知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

二つの周知の方法が同等であることを示す周囲例

2010-09-05 12:01:18 | 特許法29条2項
事件番号 平成21(行ケ)10437
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成22年08月31日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 飯村敏明

(1) 原告は,審決で周知例として挙げられた3件のうち,「蛍光体を透明樹脂に含有させる方法」と「蛍光体を透明樹脂に塗布する方法」の双方を記載した文献は1件(周知例1)しかなく,両者が適宜互換される方法であるということはできない旨主張する。

 しかし,原告の主張は,以下のとおり採用の限りでない。

 すなわち,蛍光を発する有機色素等の蛍光体を樹脂に分散させる方法は,塗布する方法とともに,樹脂に蛍光体を適用して樹脂を発光させる方法として周知慣用である点は,原告も認めるところである。
 また,甲14(周知例1)には,・・・と記載されている。同記載によれば,透光性樹脂板に蛍光物質を分散させたものと,少なくとも前面に蛍光塗料の塗膜を形成させたもの,すなわち表面に塗布したものが,同等なものとして示されているから,甲14に接した当業者は,透光性樹脂板に蛍光物質を分散させる方法と,塗布する方法は互換可能なものと認識し得ると認められる。
 さらに,周知例1の発明は,透光性樹脂から蛍光を発生させる技術である点において,引用発明と技術分野が共通する。そうすると,引用発明との相違点に係る構成は,当業者において,周知例1の発明から着想を得ることに格別の困難性はない。

 2つの方法の双方を同等なものとして記載した文献として,審決が1件のみ挙げていたからといって,それらの方法が互換可能な方法でないということはできない

 なお,周知例2には,・・・が記載されているから,少なくとも,「蛍光体を樹脂に塗布する方法」と「蛍光体を透明樹脂に分散させる方法」が示され,前者に代えて後者を採用することが記載されているといえる。

 以上によれば,引用発明,周知例1及び周知例2の発明に接した当業者が,透光性樹脂に蛍光物質を「分散させる方法」が,「塗布する方法」と互換可能であると認識し,蛍光体を樹脂に適用するに当たり,蛍光体を「塗布」したものに代えて「少なくとも一部に分散させた」「透明又は半透明」なものとすることに,格別の創意を要したものということはできない。