知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

進歩性の判断における動機付け

2006-09-02 23:13:13 | 特許法29条2項
事件番号 平成17(行ケ)10677
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成18年08月31日
裁判所名 知的財産高等裁判所
裁判長裁判官 三村量一

(注目判示)
『アドレス・レジスタの最下位の2ビットの値が所定の値となったことで自らニブル・モードでのアクセスを終了する構成を採用した引用発明は,ニブル・モード・アクセス方式におけるアクセス単位の制約を前提とした上で,ニブル・モードによるアクセスと通常モードによるアクセスの両方に対応可能とすることを発明の目的とするものであるから,一般にメモリへの高速アクセス方式としてニブル・モードアクセス方式とページ・モード・アクセス方式が知られていることや,ページ・モード・アクセス方式の方が古い技術であることが知られているというだけでは,引用発明に接した当業者が,そこで採用されている特定のニブル・モード・アクセス方式を,具体的な前提を離れてページモードに変更することの契機にはならない。
上記によれば,引用発明に接した当業者が,そこで採用されている特定のニブル・モード・アクセス方式をページ・モードに変更し,本願発明の相違点2に係る構成に至ることが容易であるとはいえない。したがって,相違点2についての審決の判断も,また誤りというべきである。』

(コメント)
 -B-が知られていることだけを持って、-A-を前提とする引用発明においてその前提を離れて-A-を-B-に変更することの契機になる、ということはできない、と判示している。引用発明の前提はそれだけ重要である。