トドの小部屋

写真付き日記帳です。旅行記、本や美術展の紹介、俳句など好きなことをつれづれに。お気軽にどうぞ。

おらおらでひとりいぐも

2019-06-20 11:42:19 | 
久しぶりに本のご紹介をします。若竹千佐子さんの「おらおらでひとりいぐも」を読みました。東京オリンピック開催のファンファーレに押されるように結婚式の3日前に故郷を捨てて上京し、東京で一人暮らしを始めた桃子さん。東京で臆面もなく東北弁まるだしで話す美しい男、周造と出会って結婚し、二人の子供を育て上げ、近郊の新興住宅地に40年暮らしている74歳の桃子さん。一人暮らし23年。早くに夫に先立たれ、息子と娘とは疎遠な状態で、親子四人で暮らした家に一人暮らしをしている。息子は「俺にのしかからないでくれ」と言って他県で就職。娘は近くに住んでいるものの、電話一本よこさない。そんな娘から久しぶりの電話があり、桃子さんは喜ぶのだったが、娘は買い物に不自由していないかなどと優しい気づかいをした後、お金を貸してほしいと頼む。一瞬、躊躇する桃子さん。お兄ちゃんにだったらすぐに貸すのに。だからオレオレ詐欺に引っかかるんだとも言われて電話は切れる。誰とも話さない暮らしの中で、話し相手は見えない人の声。その声は自分のうちから聞こえてくるのだった。最愛の亡き夫、周造の墓参りには、手弁当を持って歩いて行く桃子さんだった。全編を通し、桃子さんの心の声とのやり取りや、考えが東北弁でつづられている。一人暮らしの孤独の中で見つけた「自分のために生きる」という喜びにちょっと励まされ、桃子さん、まだ大丈夫そうでした。筆者の若竹千佐子さんは1954年、岩手県遠野市生まれ、55歳から小説講座に通い始め、8年の時を経て本作を執筆。2017年史上最年長の63歳で第54回文藝賞を受賞し、第158回芥川賞も受賞した。民話の宝庫、遠野の生まれで私と同じ年。私は息子2人と疎遠ではないけれど、他県に暮らしている子供たち。夫に先立たれたら私もこうなるのかなぁなと実感を伴って読みました。若い読者には実感がわかないかもしれないなぁと思いました。
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