事件番号 平成23(行ケ)10185
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年02月08日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 滝澤孝臣
そして,本件製法と引用発明に示されたLi4Ti5O12の製造方法とは,その方法として記載されたところを比較すると,いずれも焼成によりリチウムチタン複合酸化物(Li4Ti5O12はリチウムチタン複合酸化物の一種である。)を合成した後,これを粉砕して再焼成するというものであるが,両者の工程は,製造原料(金属原子比),乾燥方法,粉砕形式,液体粉砕助剤及び粉砕メディアの点において一致し,焼成温度,焼成時間,再焼成温度,再焼成時間の点では,引用発明製法の製造条件は,本件製法の製造条件の範囲に含まれるものとなっていることが明らかである。
したがって,本件製法と引用発明製法とは,実質的に同一の製造方法であると認められるところ,製造原料が同一であって,製造方法が同一であれば,同一の物が製造されると解するのが自然であるから,引用発明においても,本願発明と同一のもの,すなわち,平均細孔直径が50ないし500Å で,かつpH値が10ないし11.2であるLi4Ti5O12が製造されると認めるのが相当である。
・・・
しかしながら,仮に,引用発明製法における各製造条件の組合せや,粉砕時のボールミルの回転数など引用発明に明記されていない条件の設定によっては,引用発明製法により製造されたLi4Ti5O12が,平均細孔直径が50ないし500Åで,かつpH値が10ないし11.2とならない場合があるとしても,本願明細書には,本願発明に係るリチウムチタン複合酸化物粒子の製造方法として本件製法が記載され,かつ,粉砕時のボールミルの回転数やメディア及び水の量とチタン酸リチウムの量との比率を調整してpH値を意識的に調整することが必要であることについては何らの記載がなく,pH値を調整するため,粉砕時のボールミルの回転数やメディア及び水の量とチタン酸リチウムの量との比率を調整することが技術常識であるともいえないから,当業者が本件製法と引用発明製法で重なり合う製造条件の範囲でリチウムチタン複合酸化物粒子を製造すれば,通常は,その平均細孔直径が50ないし500Å で,かつpH値が10ないし11.2になるものというべきである(特許法36条4項1号参照)。
実際,原告が引用発明の製造工程に準じ,本件製法と引用発明製法で重なり合う製造条件の範囲で行ったとする追試実験(甲13,14)においても,平均細孔直径が50ないし500Åで,かつpH値が10ないし11.2であるリチウムチタン複合酸化物粒子が製造されている(甲13の表Aの例B及び例C,甲14の表1の例3及び例4)。
以上によれば,引用発明は,通常,本件相違点に係る本願発明の構成を備えたものであると認めるのが相当である。
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年02月08日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 滝澤孝臣
そして,本件製法と引用発明に示されたLi4Ti5O12の製造方法とは,その方法として記載されたところを比較すると,いずれも焼成によりリチウムチタン複合酸化物(Li4Ti5O12はリチウムチタン複合酸化物の一種である。)を合成した後,これを粉砕して再焼成するというものであるが,両者の工程は,製造原料(金属原子比),乾燥方法,粉砕形式,液体粉砕助剤及び粉砕メディアの点において一致し,焼成温度,焼成時間,再焼成温度,再焼成時間の点では,引用発明製法の製造条件は,本件製法の製造条件の範囲に含まれるものとなっていることが明らかである。
したがって,本件製法と引用発明製法とは,実質的に同一の製造方法であると認められるところ,製造原料が同一であって,製造方法が同一であれば,同一の物が製造されると解するのが自然であるから,引用発明においても,本願発明と同一のもの,すなわち,平均細孔直径が50ないし500Å で,かつpH値が10ないし11.2であるLi4Ti5O12が製造されると認めるのが相当である。
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しかしながら,仮に,引用発明製法における各製造条件の組合せや,粉砕時のボールミルの回転数など引用発明に明記されていない条件の設定によっては,引用発明製法により製造されたLi4Ti5O12が,平均細孔直径が50ないし500Åで,かつpH値が10ないし11.2とならない場合があるとしても,本願明細書には,本願発明に係るリチウムチタン複合酸化物粒子の製造方法として本件製法が記載され,かつ,粉砕時のボールミルの回転数やメディア及び水の量とチタン酸リチウムの量との比率を調整してpH値を意識的に調整することが必要であることについては何らの記載がなく,pH値を調整するため,粉砕時のボールミルの回転数やメディア及び水の量とチタン酸リチウムの量との比率を調整することが技術常識であるともいえないから,当業者が本件製法と引用発明製法で重なり合う製造条件の範囲でリチウムチタン複合酸化物粒子を製造すれば,通常は,その平均細孔直径が50ないし500Å で,かつpH値が10ないし11.2になるものというべきである(特許法36条4項1号参照)。
実際,原告が引用発明の製造工程に準じ,本件製法と引用発明製法で重なり合う製造条件の範囲で行ったとする追試実験(甲13,14)においても,平均細孔直径が50ないし500Åで,かつpH値が10ないし11.2であるリチウムチタン複合酸化物粒子が製造されている(甲13の表Aの例B及び例C,甲14の表1の例3及び例4)。
以上によれば,引用発明は,通常,本件相違点に係る本願発明の構成を備えたものであると認めるのが相当である。