５
オレが偉い、などと争うな。争う者を己の外に造るな。
争わなくなれば、静かだ。そこでたちまちに涅槃に至り、寂静に入るのだ。
争わなくていい世界、無分別の世界にしてあるのに、それでもあえて争おうとする。
我が分別がこれをする。我を智者とする我がいて、分別をする。そしてその挙げ句に苦しむ。迷う。
４
酔わなくったってそれは同じことだ。その他一切の、ありとあらゆる価値基準判断測定器械をぶっ壊していればすむことだ。暴力でもってそうしなくともいい。放棄をすれば済む話だ。
偉大なる放棄をした者は仏陀となれる。しかし、その放棄が至難なのだ。
一生涯、隙間なく、得よう得よう得ようとする。得ていないと不安でたまらない。
３
単純な男だ。酒を飲ませると酔う。そしていい気持ちになる。いい気持ちになると、その他一切の価値基準判断法がお留守になれる。つまり、酔うことが最高価値になれる。
逃げるなという声がするが、その声は幻惑の声である。イリュウジョンである。かまうことはない。
２
酔った。２合で十分だ。老爺が酔うには。６時半から飲み出した。７時過ぎまで。だらだらもしていない。すぐに酔う。酔うといい気持ちになる。
自己診断測定器械ごときに縛られているこたあ、ないんだ。自由でいていいんだ。自由に生きていていいんだ。
１
地元の酒「天山」を飲んだ、熱燗で２合。自分でつける。徳利とおちょこでチビリチビリ。「天山」は地元小城の天山の麓に酒蔵がある。やや辛口。
夕方、外に出ていた。農作業をしていた。気温が冷えている。何度もクシャミをした。それでなおさら熱燗がおいしくなっている。
おとうは／あごひげで／ゴシゴシする／逃げる足を捕まえて／両手で組み敷いて／お膝に抱いて／ほっぺたに／ゴシゴシする／もがく／イタイイタイイタイを叫ぶ／にげだす／またつかまる／おとうのいる日は／おとうにつかまってしまう／それから栗を拾いに／山に連れ出される／イヤと言っても連れ出される／山の奥へ入って行く／おとうが木に登る／大空から毬栗が落ちて来る／秋の匂いが匂う
ああ秋が来ているなあ／大空が匂う秋／秋が来ているけど／もうおとうは／いないんだなあ／おとうよりも／長生きをしているけれど／ふっとおとうがこいしい／小さい頃にもどってしまって／おとうがこいしい
伝統芸能の祭の祭典は県民祭だから大勢が駆け付けるだろう。大混雑が予想できる。この老爺はまごまごするかもしれない。市の文化会館の駐車場に駐車ができるだろうか。
老爺は人混みの中を嫌う。人に酔う。
畑に出て行って、ひとり終日ゆるゆると秋野菜の世話をするのもよさそうだ。夏草の茂みもまだたっぷり残っていることだし。
地方色を出した各地伝統芸能の祭典を、佐賀市の文化会館に見に行くことにする。午前１０時から始まって夕方６時まであるらしい。全部にお付き合いする忍耐力はないだろう。
お祭りの笛や太鼓、鉦の音を聞きたい。何だかこれを聞くと自分が日本人に戻れた気がする。
今日は体育の日。国民の休日。爽やかな秋空が広がっている。家にいてじっと見上げているだけではもったいないほどだ。リュックを背負って、山を目指す人も多いだろう。
体育の日なのだが、昨日日曜に予定されていたわが市の運動会は台風のために中止になった。運動会をするための、そのための休日でもあるまい。
