知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

不正競争防止法1条1項1,2号の営業表示の類否の判断事例

2007-12-10 07:01:50 | Weblog
事件番号 平成19(ネ)2261
事件名 不正競争行為差止等請求控訴事件
裁判年月日 平成19年12月04日
裁判所名 大阪高等裁判所
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 若林諒


『第3 当裁判所の判断
1 争点1(被控訴人表示は控訴人表示に類似するか)について
 当裁判所も被控訴人表示が控訴人表示に類似するとは認められず,被控訴人による被控訴人表示の使用が不競法2条1項2号又は1号の不正競争に当たらないと判断する。その理由は,原判決「事実及び理由」第4・1記載のとおりであるからこれを引用する。
 控訴人は,控訴人・被控訴人表示は「食堂」の文字を共に有し,表示が白地の上に表記されている点で共通するし,また,控訴人表示の「ごはんや」の文字と被控訴人表示の「めしや」の文字は同じ意味であり,両表示は類似すると主張する

 しかるに,ある営業表示が不正競争防止法1条1項1,2号にいう他人の営業表示と類似のものか否かを判断するに当たっては,取引の実情のもとにおいて,取引者,需要者が,両者の外観,称呼又は観念に基づく印象,記憶,連想等から両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるか否かを基準として判断するのを相当とするところ(最高裁昭和58年10月7日第2小法廷判決・民集37巻8号1082頁参照),
 上記引用に係る原判決の認定・説示のとおり,控訴人表示は「ごはんやまいどおおきに(しょくどう)○○しょくどう」との称呼を生じ,そのうち控訴人店舗のロゴとして使用・表示されている「まいどおおきに食堂」の部分が控訴人の営業表示としての高い識別性を有し,控訴人表示は一連に称呼するにしては冗長であり前半の「まいどおおきに(しょくどう)」との称呼も生じさせるものであること,
 被控訴人表示は「めしやしょくどう」との称呼を生じさせるところ,被控訴人の複数の「めしや」ブランドの店舗が相当数存在することから「めしや」との称呼も生じさせるものであること,双方の表示に共通する「食堂」は,役務提供の場所,役務提供の用に供する物を普通に用いられる方法で表示するものにすぎず,特定の営業主体を表示する識別標識とはいえないこと等からすれば,控訴人表示については「まいどおおきに」,被控訴人表示については「めしや」の部分に営業主体の識別力が存在すると認められ,その相違の程度からすると,
 「ごはんやまいどおおきに(食堂)○○食堂」ないし「まいどおおきに(食堂)」と,「めしや食堂」ないし「めしや」とは,外観,称呼及び観念が類似するとは認められず,その相違の程度は,双方の表示が「食堂」との文字を有する点,白地の上に表記されている点,「ごはんや」と「めしや」の表記の意味するところが同じである点などが共通することをもっても,とりわけ外観,称呼においてなお大きく,被控訴人表示は控訴人表示に類似するとは認められない。』