知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

未承認国の著作物の我が国の著作権法による保護の可否

2007-12-22 21:53:57 | Weblog
事件番号 平成18(ワ)6062
事件名 著作権侵害差止等請求事件
裁判年月日 平成19年12月14日
裁判所名 東京地方裁判所
権利種別 著作権
裁判長裁判官 阿部正幸


『2 争点(2)(北朝鮮の著作物の我が国の著作権法による保護の可否)について
(1) 原告輸出入社の差止請求については,外国である北朝鮮の著作物の著作権に基づく請求であるという点で,渉外的要素を含むものであるから,準拠法を決定する必要がある。著作権に基づく差止請求は,ベルヌ条約5条(2)により,保護が要求される同盟国の法令の定めるところによることとなり,我が国の著作権法が適用される。

 また,原告らの損害賠償請求については,被侵害利益が北朝鮮の著作物の著作権ないしその利用許諾権であるという点で,いずれも渉外的要素を含むものであるため,準拠法を決定する必要がある。上記法律関係の性質は不法行為であるから,準拠法については,法例11条1項(法適用通則法附則3条4項により,なお従前の例によるとして,法例の規定が適用される。)によって決すべきである
 そして,同条項にいう「原因タル事実ノ発生シタル地」は,原告らに対する権利侵害という結果が生じたと主張されている我が国であるというべきであるから,本件における損害賠償請求については,民法709条が適用される。』


『(2) 著作権法6条は,同法の保護を受ける著作物は,日本国民(我が国の法令に基づいて設立された法人及び国内に主たる事務所を有する法人を含む。)の著作物(同条1号),最初に日本国内において発行された著作物(最初に国外において発行されたが,その発行の日から30日以内に国内において発行されたものを含む。同条2号)及び前2号に掲げるもののほか,条約により我が国が保護の義務を負う著作物(同条3号)に限る,と規定している。
 本件各映画著作物については,同法6条1号,2号に該当するとの主張,立証はなく,原告らは,同条3号の「条約によりわが国が保護の義務を負う著作物」に当たると主張している

 すなわち,原告らの主張は,ベルヌ条約3条(1)(a)が,いずれかの同盟国の国民である著作者の著作物は,この条約によって保護される旨を規定しており,北朝鮮がベルヌ条約に加入したことにより,既に同条約に加入している我が国との間にベルヌ条約上の権利義務関係が生じ,北朝鮮は我が国にとってベルヌ条約の同盟国と認められるから,本件各映画著作物は,著作権法6条3号にいう「条約によりわが国が保護の義務を負う著作物」に当たる,というものである。

 これに対し,被告は我が国が,北朝鮮を国家として承認していないから,我が国と北朝鮮との間でベルヌ条約上の権利義務関係は生じず,我が国は,ベルヌ条約上,北朝鮮の著作物を保護する義務を負わないとして,原告らの前記主張を争っている。

 そこで,本件各映画著作物が著作権法6条3号の「条約によりわが国が保護の義務を負う著作物」に当たるか否かの解釈問題として,我が国が国家として承認していない北朝鮮がベルヌ条約に加入したことにより,我が国と北朝鮮との間でベルヌ条約上の権利義務関係が生じるか否かが問題となる(この点は,著作権に基づく差止請求のみならず,著作権等を被侵害利益とする損害賠償請求においても問題となる。)。 』

『(4) 我が国の著作権法による保護の可否について
ア 北朝鮮の著作物である本件各映画著作物が,我が国の著作権法による保護を受けることができるか否かは,・・・,我が国が未承認国である北朝鮮に対してベルヌ条約上の義務を負担するか否かの問題に帰着する。

 そこで,この点についてみると,現在の国際法秩序の下では,国は,国家として承認されることにより,承認をした国家との関係において,国際法上の主体である国家,すなわち国際法上の権利義務が直接帰属する国家と認められる。
 逆に,国家として承認されていない国は,国際法上一定の権利を有することは否定されないものの,承認をしない国家との間においては,国際法上の主体である国家間の権利義務関係は認められないものと解される。

 この理を多数国間条約における未承認国の加入の問題に及ぼすならば,未承認国は,国家間の権利義務を定める多数国間条約に加入したとしても,・・・,原則として,当該条約に基づく権利義務を有しないと解すべきことになる。・・・

 我が国は,北朝鮮を国家として承認しておらず,我が国と北朝鮮との間に国際法上の主体である国家間の権利義務関係が存在することを認めていない。したがって,北朝鮮が国家間の権利義務を定める多数国間条約に加入したとしても,我が国と北朝鮮との間に当該条約に基づく権利義務関係は基本的に生じないから,多数国間条約であるベルヌ条約についても,同様に解することになる

イ もっとも,未承認国であっても,国際社会において実体として存在していることは否定されないから,国際法上の主体である国家間の権利義務関係が認められないからといって,未承認国との関係において条約上の条項が一切適用されないと解することが妥当でない場合があり得る。
 ・・・
 もとより,多数国間条約の条項のなかには,ジェノサイド条約(「集団殺害罪の防止及び処罰に関する条約」)における集団殺害の防止(1条)や拷問等禁止条約(「拷問及び他の残虐な,非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約」)における拷問の防止(2条)のように,条約当事国間の単なる便益の相互互換の範疇を超えて,普遍的な国際公益の実現を目的としたものが存在する。このように,条約上の条項が個々の国家の便益を超えて国際社会全体に対する義務を定めている場合には,例外的に,未承認国との間でも,その適用が認められると解される
 ・・・

ウ 原告らは,著作権の保護が普遍的な価値を有する命題であると主張する。
 そこで,著作物の保護義務を定めるベルヌ条約3条(1)(a)の条項が国際社会全体に対する権利義務に関する事項を規定するものと解し得るか,すなわち,著作権の保護(直接的には,いずれかの同盟国の国民である著作者の著作物の保護という形態)が国際社会全体における普遍的な価値を有しているかについて検討する。

 この点について,世界人権宣言は,27条2項によって,「すべて人は,その創作した科学的,文学的又は美術的作品から生ずる精神的及び物質的利益を保護される権利を有する。」と定め,著作権を国際的に保護されるべき人権の一つとして定めている
 また,ベルヌ条約は,著作権に対する国際的な保護を図るという目的を有し,その加入に何らの要件の具備も要しない開放条約であり(29条),加盟国の数は,平成19年8月末の時点で163か国に上り,多くの国が,内国民待遇の原則(5条(1))に基づき,著作物の保護に関して自国民と同様の待遇を外国人に与えている

 これらの点によれば,著作権が国際社会において保護されるべき重要な価値を有していることは明らかである

 しかしながら,ベルヌ条約自体においても,同盟国の国民を著作者とする著作物(3条(1)(a)),非同盟国の国民を著作者とする著作物のうち,同盟国において最初に発行されるか,同盟に属しない国と同盟国において同時に発行された著作物(3条(1)(b))等が保護されるにとどまっており,非同盟国の国民の著作物が普遍的に保護されているわけではない
 非同盟国の国民の著作物であっても,最初の発行地が同盟国であれば保護されるとされているものの,これは,同盟国において,最初あるいは同時の発行を促すことによって,著作物の普及を促進するとともに,これに伴う経済的な利益を獲得することを企図したものである。そこでは,同盟国という国家の枠組みが前提とされており,前国家的な非同盟国の著作者の自然権を保護するという発想は見られない

 また,同条約の他の条項においても,「・・・。」(14条の2(2)(a)),「・・・。」(7条(8))などと規定して,著作権の主体や保護期間等について,保護を行う国によって異なり得ることを許容するとともに,5条(2)において,著作権の保護の範囲及び著作権を保全するために著作者に保障される救済の方法を,保護が要求される同盟国の法令の定めるところに委ね,その保護の範囲及び方法が国によって異なる事態を想定している。さらに,35条(2)は,同盟国がベルヌ条約を廃棄することができる旨を規定し,廃棄により,条約上の権利義務関係から離脱することをも認めているところである。

 以上によれば,著作権の保護は,国際社会において,擁護されるべき重要な価値を有しており,我が国も,可能な限り著作権を保護すべきであるということはできるものの,ベルヌ条約の解釈上,国際社会全体において,国家の枠組みを超えた普遍的に尊重される価値を有するものとして位置付けることは困難であるものというほかない

 したがって,ベルヌ条約3条(1)(a)の条項は,国際社会全体に対する権利義務に関する事項を規定するものと解することができず,北朝鮮との関係で同条項の適用は認められないから,結局,我が国は,同条項に基づき北朝鮮の著作物を保護する義務を負わない。』

『エ 原告らは,TRIPS協定が台湾に発効したことにより台湾の著作物が我が国において保護される旨の文化庁の見解は,同じ未承認国である北朝鮮の著作物に関する同庁の見解と明らかに齟齬しており,未承認国である台湾の著作物を保護するのであれば,北朝鮮の著作物も保護すべきである旨主張する

 しかしながら,WTO協定は,12条1項において,「すべての国又は対外通商関係その他この協定及び多角的貿易協定に規定する事項の処理について完全な自治権を有する独立の関税地域は,自己と世界貿易機関との間において合意した条件によりこの協定に加入することができる。」とし,また,16条の「注釈」において,「この協定及び多角的貿易協定において用いられる「国」には,世界貿易機関の加盟国である独立の関税地域を含む。この協定及び多角的貿易協定において「国」を含む表現(例えば,「国内制度」,「内国民待遇」)は,世界貿易機関の加盟国である独立の関税地域については,別段の定めがある場合を除くほか,当該関税地域に係るものとして読むものとする。」と規定しており,主権国家のみならず独立の関税地域もWTO協定に加入することができ,同協定の加盟国となり得ることを前提としている。

 また,WTO協定の規定を受けて,同協定の一部であるTRIPS協定1条の脚注1も,「この協定において,「国民」とは,世界貿易機関の加盟国である独立の関税地域については,当該関税地域に住所を有しているか,又は現実かつ真正の工業上若しくは商業上の営業所を有する自然人又は法人をいう。」と定めている。

 これらの規定によれば,WTO協定及びTRIPS協定が,国家として承認されていないものでも,一定の要件の下で「独立の関税地域」として加入することができる旨定めていることは明らかである。前記2(3)エ(ア)によれば,台湾については,これらの規定にいう「独立の関税地域」として,WTO協定に加入したものであると認められる。そして,TRIPS協定9条1項は,「加盟国は,1971年のベルヌ条約の第1条から第21条まで及び附属書の規定を遵守する。」と定めていることから,「独立の関税地域」である台湾と我が国との間でTRIPS協定に基づく著作権の保護関係が生じたものであるということができる。これに対し,北朝鮮は,WTO協定に加入していないことから,我が国との間でTRIPS協定に基づく著作権の保護関係は生じていない。

 以上のとおりであるから,我が国が未承認国である台湾の著作物を保護するからといって,当然に北朝鮮の著作物も保護すべきであるということはできず,この点についての文化庁の見解に齟齬があるとはいえない。原告らの上記主張は失当である。

 また,原告らは,52年最高裁判決の法理によれば,北朝鮮の著作物もベルヌ条約により保護されるべきであると主張する。しかしながら,52年最高裁判決は,相互主義を定めた旧特許法32条の「其ノ者ノ属スル国」に未承認国であるドイツ民主共和国(東ドイツ)も含まれると判示したものにすぎず,我が国と未承認国との間に条約上の権利義務関係が生じるかという問題について判断を示したものではないから,本件とは事案を異にし,原告らの主張の根拠となるものとはいえない。
 原告らは,その主張の根拠として,北朝鮮著作権法において,同国が加入した条約の加盟国の著作権を保護する旨を規定し,北朝鮮文化省が日本の著作物を保護するとの意思表明をしていること,北朝鮮の著作物が我が国において保護されないということになると,北朝鮮において我が国の著作物が保護されないといった事態が生じ得ることを挙げる
 しかしながら,原告らの主張する上記の諸事情は,我が国政府の外交政策上の判断の考慮事情のひとつとなり得るかどうかはともかく,裁判所が,著作権法の解釈問題として,既に(4)アで述べた国家承認についての基本的な考え方と異なり,北朝鮮の多数国間条約への加入により,未承認国である北朝鮮に対し我が国が条約上の義務を負うことになるとの解釈を採用する根拠とはなり得ないというべきである。

・・・

原告らの上記主張は,いずれも採用することができない。

オ甲第20号証(鑑定意見書)中には,我が国と北朝鮮との間にベルヌ条約上の権利義務関係が生じていると解すべき根拠として,特定の既存国家が特定の加盟国を国家として承認していないからといって,その加盟国が国家ではないとの理由で,決議に必要な表決数からその加盟国を除外したり,条約発効に必要な批准,加入書の数から除外したりすることが不可能となっているという国際社会の現状を挙げる部分がある。

確かに,条約上の条項が上記のような条約上の組織等に関する事項である場合には,未承認国との関係でもその適用を認めるのが相当である
 しかし,それは,上記のような条約上の組織等に関する事項を,国家承認の有無という個別の事情によって左右されるものとすると,条約に基づく意思決定等が困難になることによるものであるということができる。本件において,著作物の保護義務を定めるベルヌ条約3条(1)(a)の条項が,このような条約上の組織等に関する事項に当たらないことは明らかである。
甲第20号証中の上記記載部分は,本件における原告らの主張を根拠付けるものとはいえない。

カ なお,北朝鮮の著作物について,非同盟国の国民の著作物として,いずれかの同盟国において最初に発行されたものである場合(ベルヌ条約3条(1)(b))等に,我が国がベルヌ条約上保護の義務を負う場合はあり得るものの,原告らにおいて,この点についての主張,立証はない

(5) 以上のとおりであるから,我が国は,北朝鮮との間でベルヌ条約上の権利義務関係を有するものではなく,北朝鮮に対し,ベルヌ条約3条(1)(a)に基づく義務を負うことはない。したがって,本件各映画著作物は,著作権法6条3号の「条約により我が国が保護の義務を負う著作物」とはいえないから,本件の差止請求及び損害賠償請求は,その前提を欠くことになる。』

外国の団体の我が国の民事訴訟における当事者能力

2007-12-22 20:43:05 | Weblog
事件番号 平成18(ワ)6062
事件名 著作権侵害差止等請求事件
裁判年月日 平成19年12月14日
裁判所名 東京地方裁判所
権利種別 著作権
裁判長裁判官 阿部正幸

『1 争点(1)(原告輸出入社の当事者能力の有無)について
(1) 前記第2の1(1)に記載したとおり,原告輸出入社は,北朝鮮の行政機関である。このような外国の団体が我が国の民事訴訟において当事者能力を有するか否かは,国際民事訴訟法上の問題であるから,どの国の法が適用されるかを決定する必要がある

 当事者能力とは,民事訴訟において訴訟関係の主体である当事者となることのできる一般的な資格をいい,訴訟法(手続法)上の概念である。そして,手続については法廷地法によるべきであるから,手続法上の概念である当事者能力については,法廷地である我が国の民事訴訟法が適用されると解するのが相当である。
 そして,民事訴訟法28条によれば,当事者能力は民法その他の法令に従うとされているので,当事者能力の有無は,権利能力に関する民法その他の実体法の規定に基づいて判断される。

 もっとも,前記のとおり,原告輸出入社は,北朝鮮の行政機関であり,本件における権利能力の問題は,その主体が外国の行政機関であるという点で渉外的要素を持つため,準拠法を決定する必要がある。
 この点,行政機関の権利能力の準拠法に関しては,法の適用に関する通則法(以下「法適用通則法」という。)等に直接の定めがないから,条理に基づいて,当該行政機関と最も密接な関係がある国である当該行政機関が設立された国の法律(本国法)によると解すべきである
 国内のいかなる範囲の団体に権利能力を付与するかは,当該国の法政策上の問題であり,また,団体が享有し得る権利能力も当該国の法律の定める範囲に限定される以上,当該団体と最も密接な関係があるのは,当該団体が設立された国と解されるからである

 したがって,行政機関の権利能力の準拠法は,原告輸出入社が設立された北朝鮮の法律であると解すべきである。

 そこで,本件について検討すると,上記争いのない事実等及び証拠(甲1の1)によれば,北朝鮮の国内において施行,適用されている北朝鮮民法12条2項は,「機関,企業所,団体は,当該機関に登録されたときから民事上の権利を有し,又は義務を負うことができる民事権利能力とそれ自身が直接実現することができる民事行為能力を有する。」と規定していること,ここにいう「機関」とは,国家行政機関を意味すること,原告輸出入社は,北朝鮮の国家行政機関である文化省によって登録された同省傘下の行政機関であること,がそれぞれ認められる。

 上に認定した事実によれば,原告輸出入社は,北朝鮮民法12条2項の登録がされた北朝鮮文化省傘下の行政機関に当たるから,同条項により権利能力を有していると認められる。

 以上によれば,原告輸出入社は,準拠法である北朝鮮の法律によって権利能力を付与されているから,民事訴訟法28条により当事者能力を有するというべきである。

(2) 被告は,当事者能力が認められるのは,本国法上権利能力を有しているだけでは足りず,我が国でも権利能力が認められることが必要であり,我が国では行政機関に権利能力が認められていないから,北朝鮮の行政機関である原告輸出入社には権利能力が認められず,当事者能力も認められないと主張する。

 しかしながら,民事訴訟法28条は,本国法上権利能力を有する者に当事者能力を認めることとしていると解すべきことは前記のとおりであり,同条の解釈として,当事者能力が認められるためには更に我が国の法令上も権利能力が認められることを必要とすると解することはできない。

 被告は,本国法で訴訟能力が付与された者であっても,我が国の訴訟手続の規制等に服し得る実態を有しているとは限らないため,訴訟手続に混乱をきたすことになりかねないと主張する。
 しかしながら,上記のような問題点は,民事訴訟法28条の解釈としてではなく,個別の事案において,法適用通則法42条の公序良俗違反の解釈の問題として解決されるべきものであると考えられる。
 そして,我が国においても,平成16年法律第84号による改正前の行政事件訴訟法11条1項は,処分等取消しの訴えについて行政庁が被告適格を有するとして,その限度で当事者能力を認めていたのであり,また,個別の法律においても同様に行政庁の被告適格を認めている場合がある(特許法178条1項,179条等)。加えて,証拠(甲1の2,3)によれば,原告輸出入社は,「映画輸出及び輸入,映画合作及び注文製作,技術協力」に関する権限を有し,北朝鮮映画の著作権等を行使する国家映画会社であるとされていることが認められるのであり行政機関とはされているものの,その実質は,むしろ,我が国における私法人に近いということができる。

 そうであれば,原告輸出入社が,行政機関であることをもって,我が国の訴訟手続の規制等に服し得る実態を有していないとはいえず,訴訟手続に混乱をきたすともいえないから,原告輸出入社に当事者能力を認めたとしても,公序良俗に反するということはできない。被告の上記主張は採用することができない。

(3) 以上のとおり,原告輸出入社は,その本国法である北朝鮮の法律によって権利能力が付与されているから,民事訴訟法28条により,当事者能力を有する。』