虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
映画も本もクラシックが多いです

下妻物語 完 ヤンキーちゃんとロリータちゃんと殺人事件

2005年07月15日 | 
嶽本野ばら/小学館

 あの感動作、下妻物語続編。
 ちゃんと試験の点数は稼いでいるロリータの桃子が、体育オール見学が原因で留年。ヤンキーのイチゴは普通に成績不振で留年。卒業できなかった二人がほんとは無いはずの春休みに遭遇してしまった殺人事件で、なんとイチゴが容疑者になってしまいます。面白いからと警察に嘘つきまくって捜査を撹乱する桃子と、おろおろするイチゴ。そしてそんな二人の前に現れる未亡人になったイチゴの恩人、亜樹美さんと、亜樹美さんの亡くなった夫・竜二の友人セイジ。
 今度はミステリ仕立てながら、桃子の旅立ちまでの教養小説的な匂いにあふれてます。

 さすがに前作ほどのインパクトはないものの、最後の315~319ページに泣かされました。この数ページに泣かされるためにはこれだけのストーリーが必要だったわけです。
 自分の美意識を支えに、世の中に対して一人で昂然と生きていた桃子が、イチゴという一直線な友人の心に触れ、自分の大事なものを、感動を洋服という形で世界に問うために飛び立つ、「ダサくてクサくても、思い込んだ道を突っ走る」勇気を育てていくのです。そして世界へ関わるために、そこで自分の場所を得るために踏み出します。
「下妻に愛着なんかない」と言い切る桃子ですが、下妻かどうかではなく、イチゴのいるところが彼女にとってやはり拠り所です。

 前作からのトンチンカンな熟語・ことわざギャグも炸裂しています。イチゴの割れ鍋に閉じ蓋的な2度目の恋の相手、セイジさんにも笑わせていただきました。本当に物知らずで純粋なカップルで、桃子ちゃん、心を猿にして突っ込んであげないと、こんないたいけな二人では悪い人の食い物にされてしまいます。
「井の中の蛙」を「胃の中の買わず=胃袋の中にいたんじゃ何も買えない」もおかしかったですが、私、実は室生犀星の「ふるさとは遠きにありて思うもの…」を最初に朗読で聞いたものですから、「いどのかたえ」を正しく「異土の乞食」とは思わなくて(だって難しい言葉なんだもん)、「井戸のかたえ」だと思って、井戸のそばで商う「かたえ」という、明治時代の坂で車を押して駄賃を貰う人みたいな、かなり底辺の職業があるのかな?と思ってました。セイジさんとご同類かも。

スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐 (2005/アメリカ)

2005年07月14日 | 映画感想さ行
STAR WARS: EPISODE III - REVENGE OF THE SITH
監督: ジョージ・ルーカス
出演: ユアン・マクレガー    オビ=ワン・ケノービ
    ナタリー・ポートマン    パドメ・アミダラ
    ヘイデン・クリステンセン    アナキン・スカイウォーカー/ダース・ベイダー
    イアン・マクディアミッド    パルパティーン最高議長/ダース・シディアス

 ジェダイの騎士、アナキン・スカイウォーカーがダース・ベイダーとして生まれ変わり、共和国が終焉、帝国が誕生する。そして、今までの謎が明かされエピソード4にストーリーが繋がる。

 ほっとしました。前夜もテレビのエピソード6を見て、もう見たくてたまらなかったですから! 着替えの時間がなくて、現場用作業ズボン(ワークパンツなんてもんではない)のままで映画館に上映開始2分前に駆け込みましたが、ダースベイダーもヨーダも気にしていないと思います。それほど混んでいませんでした。 
 エピソード2があまりにもメロドラマでこの最終話はどうなるのかな~といささか心配でしたが、やっぱりメロドラマはあって、いかにも急ぎで繋いだような展開やありがちな決まり文句も入ったりしてたけど、全部説明した上で、心躍る映像、アクションをたっぷり見せてくれて満足です。ライトセイバーのチャンバラを惜しまなかったのも嬉しかったですねえ!今度はヨーダもたっぷり~!!!

 後半3作のほうが美男美女カップルで、前半のちょっとおじさんハリソン・フォードとバリバリ実務家的プリンセスのレイア姫のカップル、それにフツーのお兄さん的なマーク・ハミルといったキャストに比べるとやっぱりメロドラマチック。ユアン・マクレガーは、アレック・ギネスに繋がるのに違和感なかったです。
 エピソード3を初めて見たときに、ダースベイダーがマスクを取った顔にちょっとがっかりしてた私ですが、美しいアナキンがそうなったわけも、皇帝陛下のルックスも全部解明です。
 クリストファー・リーは出番少なかったけどほんとに心得てらして、相変わらずうまい死に様!ナブーのクイーンもほんのちょっとだけ見られました。
 それに、ラストシーンは嬉しくて泣いちゃいましたね!

 ヒーローには難しい時代ですね。アナキンも「平和と安定のために」と唱えて無残な行為をするに至る。秩序と安定を求める心も時として危険なものを招く…これは今に始まったことではないけれど。「宇宙戦争」では、結局ヒーロー不在。それにまたあのような激変後でも、トム・クルーズの父は、元妻の家の前で立ち止まり、家の中から出てくるのを待っている存在。もうそれほど素朴ではいられない、正義のヒーローの存在にはやっぱり難しい時代。

今年上半期の映画ベスト

2005年07月13日 | 映画の話題
 今年の前半は思ったほど映画にいけませんでしたが、ずっしりしたのや、文句なしに見てよかったと思えるのがありました。順位なしに前半のベストを挙げてみます。

・カンフーハッスル
・ネバーランド
・オペラ座の怪人
・五線譜のラブレター
・レイ
・運命を分けたザイル
・コーヒー&シガレッツ
・エターナルサンシャイン
・海を飛ぶ夢
・ミリオンダラーベイビー
・バットマンビギンズ

旧作
・下妻物語
・犬猫
・丹下左膳余話 百万両の壷
・デビルズ・バックボーン
・クジラの島の少女

 たまたま「海を飛ぶ夢」と「ミリオンダラーベイビー」が並んじゃったけど、これも題材が題材なだけに、作る側の意図とは別に、上映時期が合いすぎた感がある。こちらの足もとを揺さぶられそうに危険な映画だった。
「ミリオンダラーベイビー」で、強烈に残ったのが中盤のマギーの言葉。(もっと難しいのは聞き取れないんだけど)
"I want a trainer. I don't want charity, and I don't want favors."

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 ついでに。
 先月末からの試験は落ちてしまいました。某教育産業の小学生向け指導者に応募してみたのですが、実地でダメでした。今まで中高生しか教えたことないのですが、密かに思っていた通り、私、小学生相手はどうもぎくしゃくでした。でも学科で落ちなくてまだ良かった。
 それでも、この仕事が増えるともっと時間が細切れになるのでどうしようと思っていたせいか、そう落ち込みませんでした。今までの短期集中型のお仕事でがんばります。
 そっちはそれとして、学生でもないのに夏休み前で忙しい思いをしています。
 あと5日経てばイベントが一つ終わるので、暇にはなるのですが、夏場だしその先の仕事が心細い!でもまあ何とかなってるからいいや。

BACKTRACK/バックトラック (1989/アメリカ)

2005年07月12日 | 映画感想は行
BACKTRACK
監督: デニス・ホッパー
出演: デニス・ホッパー マイロ 
    ジョディ・フォスター  アン

 今回は、デニス・ホッパー自身の編集版。
 私はこっちのほうが好き。音楽もいい。サックスのほわ~んがすごく利いてる。
 チャーリー・シーンの登場部分激減ともかいてあったが、「ハートに火をつけて」でもあまりにも少なすぎてびっくりするほどだったので、短くなってる気がしない。
 オープニングが変わって、ヒロインの状況をそこで決定してる。そして、一つ一つのシーンが長くなってる感じ。
 アンを追いかけるマイロ、アンについて全てほじくりかえすマイロ、そしてマイロを知らずに逃げるアン。「命か自由か」と迫られて、必死の形相で「生きたい」と答えるアン。あんな表情が出来るんだから、ジョディ・フォスターってほんとに頭良いんだなあ。二人が出会ってからは、マイロがほんとにおかしくてしょうがない。
 アンのコピーを読んで「何のことかわからん」のシーンでは、まるで「貴社の記者は汽車で帰社できしや」的な響きにだはだは笑った。いつもはこういうところ返す前にノートに書いておくんだけど、今回は忘れてしまったのが残念。こちらの映画のほうがそういうちょこっと突付かれるような部分がより楽しい。
 エンドクレジットも笑ってしまった。

 両方とも、どうも予告編はムード違う感じです。

マンガ・ルック

2005年07月11日 | 日記・雑記
 このところずっと微熱が続いて不調のせいか、どうも考え方まで暗くなりがちです。「脳みそ筋肉」がほめ言葉かどうかはわかりませんが、疲れすぎは論外として、身体がイキイキ動いている時のほうが、頭もよく回転するような気がするし、絶対考え方も前向きになります。
 ほんと、身体鍛えなくちゃ!
 本と映画もちょっと減らして、ゲームは年に2本くらいに絞って時間を作ろう!

 今日エキサイトのコネタで見つけたフランスのヘアスタイリング剤 
 フランスに登場! マンガ頭整髪剤「マンガ・ルック」
 
 フランスのものなのに、なんか英語ネーミングですね。アシンメトリーで無理のあるヘアスタイルも強引にまとめてしまうなんて、FF7のクラウドが、別荘の朝、鏡に向かいながら使いそうなスタイリング剤ではありませんか。
 最近はコミックスばかりでマンガ雑誌は「OURS」くらいしか目にしてなくて、今現在のマンガ状況に疎いのですが、この製品のWEBサイトのお兄様、お姉さまはゲーム系に見えますです。ちょっとひ弱なストリートファイターキャラみたいです~
 
 それに、 LA CAPITALE DU MANGA、東京(ひえ~そうだったのか!)への一週間の旅プレゼントキャンペーンもやってるんですね。そういえば、この前見つけたあるBLOGでも、ドイツからのホームステイの女の子が日本に来てやってみたいことが、「コスプレやゴスロリの人と写真を撮る」ことだというのを読みましたが、日本のことをそういう目で見てる人々が世界のあちこちに当然いるんでしょうね。
 コミケでなくても日曜には原宿に結構広い世代のゴスロリさん(親子連れもいる)、秋葉にアニメコスプレさん(こちらは多くないけど)や超ミニのメイドさんが歩いてるし、ショップに「シャア専用レジ」はあるし。これが特別に感じないようになった私が、すれちゃったのかしら。
 さて日本のコスプレのみなさん、今現在何を使っているのだろうか。今度ヴァッシュ・ザ・スタンピードさんにでも聞いてみようかな。

バティニョールおじさん (2002/フランス)

2005年07月10日 | 映画感想は行
MONSIEUR BATIGNOLE
監督: ジェラール・ジュニョ
出演: ジェラール・ジュニョ    エドモン・バティニョール
    ジュール・シトリュク    シモン

 1942年、ナチス占領下のパリ。肉屋のバティニョールは、ナチス協力者の娘の恋人が隣家のユダヤ人、バーンスタイン医師を密告し、自らも意図せずにナチスに協力してしまう。そしてバーンスタインの家をはじめとして、ユダヤ人の没収財産で潤ってしまうバティニョール。ある晩、バティニョールのもとに連行先から一人逃げてきたバーンスタイン家の12歳の息子シモンが現われる。

 特に良くも悪くもない、困難な時代に出切れば自分の周りは平穏に、と願っている一般人が積極的に勇気を持って生きようとするとき、彼は英雄になっていたというお話。大袈裟で気がひけるが、落ち込んでいる時にはこういう映画が薬になる。

 フランスがナチスに占領されていた時代は長かった。その時代に、ナチスに抵抗した人、協力した人、そして自分の生活を守ろうとした人、フランス人も一様ではない。たとえばアメリカ映画「大列車作戦」と比べてもフランス人の描き方の違いには驚く。バティニョールは、ともかく自分は面倒なことに関わらずに生きたいと思っている。ナチスに特に抵抗もしないが、積極的に弾圧に参加もしたくない。しかし、娘の恋人に便宜を図られればそれを断り通すこともしない。そしてその娘はナチス協力者の恋人に嫌悪は感じても、便利さを手放す気はなく、妻は目の前においしい話があれば乗らないのは馬鹿だと思っている。
 誰もが、連行されたユダヤ人のその後なんて考えない。考えたくないから考えない。知らないでいれば責任はない?
 しかし「その後」を考えてしまったバティニョールは、それまで必死に守ってきた彼の生活を壊す。

 その原因となった男の子が、典型的なインテリ家庭の子どもで、生活の違いが労働者階級のおじさんとモロにぶつかる。お互いに「なんてこった…!」と思いあってることもわかる。それでお互いに助け合ったりしている。シモン役の子の結構生意気な、やなガキが実にうまい。終盤で田舎の子どもが出てくるけれど、見てくれからして生活がきっちり反映されてる。
 そして、親と別れた子どもたちにとって、自分たちの傍にいることを選んだバティニョールの選択の重みはどれほどのものだったろう。先日の「ピエロの赤い鼻」のほうが大泣きしてしまったが、これは美しい画面とユーモアに、やはり人間がそれぞれ自分の生き方を決定するというメッセージを感じさせられた。

元気出さなきゃ・七夕

2005年07月09日 | 日記・雑記
 いろいろ落ち込むことが続いている。
 元気出そうとして明るい映画見てもなんだか違和感が付きまとうし、昨日はついジェラール・フィリップ主演のそんじょそこらのホラーよりよっぽど怖い「モンパルナスの灯」を見てしまい思いっきり沈んだ。
 ありがちな幸福には縁のない、至福とどん底を知る能力のある人間と、それを見極めて、自分の欲のために利用するにためらわない人間の冷酷の物語。アヌーク・エーメの美貌も、どんなに薄汚れても貴種の光の失せないジェラール・フィリップも魅力的で…そして残酷な映画なのだった。
 読んでいた本がまた幸田文の「きもの」で、女としては身につまされること多く、気分転換には下手な選択だった。とても感想まとめられるようなものではありません。

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 今朝、鬱屈気分を晴らそうと自転車で出かけたら、近所の小さな公園に町内の子ども会の七夕の笹が飾ってありました。


 雨にも打たれてるし、笹の葉がすっかり丸まってしまっているので見た目が寂しくなっているけれど短冊のお願いがなかなかにぎやかで少なからず和ませていただいたのでした。

 飾りつけもビニール・プラ素材中心で雨天対策済みではあります。


 これはきっと低学年のお子さんでしょう。ファイトです!お互いがんばろう!なのです。サッカーボールがいいです。


同感。

ほかにも
「成績を上げたい」「算数ができるようになりたい」「志望校に合格したい」
「セーラームーンになりたい」「ラティアスとラティオスをゲットしたい」など定番も。

 もうちょっと高学年らしき短冊では
「世の中に役立つ人間になりたい」「世界の人が平和で幸せに」など、率直にして高邁な小学生の願いに思わず私も反省。あきらめちゃいけません。


何があったんだろう?

7月7日・踊る大紐育

2005年07月08日 | 日記・雑記
 昨日は書類仕事と外回りで、雷の後↓の記事を書いて、やっとニュースを見ました。
 ロンドンのテロのニュースには驚きもし、暗澹たる思いです。
 たまたま「踊る大紐育」を見ていました。1949年のアメリカのミュージカルで、3人の田舎出の水兵がニューヨークで彼女を作って、デートしてまた船に戻るという一日の休暇をめまぐるしいほどにスピーディーな展開で、ジーン・ケリー、フランク・シナトラ、タップの女王アン・ミラーらの達者なダンスを詰め込んだ映画。スタンリー・ドーネンと主演もしているジーン・ケリーの監督作品。アン・ミラーの博物館でのタップは賛辞が見つからないほど素晴らしい。
 映画の評価とは別に、陽気な、未来は俺たちのもの、これからだ!みたいな映画の気分が、昨日のような状況では一種この世のものならずという様に感じられました。大戦が終わり明るい未来を予感できる時代のムードが横溢しています。こんな展望をいま、世界でどれだけの人が持てるのでしょうか。

雷でした

2005年07月07日 | 日記・雑記
本日の夕方、ここ横浜の一角では
すごい雷鳴と突然の土砂降りで怖いようでした。
もちろんPCは全部電源落としました。

しばらくして雨が上がると空が赤くなっていました。
久しぶりに夕焼けを見たように思います。
今まで意識してなくて見なかったのか、本当に久しぶりに夕焼けらしい夕焼けだったのか?
それがわからないような生活してるのを再認識しました。

天候が定まらないせいか体調も今ひとつですが
今読んでいる本が思ったよりずっと面白くて嬉しい。
「国際協力論を学ぶ人のために」
「国際協力論」の入門書で、いろいろな人がそれぞれの立場で書いていて、論文集みたいな感じもあるのだが、やはり現場の説得力はすごい。
ルポルタージュではないのに、読んでいていつの間にか臨場感さえ感じているものもあって、私の知らないところで、こういうことになっているのか、そしてがんばっている日本人が、こんなにいる!と感動だった。まとめられそうだったら、きちんとご紹介をしたいと思います。

ルビー&カンタン (2003/フランス)

2005年07月06日 | 映画感想ら行
TAIS TOI !
監督: フランシス・ヴェベール
出演: ジャン・レノ  ルビー
    ジェラール・ドパルデュー 

 恋人を殺されたルビーは、裏社会のボスから大金を奪い、恋人の復讐も果たそうとしている。金を隠し警察に捕まったルビーは、そこでまったく場が読めずにしゃべり倒してはトラブルばかり引き起こしているカンタンという男に勝手に親友にされてしまう。
 ルビーの周到な脱出計画も、カンタンの用意した計画に先回りされ、一緒に警察とボス一味にともに追われることになる…

 ヴェベール監督は私には肌に合うのかもしれない。「奇人たちの晩餐会」も、「メルシィ!人生」も面白かった。フランスコメディでも「ミッション・クレオパトラ」は「どこがおかしいのかわかるけど笑えない」という不思議な映画だったが、これは爆笑なしだけど自然に笑えた。ドパルデューはさすがで、頭の回線が少し切れちゃった「奇人」が活き活きしてます。
 カンタンは「まっすぐで、裏のない、ためらいもない」という、実生活上では実に実にはた迷惑な、付き合うにはほんとに困っちゃうだろうな、という人間。それをドパルデューがいかにも、のリアリティ感じさせてくれて感心しきりです。ジャン・レノは人に合ってる役。
 ジャン・レノのルビーにとってはめぐり合ったが災難で、とんでもない男になつかれてクールなアウトローが調子が狂ってしまう、そして結局その奇人パワーに巻き込まれてしまう様子が期待通りでおかしい。でも、これも双方にとって運命的な出会いだねえ、と思わせちゃうのは俳優さんたちの力量でしょう。
 アクションは量も控えめでオーソドックスなので、結構ピシッと決まっていますが目立たない。車談義やギャグも、二人の逃走に絡んでいくチンピラさんたちのシーンもかなり面白かったけれど、やはり主役がきっちり笑わせてくれます。ラストも予想通りだけど、これでないと納まらない感じはします。

 この映画も「奇人~」や「メルシィ~」ほどはストレートじゃないけど、人間て、相手に自分の思考を投影してしか判断してないなあ、なんてことも考えてしまいました。

ハートに火をつけて (1989/アメリカ)

2005年07月05日 | 映画感想は行
CATCHFIRE
監督: デニス・ホッパー
出演: デニス・ホッパー 
   ジョディ・フォスター 
   ディーン・ストックウェル 
   ヴィンセント・プライス

 概念芸術家アンはマフィアによる殺人事件を目撃してしまった。組織に殺されそうになり、警察でも安全ではないと知ったアンは、一人で逃げる。そして組織に雇われて彼女を追う殺し屋は、彼女に恋をしてしまった……。

 今の気分で見直そうと思って見ている映画で、先週が「ファントム・オブ・パラダイス」、今週が「ハートに火をつけて」
 見直してもやっぱり「ファントム~」は今ひとつ面白く感じられなかった。
 そしてこの映画は好き。なんとなく笑っちゃう。
 出てくる男たちがみんな笑いを誘ってくれる。プロフェッショナルなこだわりのキツイ殺し屋も、マフィアの殺し屋も、ボスも、警官も、なんかおかしい部分を持った男ばかり。特に主役が一番。こだわりのインテリアも、サックスを吹く姿も、投げつけるシーンも、デニス・ホッパーの癖のある容貌もあって、おかしくて、どこかジンワリする。
 ヒロインの概念芸術家、って電光掲示板に意味深なようなフレーズ、断章を流すというアートがおかしい。それがまた、別人に成りすましたら化粧品のコピーになっちゃうというのも皮肉でおかしい。
 プロの殺し屋が、はじめに情報を得るための捜索で彼女の黒下着写真に参ってしまうところから、一緒に行動するようになっての浮かれぶりが可愛くておかしい。アンのほうでも、いつの間にかしっかり彼の手綱を握っていて、ラストでは映画もサスペンスタッチ強調になっちゃうんだけれど、2人がどことなくゲッタウェイ調に息があうのも面白い。
 デニス・ホッパーが編集権をめぐって会社と争い、アラン・スミシー監督で公開されたそうだが、来週はたぶんこの映画の監督編集版「バックトラック」(こちらは初見)が届きそうなので、比べてみるもの楽しみ。

プロポーズ (1999/アメリカ)

2005年07月04日 | 映画感想は行
THE BACHELOR
監督: ゲイリー・シニョール
出演: クリス・オドネル
    レニー・ゼルウィガー 
   ハル・ホルブルック

 キートンの「セブンチャンス」のリメイク。
 祖父の遺産を相続する条件が翌日の夕刻までに結婚していることだと知った気ままに生きていた男が、あわてて結婚相手を探す。

 ちょっとかったるいけど、マライア・キャリーとブルック・シールズの怪演が笑えるし、レニー・ゼルウィガーへの最初のプロポーズシーンはちょっと気が利いててそこそこ楽しいコメディだと思う。

 しか~し!
 元作品の「セブンチャンス」を熱愛する私としては「もっと上手にやってよ!」と、この映画のプロポーズシーンのレニーに負けないくらいブー垂れてみたい。

 キートン版では不器用な男が、くびったけの彼女にプロポーズさえも不器用で振られてしまう。こちらの映画では、現在付き合っている彼女へ愛情はあっても結婚に対して腰が引けてる彼が、明日までに結婚しなければいけない状況になって、その躊躇丸出しのプロポーズで怒らせてしまう。その後に昔の彼女めぐりやら、結婚相手募集やらを経験する中で、今の彼女の良さと愛に気付いていくということで、そもそも展開は違っているのだが、クリス・オドネルは「ま~なんて勝手なヤツ!」に思えるのがいかん。レニーは実にフツーにかわいらしく見えるんだけど、つい、「あんな男にはさっさと見切りをつけてしまえ!」と言いたくなるのは、きっと私の性格が悪いせいだろう。
 だから最後の花嫁さん大集合でのハッピーエンドが納得できないのだ。だって、あれでは強引過ぎて意味があるようにも、クリス・オドネルの逃げっぷりではあの大集団が映画の中で生きているようにも見えない。
 レニー・ゼルウィガーはこのテの女の子をぶりっ子を自然に演じてなかなかキュートです。妹とああだこうだと言い合うシーンは「よくわかる」気持ちにさせてくれます。

川崎行きが続きます

2005年07月03日 | 日記・雑記
今日も川崎へ行ってきました。
等々力の市民ミュージアムで
ロシアで収蔵されているアイヌの
衣服・細工物といった生活に密着したものの
(日本よりよく保存されているらしい)
展示があり、誘ってくれる人があったので出かけてきました。

川崎市市民ミュージアムHP

ちょっと展示数が少ない感じがしましたが、
ものすごく手の込んだ晴れ着や、
犬やアザラシの皮の着物、
魚の皮の着物、靴(底の部分はウロコがついてる!)
もう見ているだけでびっくりです。
でも道具類、特に男の人の道具は少なかったですね。
物々交換であちらにわたったものが多かったのでしょうから
山刀とか、魚の網、細工物用の小刀など
本当に手に馴染んだ道具などは手放すなんてとんでもなかったんでしょうね。
実はそういうのが見たかったんです。

でも私の趣味の手仕事のヒントになりそうなのがあってうずうずしちゃいました。
アイヌの文様って素敵です。

メイド・イン・マンハッタン (2002/アメリカ)

2005年07月02日 | 映画感想ま行
MAID IN MANHATTAN
監督: ウェイン・ワン
出演: ジェニファー・ロペス    マリサ・ベンチュラ
   レイフ・ファインズ    クリストファー・マーシャル
    ナターシャ・リチャードソン    キャロライン・レーン
   スタンリー・トゥッチ    ジェリー・シーゲル

 マリサは、五つ星ホテルの優秀な客室係。息子のタイを一人で育てている。ある日、彼女はちょっと落ち込み気味のタイを職場に同伴、洗濯室に預ける。タイと宿泊客の上院議員候補のクリスが知り合い、マリサに外出を断りに現れる。そのときたまたま客の上等な服を着ていたマリサは、クリスにスイートルームの金持ち客と誤解されたまま一緒に出かける。

 今週初めからなかなか感動的な、上出来とか、大満足な映画を見続けてしまったせいか、すいません、なんか時間つぶし程度の感触の映画でした。
 一番辛口に見ちゃった「宇宙戦争」もダコタ・ファニングはすごかったし(役者としてあの映画で一番印象に残るのは彼女でしょう)ラストに至っても少しほっとできるんだけれど底冷えのするような無力感を引きずるところがあって、スピルバーグのある一面を十分に堪能し、お金(映画の日1,000円)払って見に行っただけの物は見せてもらった、と思えました。

 でも今日の私は、このシングルマザー、学歴それほどなさそう、ヒスパニックという悪条件だらけでも、有能・前向き・チャーミングな女性のほんとに夢のような一人勝ち、オールゲットなシンデレラストーリーにまったくノレなかったのです。ただ唸りながら見てただけ~
 唸っていたのは、いろんなことが彼女に有利に働くところが少し唐突に見えるから。
 あれだけ応援してもらえるからには、彼女自身の周囲に及ぼす魅力がもっとちゃんと描かれていれば、と思うのですよ。例えば「ターミナル」なんかは、主人公に味方したくなる雰囲気が作られていく過程をうまく見せていました。
 そこがもう少し丁寧なら、納得して元気出して、「さあ、アタシもやるか!」という気分になれるのにな~。

 実は今日はちょっと身体に無理がきたのか、足はれちゃって寝てたものでいつもより特に辛い見方かも。

宇宙戦争 (2005/アメリカ)

2005年07月01日 | 映画感想あ行
WAR OF THE WORLDS
監督: スティーヴン・スピルバーグ
出演: トム・クルーズ    レイ
   ダコタ・ファニング    レイチェル
   ティム・ロビンス  
    ジャスティン・チャットウィン     ロビー

 重機オペレーターのレイが、いつもは別れた妻とその夫の元にいる息子のロビーと娘レイチェルと共に過ごす日、街に異変はが訪れた。強風、そして激しい雷が地上に何度も落ちた。様子を見に行ったレイの前で地面から巨大なマシンが現れ、何もかもを灰にしていく。パニックの中、レイは子どもたちと逃げる。

 はい、突っ込もうと思えば突っ込めますが、さすがにスピルバーグと言いますか、パニック映画としてはすごくドキドキさせてくれましたし、退屈だと思うようなところはありません。
 画面も、筋の運び方もとてもよく出来ているし、宇宙人もメカも小説のオリジナルイメージを大事にしてるようで、あの宇宙人の見た目はエイリアンかプレデターかで、これが数百万年も地球人より文明の進んだ知的生物ですか…あ、これは突っ込みになってしまいますね。
 ただ、ラストでも危機を乗り越えて「やった!」いうような人間の力で乗り越えた感じがない。乗り越えてはいるんだけど、やっつけた爽快感はない。
 だから豪華で緻密な絵で、丁寧に作ってあるのがわかるのに、なんだか地味な印象。
 それに作ってるほうも、それをわかって作ったような気がする。
 原作も全て打つ手無しの絶望に見舞われたところでのまったく僥倖で助かるというか、地球の生態系に助けられるという結構あっけない結末で、読んでるほうも少し肩透かしを食わされる気分になる。この映画も似てる。パニック克服映画の充実感に満ちたラストより、あえてこのラストを選んだということでしょう。
「なぜ、何のために?」襲われるのかがわからない、意思の疎通というものがまったくない敵。手も足も出ない恐怖や、目にする事柄への怒り、無力感、そしてギリギリのところでも一人では生きられない人間というものの姿を映した緊張感の張り詰めた映画。

附記
音楽がちょっと気になるのがありました。「え?まさかね」みたいなの。また行けたら確認したいけど、きっとDVDリリース後に確かめることになるだろうな。今年の夏は「SW」だものね~。