1
そこに詩がある。
2
物体のようにしてそこにある。詩がある。
3
それを見つけるのが詩人。
4
物体と物体の間にあるから、なかなか見つからない。
5
でもよく見るとそこにある。
6
まるで物体のようにしてそこにある詩。
7
ふふうと息を吹きかけると、それがピノキオになる。
8
わたしの両手の糸の先で動き出す。
9
ピノキオはさかんにわたしに語り掛けて来る。
1
そこに詩がある。
2
物体のようにしてそこにある。詩がある。
3
それを見つけるのが詩人。
4
物体と物体の間にあるから、なかなか見つからない。
5
でもよく見るとそこにある。
6
まるで物体のようにしてそこにある詩。
7
ふふうと息を吹きかけると、それがピノキオになる。
8
わたしの両手の糸の先で動き出す。
9
ピノキオはさかんにわたしに語り掛けて来る。
1
落ちていたのはスカーフでありました それを拾ったのでありました
2
もう一首詠んでみました。口語体の。
3
ドラマは隠されていないようだが、これから始まるようでもある。
4
捨てられていたのかもしれません。失恋の痛手に耐えられなくて。
5
捨てられたスカーフなんだから、いかにもつまらないスカーフなんだけど、拾い上げてみました。
6
スカーフのために。
7
枯葉の一枚がそこに絡んでいるのでした。
1
ペットボトルの水を飲む。するとその水がわたしになる。わたしの命になっている。クイックで。
2
ベットボトルの水だったのが、そうでなくなって、わたしの命の水になっている。クイックで。
3
さっそくわたしの喉を潤している。わたしの腸(はらわた)にしみじみと沁みて行く。
4
なあんだ、元を正せば、わたしはペットボトルの水だったのか、と思う。
5
命は変身はすばやい。それなのに間違いがない。すすすっとそれに成り切ってしまう。わたしの命になって、そこでもう安堵を覚えている。
6
静かにして命に成り切っている。
7
自然界万物の交流。交流電気の温度調節のぬくもり。宇宙全体のこのぬくもり合わせ。
1
散乱のこころの破片拾ひては継(つ)ぎ合はせたりもうすぐ夜明け
2
わたしの今日の一首。
3
こころは土器の器(うつわ)。割れて小さな部屋に散乱してしまっている。
4
どうしようもないのだ。割れてしまうのだ。破片になって散乱してしまうのだ。
5
茫然自失しているしかないのだが、やがてそれも終わる。
6
後片付けに掛かる。時間が掛かる。継ぎ合わせ繋ぎ合わせるのに時間が掛かって、もう夜明けになっている。
7
繋ぎ止められたわたしのこころ。でも、こころは脆い。脆いはかない土器製だ。またいつ、ばらばらになってしまうか分からない。
8
日ごと修復してまた壊されて修復して、夜明け前にやっと1日分の修復が終わって、平常に戻る。
1
宮中歌会始の入選作品10首の中のこの1首が僕は一番好きだった。上手下手は分からないけど。
2
友だちはいないんだよと言ふ君の瞳の中にわたしを探す
新潟県 相川澄子さんの作品、これは。
3
友だちのいない人が、「わたしは友だちなんかいません」と告白している。頼る人がいなくてさみしいと言っている。世の中の誰からも拒絶されているような孤独を感じて、うつむいている。近付いて行って声を掛ける。うつむいていた顔が空を見る。その瞬間に、空の端っこにわたしの顔が映っている。その人も友になるのを申し出ているわたしの顔が映っている。空が笑っている。
4
そんなふうにこの入選作品を読んでみました。間違い読みになっているかもしれません。
5
相川さんっていい作品が書ける人だなあ。どんな人なんだろう。
6
むむむ? これはひょっとして恋の歌? 好きになった人がいたんだ!
7
歌を通して、人間の持つ美しいこころが輝きだして来る。
1
お守り。神社に行くとお守りが売られている。人がこれを買い求めている。
2
無病息災のお守り。家内安全のお守り。商売繁盛のお守り。などなどの。
3
テレビで報じていたが、山口県宇部市の神社では850種類ほどのお守りが売られているのだそうな。(正確に覚えてはいないのだが)
4
お守りは、守る神々と守られる人との接点、共通の場、出会いの場を造っていることになる。
5
お守りを身につけていると、人は守られているという安心を得る。
6
でも、順序は逆。
7
人は守られて生きている。そうでないとかたときも生きてはいけない。その事実がある。
8
それを確かめているのだろう。それをお守りの御札で噛みしめているのだろう。
9
だから、お守りは請求書の役割ではなく、領収書の役割をしているのだ。
10
お礼を申し述べているのがお守り札なのだ。
11
人は何故守られて生きているのか。
12
神々が守ってあげたくなるような生き方を、人間がしているからだ。
13
希望を持って生きているからだ。明日に希望をふくらませているからだ。
14
マイナスをマイナスとしないで、それをプラスにする努力をしているからだ。
1
プリムラの花苗を4ポット買って来た。いろとりどりの花がもう咲いている。1ポット150円。合計600円。
2
玄関先の花壇に植え込んだ。花を得た玄関先が明るくなった。ぽぽっと火を灯したように明るくなった。
3
花が使者の役目をしている。地上は冬。寒い冬だというのに、天使エンジェルの役目をして地上に降りて来ている。
1
昨日は、畑に出た。寒さを堪えて畑に出た。
2
畑には豆が育っている。
3
豆は蔓を伸ばしている。蔓が、網にすがって上を目指している。
4
ところが、網を捕まえきれない蔓がある。土に埋もれたようにしてうずくまっている。
5
いかにも可哀想だ。
6
助けに入る必要がある。
7
お爺さんの出番だ。
8
寒い風の吹く中で、お爺さんは鼻水を垂らしながら、紐で蔓を網に結ぶ作業を繰り返した。
9
一畝ある。作業は時間がかかった。夕方には終わった。ほっとした。
10
豆もほっとしただろう。蔓が網に届いて安心をしただろう。これから春咲きにかけて、蔓は天空を這い上って行くであろう。
11
お爺さんは役だったのだ。ほんの少しだけど。
日が射さない。射してはいるのだろうが、明るくなっていない。天地が沈鬱している。
お日様は偉大。あなたが顔を出してこないと、こうなる。万物が動きを止めてしまう。
冬は寒い。寒い冬だからなおさら偉大なお日様を偉大にしておきたくなる。岩戸を開いてお迎えしたくなる。
炬燵を消すのを忘れてた。一晩中ついてたことになる。電気代が高いご時世。もったいないことをした。
朝方、起きて、炬燵の中に足を延べたらふっくらあたたかい。しまったと思った。またやらかしてしまった。
できるだけそうしないように注意していたのだが。してしまった、またもや。スイッチは、目に付きやすいように、炬燵布団の外に出しているのだが、それでも。
ああ、情けない。無駄になった電気代の分を何かで節約せねば。とはいえ、外は寒い。内に籠もる。やはりまた同じように炬燵の中にうずくまる。