察官に身柄を送るか決めます。
(3) 警察が検察官に身柄を送る(とよく報道されますが,実際は書類が送られるだけで,身柄は一度取り調べのためだけに検察庁に行き,宿泊先は引き続き警察署の留置場になります。)。
(4) 検察官は,24時間以内(1日以内)に勾留請求するかどうか決めます(以上までで,俗に「二泊三日の警察の旅」と呼んでいます。)。
(5) 検察官は,裁判所に対して勾留請求します。
(6) 裁判所で,裁判官が逮捕された人(被疑者)に対して質問を行い,勾留状を発行します。
(7) 警察署内で10日間じっくり取り調べを受けます。
(8) 必要があると認められた場合は,検察官は裁判所に対して,「あと10日間延長」という請求をします。
(9) 裁判官が,理由があると認めれば,10日間延長決定をします。
(10) 警察署内でさらなる取り調べが続きます。
(11) 検察官が,起訴するかどうか決めます。
(12) 起訴したら,引き続き警察署内での宿泊が続きます。
以上が概ねの流れです。
刑事ドラマでは,犯人逮捕でドラマ終了ですが,現実には,むしろ犯人を逮捕してからのほうが刑事さんは忙しく,「西部警察」のようにとても逮捕を記念してブランディーで乾杯,なんてやってられないのです。
そういう角度から,刑事ドラマも見てみましょう。
2 接見禁止って何?
これは,簡単に言えば,「人との面会や差入を許さない」というものです。裁判官がこの決定をすれば,弁護士以外の者との面会や物の差入が制限されてしまいます。
逮捕勾留中は,面会や文書の授受は自由にできます。なぜなら,判決が出るまではあくまでも無罪であることが前提になっているからです。
しかし,何でもかんでも無条件に認めると,塀の中からでもいろんな指示をして,証拠を隠したり,証人を脅したりすることもできてしまいます。
そこで,検察官は,「こいつ証拠隠しそうだなあ」と思った場合,勾留請求と同時に「接見禁止」の申立をします。
どういう場合にこの申立をするかというと,個別具体的に判断するため,はっきりこれっという基準はありません。ただ,一般には薬物犯罪,暴力団関係者の犯罪,事実それ自体を否認している場合などは,接見禁止となる場合が多いようです。
ちなみに,先日,三浦和義氏が,堀江容疑者にカレーの缶詰を差し入れていましたが,もしもこの決定がでていたならば,缶詰は未だに堀江容疑者の手元に渡っていないことになります。
3 文句がある人の対応方法
しかし23日間も1人で留置場で過ごすというのは,結構しんどいです。しかも,さしたる娯楽もありません。もちろん,インターネットや携帯は一切使えません。
そこで,「こんな逮捕勾留は不当だ!」という場合はどうすればよいでしょうか。
実は,オフィシャルな不服制度としては,勾留に対して「準抗告」が出せるという程度しかありません。準抗告,また聞き慣れない名前ですが,ようは異議申し立てです。
一方,逮捕については,異議制度はありません。
これが認められれば,晴れて自由のみになるのですが,実際の所,準抗告が認められる例はごくわずかです。
また,「勾留理由開示」請求もあります。これは,「なぜ私を勾留したのか,その理由を教えろ。」という手続です。この申立がされると,公開の法廷で裁判官が,「あなたは**だから勾留した。」と説明します。
ただし,これはただ説明するだけの制度なので,納得いかない場合は,先ほどの準抗告をすることになります。
長くなりましたので,次回に続きます。
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