2020年のライブ・エンターテイメント市場の規模が前年の8割減となり
2度目の緊急事態宣言発令を受けて、今年1月12日に音楽業界4団体が共同声明を発表
これに関して、甲斐よしひろ・甲斐バンドの関東圏イベンター「ディスクガレージ」代表であり
一般社団法人コンサートプロモーターズ協会会長の中西健夫さんが
インタビューに応えていらしたんですけど
去年の3月に、日本音楽事業者協会、日本音楽制作者連盟と連名で
「エンターテイメントを愛する皆さんへ」と題した声明文
…「開催に向け実施可能な感染防止対策を行い
共に楽しいエンターテイメント空間を描けることを心より願っています」といった内容…を
出されてから1年、当該4団体会員社による
ライブイベント会場からの感染者発生は認められないにも関わらず
音楽業界を取り巻く状況に大きな変化は見られないみたいです(汗)
例えば、去年の声明発表の動機について…
「ライブをやることの是非には色んな意見があって当然
ただ、決行した椎名林檎さんらがあんなに叩かれたのは心が痛い
我々の思いはどこかで伝えないと…と何度も何度も皆で話し合った
エンターテイメント業界ならではの思いを伝えたかった」…と説明なさっていたんですが
今回も「前回の緊急事態宣言以降、ライブをやった人たちが叩かれるというケースが多く見受けられた
しっかりとガイドラインに沿って則ってやっているのに、全てが悪く言われてしまう
特に、アーティスト個人に強い批判が向けられる
ライブを開催すれば批判され、開催しなければ経済的な問題に直面する
苦渋の思いで開催という道を選んでいる彼らの立場を判って欲しい
彼らの精神的負担を少しでも軽くしたいと声明を出した」そうですし
その「経済的な問題」にしても、前回話されていた…
「音響や照明スタッフからアルバイト、ケータリング、作ってしまったグッズはどうするか?
2千人規模の会場のツアー20公演が直前に全て中止になると
製作済みのステージセットや、スタッフ・メンバーのギャラ補償で約5千万円
既に作ったグッズが約3千万円、その他宣伝費などを入れると、計1億円近くかかります
これを誰が払うのか?フリーランスが非常に多い業界ですし
個人事務所だと本当に厳しいと思います
ライブハウスの場合は、音楽好きという思いの強い経営者が多く、そもそもギリギリでやっています
自前でやっている地方都市の小さなライブハウスは厳しい
みんなヤバイ、としか言いようがありません」…という状況は改善されていないらしく(汗)
「ライブがなくなるというのは大変なことなんです
ライブがなくなれば多くの損失が発生する
売れているアーティストは全体の一握り…
極端なところでは働く人の雇用も失われる
こういう状況でライブをやると、ナンでこんな時に中止しないんだと厳しく言われる
我々は、たまたま目立つ場所にいるので批判されやすいのかも知れない
でも、みんな生きてるんですよ。この業界に身を置くことで食いつなぐことが出来ている
ライブ産業は、舞台に立つ人だけじゃなく
そこに従事している方々の生活も支えていることをちょっと思いやって欲しい」と訴えておられます
ただ「感染症は興行中止保険の対象外なので、今回は全てが損害
誰かに請求できることは一つもない」という点に関しては
「緊急事態宣言下で、中止になったイベントで発生した経費を支援するという方針が
経産省から示された」ものの「緊急事態宣言下のライブで問題になって来るのは2つ」と中西さん
「1つは、完全に中止したイベントに対して発生する経費
もう1つは、開催した場合のキャンセル料
この宣言下なので、行きたくないという方はおられる。それは個人の判断なので致し方ない
でも、例えば、100%売れていたものが、30%キャンセルされたとすると
開催しても、採算的には成り立たないケースが発生する
元々、人数制限がかかっている上で、更にキャンセルが発生し
そこに払い戻しの手数料も加わる訳で、なかなかツライものがある
やるのも地獄、やらぬも地獄」と、おっしゃっていて
奥さんは、甲斐さんが、去年のビルボードツアーをガイドラインに沿って
収容人数を減らし開催することを決められた時に
会場使用料の見直しがなければ、採算が取れないんじゃないか?と心配していたけど
まんざら的はずれでもなかったのかなあと…?
まあ、新国技館のこけら落としライブは、2日目を追加しないと大赤字になるってくらい
興行的には厳しいライブだったようですし(汗)
照和ライブも最終的な収支をご覧になったスタッフの方が
甲斐さんのギャラの金額に大笑いなさったみたいですし
「ライブをやりたい」という強いお気持ちはもちろん
「みんなが喜んでくれるなら」という「心意気」で臨まれたんじゃないかと…?
でも、以前に甲斐さんは「『音楽は文化だ!』とか、よく言うけど違うよ
『音楽は経済!(笑)』」とおっしゃってましたよね?(笑)
それはともかく…
「満足にライブやフェスが開催できないことによる音楽文化への懸念は?」との質問に
「海外アーティストが来られないという状況は
世界規模の問題なので、そもそもどうにもならない
国内では、ネット発でヒットしたアーティストも増えているが、それとは対照的な…
例えば、ライブハウスでゴリゴリやっているようなロックバンドは、一番苦しいところにいると思う
配信ライブも普及しているが、スマホ越しよりも、会場で観たいと思わせるバンドは多いから…
コロナで厳しい状況は、もう1年くらい続く可能性があると見ている
そうすれば、この2年間で成長して行くはずだった才能が埋もれてしまう可能性だってある
こんな時代で音楽やってる場合じゃないと、音楽の道を諦める人もいるかも知れない
これは、業界にとっての機会損失に繋がることだと危惧している」とお答えになってますが
奥さんは、かつて甲斐バンドが、レコードセールスよりも
「ライブを強みとするアーティスト」だった頃に、現在のような状況が訪れていたら…
と想像したらしく「他人事じゃなかったかも…」とドキッとしたそうです(苦笑)
ただ、その「『ライブを強みとするアーティスト』にとって、どんなステージにするか?が
大きなテーマになるのでは?」という質問に
中西さんが「大変な状況で来てくれるお客様に対して
普段以上に満足して頂かないといけないという気迫を感じるライブが増えた気がする
今は、ライブに来られた方の感情表現が全て拍手
これまでなら、歌い終わった時には大きな歓声が飛んでいた…でも、今はそれが出来ない
マスク姿の顔も、どんな感情なのかが判らない
だから、拍手ひとつひとつに魂を込めている
不自由な状況で、どうやって思いを伝えるか
大きな拍手を聞くと、涙が出るくらい感動する」…と返されているのを拝見して
「ホントそう!それしかないから…」と大きく頷いておりました
「飲食業界の方が、感染対策、時短要請を強いられる中で
様々な努力をして営業を続けている
音楽業界も、決められた枠組みの中で出来ることを最大限やるしかない
それだけは認めて欲しいというのが我々の本心です
この1年で、我々の産業が感染症リスクにとても弱い産業だったと学んだ
それによって、リアルな会場で半分しかお客様を入れられないなら
残りは配信に回そうといったように、制約がある中でも、やり方の模索は出来た
そういったデータを蓄積して、今後の有事の際に何をして行くべきか考える機会にもなった
『今年の夏フェスやりますか?』と訊かれるが、僕には答えられない。神のみぞ知る状態だ
でも、コロナが明けて、色々なことが元に戻ることを想定しておかないといけない
だから、僕らは常にやる準備で待っています」…と結ばれてましたけど
今のところ、一気に全てが元に戻るという展開は望めそうもないし
一進一退で、騙しだまし、コロナ以前の状態に近づけて行くしかないんじゃないかと…?