夫は外食があまり好きではなかった。食べるのは大好きだが、知らない人がたくさんいる場所を好まない。順番待ちも大嫌いなので、店に入ってすぐに食べられる場所で、かつ個室でないと外食出来なかった。
多少の時間の違いはあっても、飲食店が混む時間というのはほぼ同じなので、いきなり入って個室が空いてることは稀で、出かけた先で待つなら帰るか、別な店を探す、と言う夫に従って、あちこちお店を回ったこともあった。
それでも家族と外食に出かけてもいいと言い出すようになったのは大きな変化である。そんな夫も外食に慣れてきて、ここ数年でいろんな場所で外食ができるようになった。
私と二人で出かける時は、ほぼ毎回回転寿司である。初めはかっぱ寿司オンリーだったが、違う所にも行ってみましょうよ、と誘い、スシローやはま寿司、くら寿司でも大丈夫になった。
私には自分の好みを押し通す夫も、息子達には気を遣い、希望を聞く、優しいお父さんである。夫が一番嫌うのは、フードコート形式のお店で、席の確保を自分でしなければならないのと、周囲の人の動きが多く、落ち着かないのが理由である。
しかし息子達が好むお店には、この形式のところもあり、夫も付き合ううちに、少しずつ慣れてきた。テーブルの確保やオーダーを私や息子達がして、料理を待つだけなら大丈夫になってきた。
先日のとある平日。夫と次男は共に休日だった。私も含めて、三人分の昼食を何にしようかと思っていたら、次男が丸亀製麺に行きたいと言い出した。
我が家の近くには、丸亀製麺はない。割と遠出になるし、夫がどういうかなあと思っていたら、「じゃ、そこで昼飯にするか」とあっさりOK。
小一時間車を走らせ、丸亀製麺に着いた。大混雑ではないが、結構お客がいる。夫の分のオーダーを、私がしようか、次男にさせようかと考えていたが、次男が夫にメニューの見方やオーダーの仕方をレクチャーしていたので、任せることにした。
会計だけ一緒にすれば良いな、と思ってふと振り向くと、夫の声がした。「天ぷらうどん一つ!」
言われた店員さんは戸惑いつつも、
「天ぷらは、お好きなのをトングで挟んでお皿にお取り下さい。うどんの注文、お願いします」
「じゃ、うどん一つ」
店員さん、メニューやシステムを説明しても時間がかかるだけ、と判断したのか、
「お客さん、かけうどんでよろしいですか?」
「はい」
で夫の所で渋滞しかけた流れがスムーズになり、私も次男も手助けに戻らずに済みました。夫も外食に慣れてきたし、店員さんがとっさに良い判断をしてくれたのも良かったです。以前なら、夫もあたふたし、私もそれ見て手を出して、せっかくのご飯なのに皆んな疲れてしまうような事もありました。
支払いをして、席を選んで、三人でうどんを食べました。夫は「うどん屋なのに、天ぷらうどんがないのはおかしいな」と言っていましたが、「好きなうどんに、好きな物乗せて、好きな量が食べられるのが、ここの良いところなんだよ」と言う次男の言葉に納得したようです。
「次は皆んな揃って来よう」と夫は一人出勤の長男のことを気にしていました。丸亀製麺のかけうどんに天ぷらてんこ盛り。夫も満足したようです。
出かけられるお店が増えて、家族で出かける楽しみが増えています。夫も新しいことにどんどんチャレンジしています。