食道楽は国境をこえて。

フランス・パリでの生活
おいしいものと、楽しいことに囲まれて…

Habitue 常連さん

2011年12月01日 | ちょっとした事・話
今回はちょっと、私の頭の中の事を。



私は、パティスリー(お菓子屋さん)に勤めているけれど。

パンも置いていて。



フランスの“パン”は、日本の“ご飯”と同じ立場。

だから、“常連さん”の中には、日本人がご飯を炊くのと同じ頻度でいらっしゃる方達も。


毎日いらっしゃる方。

2、3日に1回いらっしゃって、まとめ買いして冷凍する方もいれば、

朝ご飯用のヴィエノワズリーを買いにきて、お昼に、パンかケーキを買いにきて、夜は夜用のパンを買いにきて、なんて方も。



だから、日本のお菓子屋さんよりも、密着した関係が多い。

おしゃべり好きな人達が多いのも理由の1つかもね。



で、

あるご家族のお話。


私がここで働き始めて、2年半。

週に、5日 +α。

ママと一緒に来ていた3歳の女の子。

(毎回パンの購入に、“+α”は、ご自宅にお客様をお招きしてのパーティーの時に、予約して下さるケーキ購入)

去年の春から半年間、ビザの関係で働けなかった私。

復職した去年の秋、再開した女の子は、毎日、同じ帽子をかぶっていた。

オシャレなママで、いつも、(良い意味で)着せ替え人形のように、ステキなお洋服なのに。



私がいない間に、癌が発症したって聞いたのは、ちょうど、去年の今頃。

バゲットと一緒に、クリスマスモチーフのビターチョコを買うのが日課だった。



クリスマスが終わっても、私達は、このビターチョコを彼女の為に用意していた。


1月の半ば、

彼女のパパが、

『娘がいつも買っているチョコが欲しいんだけど』

と、やってきた。

いつも、ママと来ていた女の子。

はじめ、私は、彼女とパパが結びつかなくて…。

マダムに聞いて、初めて、彼があの子のパパなんだと知った。


それから、女の子も、ママも、パパも。

見なくなってしまった。


しばらくして、

女の子が、1月の終わりに亡くなった事を知った。


4月の復活祭に、久しぶりに、ママがいらっしゃって。

復活祭の卵を1つだけ、買っていかれた。


美人で、活発なフランス人マダムが、痩せこけて、お顔が真っ青だった。


『ボンジュール サヴァ? こんにちは、お元気?』

が、常連さんとの最初の会話。

でも、その時は、“サヴァ お元気?”なんて、とても聞けなかった。


夏のバカンスが終わって。

ママが、時々、お店に来て下さるようになった。

顔色は、少し、戻っていた。


最近は、週に1回位、いらっしゃるようになった。


でも、私は、まだ言葉にできない。

“サヴァ?” という一言。


今年もまた、クリスマス用のビターチョコレートを用意した。

去年と同じ。

でも、女の子は来ない。

この季節になると、どうしても、彼女の事を思い出してしまう。


ママは、以前と同じように笑顔を見せてくれるようになった。

世間話もするようになって。

ご自宅でのお招きパーティーも、再開されたみたい。


私は、考え過ぎなのか?

“サヴァ?” は、いつから言えるようになるのか…。




って、12月の初めに、こんな話で申し訳ない

ずっと、心に引っかかっていて。


次回からは、通常更新を