子どもの頃、警察のお世話になったことがある。
私が 直接 法に触れることをしたわけではないが、
家族や 地域の人、そして警察の人に
心配や 世話をかけてしまった。
幼い頃、母は 働いていたし、
私の 普段の行動について あまり把握していなかった。
きょうだいの世話を 言いつけられたり、
その他の用事がある時は 母の言いつけに従って
スケジュールをこなしたが、
そうでない日は、一人で あちこちぶらぶらしたり、
図書館へ行ったりしていた。
一旦帰宅してから 出かけてはいたが、
行き先のメモを 残す習慣もなかった。
ある日、あまり 接したことのない、家がどこなのかも知らない
同じ学年の子に、「家に来ない?」と誘われた。
答えずにいたら、「うちには 小さな犬がいるよ、家の中で飼ってるよ」と
言われた。
当時、室内犬は 珍しかった。
犬に気をひかれた私は、「行く」と答えてしまった。
私が 家に帰って 荷物を置いた後、その子が 家まで
案内してくれた。
きれいな お家で、その子の部屋に入れてくれた。
ベッドもあるし、子ども部屋なのに TVもあった。
小さな犬が ケージに居た。
「じゃあ 開けるね」と 犬を放してくれた。
楽しかった。おやつも 出してくれた。見たこともないお菓子だった。
かなり 時間が経った気がしたので、
時計を探したが 見えない所にあるらしい。
あるいは その子が 隠したのかもしれない。
外は 見えなかったが、「夜だ」という気がした。
玄関のドアノブを回しても、開かない。
鍵を 開けたつもりだったが、まだ他に 開かない工夫がしてあるらしい。
「家に帰らないと 怒られる」私の頭に浮かんだのは
そのことだけだった。
不思議な事に、その子の親は 待っても待っても帰ってこない。
夜遅い仕事をしているのかもしれない。
電話がないか 探したが、私には 探せなかった。
それから 長い時間が経ち、私が 泣きだしてから、
ようやくその子は ドアを開けてくれたが、
「まだ 遊んで行けばいいのに。面白いTVやるよ」と
遊び相手がいなくなる事を 残念がっていた。
暗い道を、走って走って、どこか 分る場所に出たいと
あちこち見ながら 息が切れるほど走った。
そのうちに 見慣れた場所に出て、ほっとして
歩き始めたが、なかなか家には 着かなかった。
行く時は 気がつかなかったが、けっこう遠くまで
行っていたらしい。
家に着いたら どれだけ 怒られるだろう、叩かれるだろう、と思うと
気が気でなかった。
今度は そのことが 怖くて、泣けてきた。
泣きながら 歩く私に、知らないおばさんが声を掛けてきた。
「あんた OO町の OO小学校の子じゃない?」
うなづく私を そのおばさんは 手を引いて 歩いてくれて、
他の 大人が 一杯集まった場所に行き、
「迷子の子、見つかったよ!」と 声を張り上げた。
わーっと どよめきがあがり、その後は
何が何だか わからないうちに 家に着いていた。
両親に 連絡が 行っていたようで、母が飛び出してきた。
母は いきなり 私を抱きしめたが、ただ 無言だった。
その時 父が どこにいたかは わからない。私を探しに
どこか 行きそうな場所に 行っていたのかもしれない。
家に入ってから 母が 警察に連絡をして、
「おかげさまで 見つかりました。ご心配ご迷惑かけました」と
言っていた姿を 覚えている。
何も 説明を 求められなかったし、
母も 何も 言わないので、一体何が何だか
私には 理解できなかった。
なぜ 母が 私を叱らないのか、叩かないのかが
わからなかった。
その後 その子の家には 行かなくなったが、
そのことで 学習するということも なかったので、
私は その後も 母がいない時は あちこちふらふら 歩いていた。
たまに もらえる小銭を貯めておいて、
駅前まで 何キロも 歩いて 本を買ったりした。
高い本は 買えないので、文庫本を買うのが 楽しみだった。
その本を 母が見つけて 「どこで買ったの」と聞かれ、
「お金貯めて 駅まで歩いて 本屋さんで買った」と
言ったら、「そんな事は 恥ずかしいからやめなさい!」と
叱られた。何が 恥ずかしいのか わからないので、納得が出来なくて、
その後は 母に 見つからないように 買った本を 隠すようにした。
お店で お金を払って物を買うことが なぜ恥ずかしいのか、
今でも 謎である。
母も、周囲の大人も 私に 「年齢にふさわしい振る舞い」や
「気をつけるべきこと」を 私にわかる言葉では 教えてくれなかった。
普通の子が 何となく教えられなくても 理解できることが、私にはわからなかった。
何かしてから 訳の分からない言葉で 怒鳴られたり、
叩かれたり、という事が 多かった。
子ども達には 自分の 経験を踏まえて、
「出かける時には 行き先を 家の大人にいう事」や
「O時までには 必ず帰る事」を 約束させて、その理由も 教えた。
どこまでが 「してもいい事」で、
どこからが 「危ない事」なのか、私は 言語化してもらわないと
理解できなかった。両親は さぞかし 育てにくかっただろうと
今 思う。私が 両親の帰宅まで、どこで 何をしているのか、
ほとんど把握できなかったのだから、帰宅が遅くなったあの日、
警察に 話す情報が どれだけあったのだろうか。
よく立ち寄る図書館も、買い物に行く商店街も 皆閉店していただろうし、
誰も 下校後の 私の 足取りをたどれなかったのではと思う。
たくさんの人に 心配や ご迷惑をかけた事を、今
申し訳なく思う。あの時から 40数年が過ぎた。捜索にあたってくださった
警察官の方は ご高齢か、中には 他界されたかもしれない。
感謝の気持ちと お詫びの気持ちを お伝えしたいと思う。
協力してくれた 地域の 皆さんにも。
私の 気まぐれで 大騒ぎを起こしましたが、今も無事で
生活できています。ありがとうございました。
私が 直接 法に触れることをしたわけではないが、
家族や 地域の人、そして警察の人に
心配や 世話をかけてしまった。
幼い頃、母は 働いていたし、
私の 普段の行動について あまり把握していなかった。
きょうだいの世話を 言いつけられたり、
その他の用事がある時は 母の言いつけに従って
スケジュールをこなしたが、
そうでない日は、一人で あちこちぶらぶらしたり、
図書館へ行ったりしていた。
一旦帰宅してから 出かけてはいたが、
行き先のメモを 残す習慣もなかった。
ある日、あまり 接したことのない、家がどこなのかも知らない
同じ学年の子に、「家に来ない?」と誘われた。
答えずにいたら、「うちには 小さな犬がいるよ、家の中で飼ってるよ」と
言われた。
当時、室内犬は 珍しかった。
犬に気をひかれた私は、「行く」と答えてしまった。
私が 家に帰って 荷物を置いた後、その子が 家まで
案内してくれた。
きれいな お家で、その子の部屋に入れてくれた。
ベッドもあるし、子ども部屋なのに TVもあった。
小さな犬が ケージに居た。
「じゃあ 開けるね」と 犬を放してくれた。
楽しかった。おやつも 出してくれた。見たこともないお菓子だった。
かなり 時間が経った気がしたので、
時計を探したが 見えない所にあるらしい。
あるいは その子が 隠したのかもしれない。
外は 見えなかったが、「夜だ」という気がした。
玄関のドアノブを回しても、開かない。
鍵を 開けたつもりだったが、まだ他に 開かない工夫がしてあるらしい。
「家に帰らないと 怒られる」私の頭に浮かんだのは
そのことだけだった。
不思議な事に、その子の親は 待っても待っても帰ってこない。
夜遅い仕事をしているのかもしれない。
電話がないか 探したが、私には 探せなかった。
それから 長い時間が経ち、私が 泣きだしてから、
ようやくその子は ドアを開けてくれたが、
「まだ 遊んで行けばいいのに。面白いTVやるよ」と
遊び相手がいなくなる事を 残念がっていた。
暗い道を、走って走って、どこか 分る場所に出たいと
あちこち見ながら 息が切れるほど走った。
そのうちに 見慣れた場所に出て、ほっとして
歩き始めたが、なかなか家には 着かなかった。
行く時は 気がつかなかったが、けっこう遠くまで
行っていたらしい。
家に着いたら どれだけ 怒られるだろう、叩かれるだろう、と思うと
気が気でなかった。
今度は そのことが 怖くて、泣けてきた。
泣きながら 歩く私に、知らないおばさんが声を掛けてきた。
「あんた OO町の OO小学校の子じゃない?」
うなづく私を そのおばさんは 手を引いて 歩いてくれて、
他の 大人が 一杯集まった場所に行き、
「迷子の子、見つかったよ!」と 声を張り上げた。
わーっと どよめきがあがり、その後は
何が何だか わからないうちに 家に着いていた。
両親に 連絡が 行っていたようで、母が飛び出してきた。
母は いきなり 私を抱きしめたが、ただ 無言だった。
その時 父が どこにいたかは わからない。私を探しに
どこか 行きそうな場所に 行っていたのかもしれない。
家に入ってから 母が 警察に連絡をして、
「おかげさまで 見つかりました。ご心配ご迷惑かけました」と
言っていた姿を 覚えている。
何も 説明を 求められなかったし、
母も 何も 言わないので、一体何が何だか
私には 理解できなかった。
なぜ 母が 私を叱らないのか、叩かないのかが
わからなかった。
その後 その子の家には 行かなくなったが、
そのことで 学習するということも なかったので、
私は その後も 母がいない時は あちこちふらふら 歩いていた。
たまに もらえる小銭を貯めておいて、
駅前まで 何キロも 歩いて 本を買ったりした。
高い本は 買えないので、文庫本を買うのが 楽しみだった。
その本を 母が見つけて 「どこで買ったの」と聞かれ、
「お金貯めて 駅まで歩いて 本屋さんで買った」と
言ったら、「そんな事は 恥ずかしいからやめなさい!」と
叱られた。何が 恥ずかしいのか わからないので、納得が出来なくて、
その後は 母に 見つからないように 買った本を 隠すようにした。
お店で お金を払って物を買うことが なぜ恥ずかしいのか、
今でも 謎である。
母も、周囲の大人も 私に 「年齢にふさわしい振る舞い」や
「気をつけるべきこと」を 私にわかる言葉では 教えてくれなかった。
普通の子が 何となく教えられなくても 理解できることが、私にはわからなかった。
何かしてから 訳の分からない言葉で 怒鳴られたり、
叩かれたり、という事が 多かった。
子ども達には 自分の 経験を踏まえて、
「出かける時には 行き先を 家の大人にいう事」や
「O時までには 必ず帰る事」を 約束させて、その理由も 教えた。
どこまでが 「してもいい事」で、
どこからが 「危ない事」なのか、私は 言語化してもらわないと
理解できなかった。両親は さぞかし 育てにくかっただろうと
今 思う。私が 両親の帰宅まで、どこで 何をしているのか、
ほとんど把握できなかったのだから、帰宅が遅くなったあの日、
警察に 話す情報が どれだけあったのだろうか。
よく立ち寄る図書館も、買い物に行く商店街も 皆閉店していただろうし、
誰も 下校後の 私の 足取りをたどれなかったのではと思う。
たくさんの人に 心配や ご迷惑をかけた事を、今
申し訳なく思う。あの時から 40数年が過ぎた。捜索にあたってくださった
警察官の方は ご高齢か、中には 他界されたかもしれない。
感謝の気持ちと お詫びの気持ちを お伝えしたいと思う。
協力してくれた 地域の 皆さんにも。
私の 気まぐれで 大騒ぎを起こしましたが、今も無事で
生活できています。ありがとうございました。
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