徒然なか話

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市川崑監督 幻の名作

2020-05-18 18:59:51 | 映画
 行定勲監督が自身のフェイスブックに「菊池映画祭2016」における中井貴一さんとのティーチインの映像をアップされた。その時上映された市川崑監督の名作「その木戸を通って」に関連して、主演の中井貴一さんから市川監督の人となりや美的感覚、映像表現などについて貴重な証言があり興味深かった。僕は学生時代、市川崑監督の「東京オリンピック」の追加撮影にエキストラ参加した経験があり、当時のことを思い出しながら、なるほどと思うことが多かった。
 この「その木戸を通って」については11年前にその感想をブログに書いており、一部再編集して再掲してみた。

 市川崑監督(2008年没)の幻の名作と言われる「その木戸を通って」をやっとDVDで観ることができた。何しろ16年も前にハイビジョンで撮影され、BSで1回放映されたきりだったらしいが、昨年11月、初めて劇場公開されたものだが、熊本では劇場公開されなかったようだ。2002年に山田洋次監督の「たそがれ清兵衛」を観た時、それまでに観た時代劇にはない新しさを感じたものだが、その約10年も前に、既にこんな時代劇を作っていた市川崑の凄さをあらためて感じた。原作は山本周五郎の短編小説。時代劇と言ってもチャンバラがあるわけでもなく、ある城勤めの武士と一人の女とのミステリアスな出逢いと別れを淡々と描いている。しかし、その格調高い叙情性と映像美には引きずり込まれてしまう。基本的には、この作品の5年ほど前に市川監督が作った「つる -鶴-」と同じ、男の永遠の願望である「鶴女房」型の物語だと思う。


映画「その木戸を通って」の中井貴一と浅野ゆう子