事件番号 平成23(行コ)10001
事件名 審査結果無効確認及びその損害賠償請求控訴事件
裁判年月日 平成24年02月07日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
裁判長裁判官 中野哲弘
2 本件見解書及び本件報告書において特許庁審査官の示した見解の適否について
(1) 事案に鑑み,本件見解書の請求項21及び22,本件報告書の請求項9~13につき特許庁審査官が示した進歩性に関する見解の法適合性について判断する。
(2) 特許庁が示した上記見解は,一審原告たる控訴人が平成18年8月18日付けでなした国際予備審査の請求についてのものであるが,上記請求に対して特許庁審査官がなすべき見解の判断基準となるのは,PCT条約33条であり,その(1)には,「国際予備審査は,請求の範囲に記載されている発明が新規性を有するもの,進歩性を有するもの(自明のものではないもの)及び産業上の利用可能性を有するものと認められるかどうかの問題についての予備的なかつ拘束力のない見解を示すことを目的とする」と規定されているから,当該発明が
○1 「新規性を有するもの」か,
○2 「進歩性を有するもの(自明でないもの)」か,
○3 「産業上の利用可能性を有するものか」がその基準となるものである。
そして本件見解書及び本件報告書において該請求項につき特許庁審査官が示した見解は,控訴人の出願した各発明は(請求項21及び22,9~13)は上記②の「進歩性を有するもの(自明でないもの)」に該当しない,というものである。
この要件は,国内出願に対して定められている特許法29条2項の「特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が前項各号に掲げる発明に基いて容易に発明をすることができたとき」と極めて類似するが,法的には同一ではない。控訴人は,本件各見解はPCT条約ではなく特許法29条2項に基づき判断されるべきである旨主張するようであるが,後に述べるとおり,採用することができない。
そこで,特許庁審査官が示した上記各見解がPCT条約33条(1)に適合するものであるかについて,以下検討する。
なお,国際予備審査請求に対する特許庁審査官の判断は,国内出願に対する別の特許庁審査官の判断とは別個独立になされるものであるから,仮に国際予備審査の対象となった国際出願と類似した内容の国内出願が控訴人により別途なされ,それについて日本国特許庁から特許査定を受け特許登録がなされたからといって,法的には別の手続である国際予備審査における特許庁審査官の見解表明が違法となるものでないことは明らかである。
・・・
カ 以上からすれば,本件国際予備審査請求における担当審査官は,本願発明9ないし13,21及び22の非自明性(PCT条約33条所定の要件)につき,当業者の立場に立って正しく検討した上で,これを否定したものといえ,その判断に誤りはない。
原審はここ
事件名 審査結果無効確認及びその損害賠償請求控訴事件
裁判年月日 平成24年02月07日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
裁判長裁判官 中野哲弘
2 本件見解書及び本件報告書において特許庁審査官の示した見解の適否について
(1) 事案に鑑み,本件見解書の請求項21及び22,本件報告書の請求項9~13につき特許庁審査官が示した進歩性に関する見解の法適合性について判断する。
(2) 特許庁が示した上記見解は,一審原告たる控訴人が平成18年8月18日付けでなした国際予備審査の請求についてのものであるが,上記請求に対して特許庁審査官がなすべき見解の判断基準となるのは,PCT条約33条であり,その(1)には,「国際予備審査は,請求の範囲に記載されている発明が新規性を有するもの,進歩性を有するもの(自明のものではないもの)及び産業上の利用可能性を有するものと認められるかどうかの問題についての予備的なかつ拘束力のない見解を示すことを目的とする」と規定されているから,当該発明が
○1 「新規性を有するもの」か,
○2 「進歩性を有するもの(自明でないもの)」か,
○3 「産業上の利用可能性を有するものか」がその基準となるものである。
そして本件見解書及び本件報告書において該請求項につき特許庁審査官が示した見解は,控訴人の出願した各発明は(請求項21及び22,9~13)は上記②の「進歩性を有するもの(自明でないもの)」に該当しない,というものである。
この要件は,国内出願に対して定められている特許法29条2項の「特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が前項各号に掲げる発明に基いて容易に発明をすることができたとき」と極めて類似するが,法的には同一ではない。控訴人は,本件各見解はPCT条約ではなく特許法29条2項に基づき判断されるべきである旨主張するようであるが,後に述べるとおり,採用することができない。
そこで,特許庁審査官が示した上記各見解がPCT条約33条(1)に適合するものであるかについて,以下検討する。
なお,国際予備審査請求に対する特許庁審査官の判断は,国内出願に対する別の特許庁審査官の判断とは別個独立になされるものであるから,仮に国際予備審査の対象となった国際出願と類似した内容の国内出願が控訴人により別途なされ,それについて日本国特許庁から特許査定を受け特許登録がなされたからといって,法的には別の手続である国際予備審査における特許庁審査官の見解表明が違法となるものでないことは明らかである。
・・・
カ 以上からすれば,本件国際予備審査請求における担当審査官は,本願発明9ないし13,21及び22の非自明性(PCT条約33条所定の要件)につき,当業者の立場に立って正しく検討した上で,これを否定したものといえ,その判断に誤りはない。
原審はここ