秦 豊吉訳
新潮文庫
古い本だけれど「ロング・エンゲージメント」を見たら思い出したので読んでみた。
いつの時代でも戦争は悲惨以外のことではないが、20世紀の戦争は国家の総力戦となり、人的にも物的にもそれ以前とは比べ物にならないくらいの消耗を招いている。
これは映画化されたのも傑作だったが、中学生の頃に言葉で刻みつけられたものを忘れられない。
一人の教師の言により志願した少年の、普通の兵士の周りでの戦争の凄惨な現実が、あたりまえの出来事として描かれている。そしてこれが全部ではないのもわかる。
兵士たちは、怯え、闘うというより、皆殺しへの恐怖に対して闇雲な空しい抵抗をする。本では「みなごろし」に塵殺という字をあてている。人も機械も全て一緒くたに踏み潰されるようなイメージが喚起されて恐ろしい。砲弾と毒ガスと戦車が、踏み潰し噛み破り殺しつくす。そして疫痢と悪性感冒とチフスが蔓延し、ばたばた死んでゆく兵士たち。塹壕と野戦病院と共同埋葬…彼らにとっての戦争はこれに尽きていた。
そんな中でも仲間を救おうとし、少ない食料を分け合う、彼らが他者に向ける関心に、人間性への救いを見る。
しかし少年たちは、すべてが帰らぬ人となり、その死も大勢に影響がない限りは「異常なし」の範疇の出来事でしかない。
これは、1929年、大恐慌の年に発表され、世界的なベストセラーになった。それでも、第2次大戦という再びの悲劇をとどめることは出来なかったのである。
…「誰も戦争をしたいって奴はねえ。それに急にぽっかり戦争になっちまうじゃねえか。俺たちは戦争なんて、ちっともやりてえと思っちゃいなかったんだ。ほかの奴らだってみんな同じことを言ってる……それにどうだ、こうして世界の半分が、夢中になってかかっているじゃねえか」(236ページ)
考えるべきは、どうして望まないものに突入して行ってしまうのだろうか、ということでしょうね。
新潮文庫
古い本だけれど「ロング・エンゲージメント」を見たら思い出したので読んでみた。
いつの時代でも戦争は悲惨以外のことではないが、20世紀の戦争は国家の総力戦となり、人的にも物的にもそれ以前とは比べ物にならないくらいの消耗を招いている。
これは映画化されたのも傑作だったが、中学生の頃に言葉で刻みつけられたものを忘れられない。
一人の教師の言により志願した少年の、普通の兵士の周りでの戦争の凄惨な現実が、あたりまえの出来事として描かれている。そしてこれが全部ではないのもわかる。
兵士たちは、怯え、闘うというより、皆殺しへの恐怖に対して闇雲な空しい抵抗をする。本では「みなごろし」に塵殺という字をあてている。人も機械も全て一緒くたに踏み潰されるようなイメージが喚起されて恐ろしい。砲弾と毒ガスと戦車が、踏み潰し噛み破り殺しつくす。そして疫痢と悪性感冒とチフスが蔓延し、ばたばた死んでゆく兵士たち。塹壕と野戦病院と共同埋葬…彼らにとっての戦争はこれに尽きていた。
そんな中でも仲間を救おうとし、少ない食料を分け合う、彼らが他者に向ける関心に、人間性への救いを見る。
しかし少年たちは、すべてが帰らぬ人となり、その死も大勢に影響がない限りは「異常なし」の範疇の出来事でしかない。
これは、1929年、大恐慌の年に発表され、世界的なベストセラーになった。それでも、第2次大戦という再びの悲劇をとどめることは出来なかったのである。
…「誰も戦争をしたいって奴はねえ。それに急にぽっかり戦争になっちまうじゃねえか。俺たちは戦争なんて、ちっともやりてえと思っちゃいなかったんだ。ほかの奴らだってみんな同じことを言ってる……それにどうだ、こうして世界の半分が、夢中になってかかっているじゃねえか」(236ページ)
考えるべきは、どうして望まないものに突入して行ってしまうのだろうか、ということでしょうね。
その後もあちこちで戦争は起こっているし・・・本当に「歴史は繰り返す」ですよね。
戦争の中で一人一人の命の重みが
まったく省みられない空しさと怒りを感じないではいられませんでした。
この本は、私にとってのその原点みたいなものです。