有明海を見ながら、太良の牡蠣焼きを、おいしく食べて来ました。お正月客で賑わっていました。並んで待ちました。
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絵のように美しい。それでいい。
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絵であっていい。絵になって美しい世界を広げてくれていたらそれでいい。十分だ。
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それを眺めて美しく眺めて、胸の内でひっそり眺め尽くしていよう。
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老いている。老いているからそれでいいが、若いときにはそうれがそうできなかった。それに触れてみたかった。己の手に取ってみたかった。あたたまっていたかった。
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そしてそうできないことを悲しんだ。深く悲しんだ。恨んだ。己を不憫にも思った。
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そして老いた。絵を眺めていられるようになった。絵であることを悲しまないでいられるようになった。
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やがて死ぬ日が近くなっているからだろう。
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そのおんなの人はうつくしいおんなの人だった。
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おんなの人にまったく縁がない僕なのでよけいに、数倍に拡大してそう感じてしまったのだろう。
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拡大鏡って、いいよね。うつくしさを数倍に拡大できる拡大鏡。それをこころの中にしまっておく。そしてときおりそれを出して来て、こころの目がそれを通しておんなの人を見て、「ああ、おれはなんとうつくしい世界に生きているんだろう」と嘆息する。何度も何度も溜息をつく。
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うつくしいおんなの人がうつくしく生きている世界は、まぎれもなく美しい世界である。
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その人は数日前に行きずりでほんのちらりと会っただけなのに、まだ美しい残像が消えて行かない。
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残像だけで数日間もうっとりしていられるんだから、安上がりな男だ、この男は。
うつくしいおんなの人。「うつくしい」も「おんなの」も平仮名で書く。漢字だと固い石になってしまう。やわらかさが出ない。
夢二の描くおんなの人はほっそりしていた。痩せ型だった。着物を着ている人が多かった。後ろ姿までがほんのりうつくしかった。目が垂れ目だった。
夢二はおんなの人をみなうつくしく見ていたのだろう。現実の2倍3倍、10倍100倍うつくしくして見ていたのだろう。それができれば幸せな男だ。そうやって幸せな男になっていたかったのだろう。男はすべからくそうであっていいかもしれない。
僕にそれが出来るか? できそうもない。
昨日県立美術館に竹久夢二展を見に行った。緒川たまきさんが美術館ホールで「夢二を語る」講演会に来られていた。参加は予約制であったので、入場はできなかったが、ホールでお美しいお姿に接することは出来た、遠くから。夢二の愛した女性の名は「たまき」さん。夢二の絵の描くたくさんのおんなの人に、今朝までまだ<ほにゃほにゃ・ららら>しています。
夢二の絵はみんな詩になっているのだそうだ。今朝の新聞のそう書いてあった。絵で詩を書いていたのか。ふうううん。僕は詩で美しいおんなの人の絵を描きたいものだ。そうしたくてうずうずするが、詩は生まれない絵も生まれない。
今日は成人の日。57年前には、このお爺さんも成人の日を迎えた。微かに覚えている。まわりからおめでとうを言われてもどうしていいか分からなかった。どうやってこのおめでたい日を過ごせばいいか、おめでたくなるか、分からなかった。結局は何もしないで日が暮れた。成人式の行事に参加した記憶はない。今日式を迎える二十歳の人たちはどうだろう? 晴れ晴れしい気持ちがしているだろうか。祝ってもらえる式場に行って、成人の誓いを噛みしめているだろうか。100歳まで生きるとしたら、成人後に80年が待ち受けている。残りがこれまでの4倍もある。楽しい嬉しい4倍の月日であってほしい。お天気がいい。お天道様がお祝いをしてくれている。
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今年最高に霜が分厚く降りている。ごわごわがちがち。
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日本語には擬音語がある。擬音語で形容描写できる。そしてぴったりする。便利だ。
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日が昇って来て、霜を解かしている。せっせせっせと。屋根の霜は抵抗が出来ない。じわりじわり解け出している。
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この寒い朝、寒さにめげないで雀が庭の餌場に来て、餌を啄んでいる。1波2波3波、どどどうどどう。数が多いので分かれて行動する。
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ベランダには庇があって、庇の内側に置かれている桜草は、霜の被害を受けないで済んでいる。日射しを受けてほっこりほっこりしている。冬の日の赤い花が眩しい。