知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

実施可能要件の立証責任

2009-09-25 20:22:36 | 特許法36条4項
事件番号 平成20(行ケ)10423
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成21年09月17日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 中野哲弘

2 取消事由1(特許法旧36条4項及び6項2号該当性判断の誤りについて)
(1) 平成14年3月12日になされた本願に適用される特許法旧36条は,特許出願につき,その第1項で「特許を受けようとする者は,次に掲げる事項を記載した願書を特許庁長官に提出しなければならない・・・」とし,その第2項で「願書には,明細書,必要な図面及び要約書を添付しなければならない」とし,その第3項で「前項の明細書には,次に掲げる事項を記載しなければならない。①発明の名称②図面の簡単な説明③発明の詳細な説明④特許請求の範囲」とし,その第4項で「前項第3号の発明の詳細な説明は,経済産業省令で定めるところにより,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に,記載しなければならない」と定めている。

 上記第4項は特許出願における実施可能要件と称されているものであるが,特許制度は,発明を公開する代償として,一定期間発明者に当該発明の実施につき独占的権利を付与するものであるから,明細書に記載される発明の詳細な説明は,当業者(その発明の属する分野における通常の知識を有する者)が容易にその実施をすることができる程度に発明の構成が記載されていることを要するとしたものであるところ,上記のような法の趣旨に鑑みると,明細書の発明の詳細な説明の欄に当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていること,ひいては当該発明が実施可能であることは,出願人が特許庁長官に対し立証する責任があると解される