1
日射しが弱い。かぼそい。力を込めていない。暗い。寂しい。
2
その上に、風が吹く。吹き付ける。いかにも冬の風らしく。慎ましげに。
3
お爺さんは生きているうちにと考えて、外に出る。畑を一周して来る。見て歩くだけだけど。見て歩くだけでも、生きているうちにしかできないことだから。
4
見て歩いてきたからといって、それで何かが変わるわけではない。なんにも変わった風には見えない。
5
じゃ、生きても死んでも変わらないかというと、そこは違う。変わってしまいそうに思える。
6
どう変わるのか。お爺さんの姿が消える。それ以外は? 風物は無変化だ。
7
風はいかにも冬の風らしく花壇の水仙を吹いて通る。そして慎ましい水仙としばらく遊ぶ。
8
それを見ているのは? 誰? すくなくともお爺さんではない。
9
でも、お爺さんでもあるように見える。死んでしまっても? そう、死んでしまった後でも。