虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
映画も本もクラシックが多いです

ジキル博士とハイド氏 (1932/アメリカ)

2005年07月22日 | 映画感想さ行
DR. JEKYLL AND MR. HYDE
監督: ルーベン・マムーリアン
出演: フレデリック・マーチ 
   ミリアム・ホプキンス 
   ローズ・ホバート

 スティーヴンソンの名作の映画化。二重人格をあらわす言葉としても定着した「ジキルとハイド」という、同一人の中の善悪の人格分離を試みた研究者が、結果を制御できずに自滅していく物語。

 ジキルとハイドを演じるフレデリック・マーチの人格の演じ分けの見事さは言うまでもなく、あの時代に特殊メイクもお見事。端正なジキル博士と毛むくじゃらなハイドの行ったりきたり。ハイドと決別しようとして、しかし支配されてしまうおののき。
 でもこの映画のジキル博士の解釈は、フランケンシュタイン博士みたいに科学の力とそれを自在に操る自分への驕り、そして若い恐れを知らぬ時期の男の驕りで、はじめから少し浮き上がった存在に描かれているし、ハイドは、悪の人格の分離というより、先祖帰りの本能むき出しを感じる。動きもそうだ。ハイドの動きは、明らかにサルの仲間を思わせる。あの猫の狩りに反応してしまうシーンは恐ろしいけど、これも原始の本能の呼応と解釈したほうがいいんだろうと思った。
 それにミリアム・ホプキンスの哀れさとずるさの混じった娼婦に今回はとてもひきつけられた。最近ルビッチの「生活の設計」で、ミリアム・ホプキンスの闊達で自由でコケティッシュな美女がとても説得力があった。3人の男を次々に渡り歩くよう役なのに、汚れがまったくない不思議な妖精のような美女だった。この映画では、「汚れ」をまとっているのだが、そのバランスが上手で、こんなにいい女優さんなんだなと感心した次第。

 これもホラーよりもSF的サスペンスというほうが私にはしっくりする。