さて、そろそろ我が家は夕食。
1
須(すべか)らく回光(えこう)返照(へんしょう)の退歩を学すべし。身心(しんじん)自然(じねん)に脱落して本来の面目(めんもく)現前せん。
曹洞宗経典、「普勧坐禅儀」より。
2
此処からはわたしに言い聞かせるための自己解釈である。読者諸氏はご自分の解釈をして下さい。
3
身心に無理矢理閉じ込めていた自力の力みを脱落させれば、そこに自然に、脱落前のわたしが生き生きとして活発に活動しているのを感得するだろう。光らなくとも、この世の一切は光を受けて光っているのだから。光ろうとする自分から一歩退いて見てみれば、その本来の面目、この世の法のダンマがよく分かるだろう。光は夕日の光であって仏陀の放つ光である。
4
すでに道あり。歩いて進んで行く道あり。己の自己意識のスコップを擲って、放下して、燦然と輝いて、此処を闊歩すればいいのである。
此処を去ってしまったら、わたしはいません。此処にはいません。次へ進んで行っていますから、此処にはいません。此処にいるわたしを見たいのなら、いまのうちです。しっかりと見ていて下さい。
1
わたしは此処にいるのに、わたしを探している。
2
嬉しがっているわたしを探している。
3
この世に生まれて来たことを嬉しがっているわたしを探している。
4
この世に生まれて今日を生きたことを、嬉しがっているわたしを探している。
5
おおい、此処だ此処だと大声で叫んでくれよ。
1
残り10分で18時。空が薄暗くなって来た。まもなく一日が暮れる。
2
ああ、いい一日だった。
3
一日を一括りにして、「いい一日」として総括する。
4
意義あることは何もしていないけれども。それでもそれでもそれでも十分であった。
5
わたしに与えられた一日は十分に「いい一日」だった。
6
この評価に値していると思う。
7
空の一箇所が入り日の茜色に染まっている。美しい。
1
生きているとはどういうことなのか。
2
生きていながら死んでいる、ということはないのか。
3
(その反対はないか。この世を死んでいるのに、しかしそれでも生き生きとして生きている、ということはないのか)
*
4
(これはまた別の考察になるけれども)
肉体は(健康に)生きているけれども、こころが死んでしまって活動していない、というケースはないのか。
5
その反対に、肉体は死んでいるに等しいけれども、こころは(健康で)生き生きとして生きて活動している、というケースはないのか。
*
6
どちらのケースもあり得るように思われる。相互に助け合っていれば、次に進んで行けるだろう。
7
+と+。つまり肉体も生き生きと生きて、こころも生き生きと生きて活動している。これだと両者が安定する。こうありたいが、病むことだってある。どちらかが病むことだってある。
*
8
肉体だけでは生き生きと生きていけない。こころだけでは生き生きと生きていけない。互いを生かし合っていなければならない。(現実では、互いに互いの不足を補い合っているのではないだろうか)
*
9
(次の場合はどうか)
自己否定と自己肯定。自己否定は苦しい。自己肯定は嬉しい。
10
否定された肉体。否定されたこころ。-と-。
肯定された肉体。肯定されたこころ。+と+。
否定された現世と否定された来世。-と-。
肯定された現世と肯定された来世。+と+。
*
11
生きているとはどういうことなのか。否定の中では生きていけないのではないか。ふっとそんなことを思う。懐疑に囚われる。
12
肯定だけを積み上げていきたいのに、そこに否定が混じる。自己否定に苦しめられる。
13
自己肯定のよろこびを積み上げて生きたいのに、そこに悲しみが混じる。自己否定の悲しみが肉体とこころを冷やしてしまう。
*
14
考えて考えて、自己に対する懐疑が深まって、結論が出ない。
文字が小さい。読み辛い。目が疲れてしまう。長く読書が出来ない。
本から文字が浮かび上がって来て、見えやすいほどに大きくなってくれたらいいのだが。
誰か、そういう発明をしてくれないかなあ。
資力が乏しくなった老人が、本に向かってぺこんとお辞儀をしてお願いすると、本が、「分かりました、あなたのお助けをします」と言って、それに応えてくれるような便利な発明。それをしてくれないかなあ。
冬の山里あたりをぶらり、ブラリブラリして来た。2時間ほども。歩いてではない、車に乗って。当てもなくドライブ。数カ所には立ち止まった。車を降りて、そこらをしばらく歩いた。
気分転換には十分役立った。もやもやが、すっきりした。お金は遣っていない。誰かに会って来たわけでもない。誰かと話をしたわけでもない。終始一人。無目的の2時間を過ごした。
1
感動が575や57577になる。なれるんだなあっと感心する。ことばのリズムの檻にいるのに、窮屈そうにしていない。
2
檻の中にいる俳句の鬣(たてがみ)ライオンや、短歌のインドダイガーが、こっちへ向かって来る。
3
檻から出してあげる。元いた場所に帰して上げる。575や67577から解き放してあげる。
4
でも、一度感動になったその感動はそのままでいる。いつでもまた俳句や短歌になれる態勢を整えている。
5
この世は不思議なところだ。摩訶不思議なところだ。カタチのないものもカタチを取って現れて来ることができる。
今日のわたしの即興詩 「雲の舟」
わたしの命令が届くと/雲が舟になる/ススメと号令を掛ける/舟が走り出す/トマレと命令する/するとあっけなく舟は止まる/わたしは草っ原に寝っ転がっている/わたしの命令が効くのはここだけ/ここの草っ原だけ/寝そべっている間だけ/雲が/わたしなんかの命令に屈するわけはないのだが/そうしてくれている/いつもしょんぼりして暮らしているわたしを/いつも黙って見ていてくれているらしい/今日は特別らしい/命令に屈してそれで明るい顔になっている/ススメ、トマレ/雲が舟になっている/白いマストが見える/冬の日射しを受けて輝いている