のら猫の三文小説

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新しい子猫たち No.574

2015-09-27 10:56:27 | 新しい子猫たち 

敷地内の長老たちは俊治がなんとか普通の人間に戻っていた事を喜んでいた。それに別の女性と結婚して子供も孫までいるらしい。なんといっても神香の子供の一人の父親は俊治だったのだ。

ただ、一人、涙ぐんでいた、女性がいた。お地蔵さんのコレクターとして世界的に知られていた、真理だった。

元々 真理がお地蔵さんを集めだしたのは、真理はもう百年以上前になるが、ある格好だけの金持ちの男の子供を身ごもった。

その男は、ある大物財界人の娘の婿になる事がきまり、真理はいやいやながら、中絶させられていた。真理が勝に会う、大分前の話だった。

勝はちゃんと話を聞いていて、たとえ、子供がいたとしても僕の気持ちは変わらなかったといってはくれたが、真理が社会的にも有名になり、華やかな治部一族の一員とみられていくのに、反して、心の中で中絶してしまった子供の事が気になっていった。

その謝罪の思いでお地蔵さんを集めだし、子供の命は貴方のものではないと云う運動に資金を少しつづ提供していった。

それが香奈が知り、その運動を手伝い、恵も手伝っていった。敷地内でも何人かこの運動を手助けしていき、香奈の父親が知り、ちゃんとした財団に、ゼニの手助けは、洋之助がするようになった。

今は恵が統率している財団の前身はそうしてできていた。

いわば真理の涙と後悔が、財団を大きくしていったのだった。香奈がジブトラストとして応援するようになったのもこうした事情があったのだった。

真理はどんな人も立ち直る時がくる、私が殺したあの子も世の中のためになっていたかもしれないと、涙ぐんでいた。

お地蔵さんたちは、あの子はもうとっくに許しているよ。あの子は、結果として、何人の子供を、この世に出したのかもしれないと言ってくれたが、真理の心は晴れなかった。



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